人生の指針
十八歳になった俺は軍士官学校に入ることになった。兄も父も母も驚いた。俺は説明した。
俺は北半球から赤道を越えて来る潜水艦に前々から興味があった。それは家族も知っている。俺はその北からの人達と交流を持ちたかった。軍は捕虜にして尋問したがっているようだけれども、俺は対等に交流をすべきだと考えている。軍の将校になればその案を受け入れてくれるかもしれないし、そうでなくても北からの人達と接触できるかもしれないのだ。
俺は士官学校の中でも空軍の操縦士養成所に行く。視力検査も体力測定も筆記試験も面接も全て合格した。もし不合格だったならば父と同じく考古学の世界に足を踏み入れるつもりだった。考古学も決して簡単な世界ではないけれど、視力が少し悪くてもなんとかなる。
兄は腑に落ちた顔をしたが両親は不安そうな顔をしている。南半球のこちらの世界ではいつもどこかで戦争が起きている。俺達の嵐の国は覇権国だが、他国の戦争に干渉している。仲裁して和平交渉をしたり友好国を助けたり敵対国を攻撃したり。俺が将来、軍人として他国の人達を殺傷したり逆に殺されたりするかもしれない。俺が望むように北半球からの人達との交渉は難しいだろう。
俺は殺されたくも殺したくもないけれど、軍人になれば民間人よりも北からの人達に会える確率が高くなる。血眼になって探しているのだから。理不尽な命令が下った場合でも従わなければならないが、覚悟しているつもりだ。
兄は敵前逃亡を強く禁止したが母は無惨な戦死をするならば軍法会議にかけられた方がマシだと主張した。父は軍人になるならば軍紀を守り、捕虜や弱者を丁重に扱うべきだと諭した。
俺は家族に手を振って家を出た。馬車に乗って駅まで、鉄道に乗って養成所まで行く。
最近、新しい飛行機が開発されている。従来は雲の中か雲の下までしか飛べなかったのに、最新式は雲の上まで上がって縦横無尽に飛べるようになるのだ。試作品が何機も製造されたがまだ安全性に問題があった。
それが完成すればどんな悪天候でも色々な所に飛べる。一年中時化に襲われる赤道を超えられる。俺は命を賭けてでもその新しい飛行機を操縦したかったが、熟練者でないと乗らせてもらえないはずだ。今は養成所に行って一人前になるまで頑張るしかない。
無事に死なずに切磋琢磨を続ければ、退役前には北半球に行けるかもしれない。不安と期待で胸と腹が重い。




