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初めての飛行

 俺はやっと飛行機に乗れた。まずは先輩と一緒に乗って体感する。当日の朝は小雨だったが、風は穏やかだったので決行した。


 ぬかりなく整備して、しっかり確認しながら準備をして、手順通りに操作していく。先輩と教官の合図に従う。少しの手違いで大惨事になる。俺は緊張で胸が痛くなったが、何も落ち度はないようだ。同級生達以外は皆、涼しい顔をしている。


 広い飛行場。遠くまで続く滑走路。離れた所で同級生達が固唾を飲んでいる。


 エンジンがかかる。爆音と共に飛行機が動いていく。さあ始まる。一気に向かい風が襲ってくる。強化ガラスで守られているとはいえ、轟音が響く。


 飛ぶ。身体が揺れる。どんどん圧力を感じる。全身が重くなる。息苦しい。前進しながら飛行機ごと登っていく。ガスマスクから酸素が少しずつ流れ始める。


 身体が少しだけ軽くなる。周りを見渡すと一面の空と雲。下を覗き込めば森林と街と畑が見える。


 飛行機は南へと内陸部に向かう。先輩は上下左右に機体を揺らす。そのたびに圧力がかかる。一度、宙返りをする。一瞬、頭が真っ白になる。墜落せずに無事元に戻る。


 どんどん進む。国境近くまで迫ってくる。そこには石油が眠る砂漠地帯が広がっている。気がつけば晴れている。砂と岩石ばかりの荒涼地帯。たまにオアシスみたいな集落があるが、草木の気配がしない。限りない大地への畏怖を感じる。


 国境を突破する前に先輩は急旋回して帰還する。俺と先輩は無線で養成所と連絡し、位置を確認する。


 見慣れた風景に戻って来て安心した。高度を下げて行く。また身体に圧力がかかる。ガスマスクから酸素が少しずつ止まっていく。


 身体に軽い衝撃が走る。着陸。機体は滑走路を暫く進む。徐々に減速していく。止まる。


 俺は先輩に礼を言うと強化ガラスの扉を開けて外に出た。養成所の時計台を見ると昼過ぎになっている。


 皆は安堵の溜息を吐く。俺も肩で溜息を吐く。機体に損傷や問題はないか皆で入念に確かめる。無事だったので先輩は飛行機を低速で動かし格納庫に向かう。


 初めての空の旅。確かに感動した。しかしそれ以上に無事に帰還した事に胸をなで下ろす。絶景を楽しむ余裕はなかった。


 これからどんどん乗って慣れて操作方法を身につけて最後には一人で操縦するのだ。空の一人旅は魅力的だが、間違いを咎める者がいなければ簡単に事故死してしまう。


 宙返りや旋回や錐揉み回転が出来る自信はない。空軍同士の戦闘ではそれが出来ないと回避も抵抗も出来ない。陸戦や海戦にも抵抗出来ない。しかしその前に俺は単純な往復を確実にしたい。

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