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親睦

 皇帝は臣下達から交渉の結果を聴いている。御簾を隔てているので表情は分からない。玉座の下は台になっていて俺達が立ち上がっても皇帝は見下ろしたまま鎮座出来るようになっている。


 話を聴き終えた皇帝が明るい声で二言三言何かを言った。一番格上の臣下である宰相が訳す、

「無事に締結出来て良かった」

 皇帝は手にしていた扇を動かして合図した。出入口から料理が運ばれて来る。最初に茶を注がれる。飲酒は秩序が乱れるか俺達の体質に合わないと判断されたのだろう。皇帝の所にも膳が運ばれて来た。微かな薬草の香りがする。宰相が合図する。


 俺達は最初に茶を飲んだ。前回まほろば帝国で出された茶とは色も匂いも味も違う。少しクセが有るが独特で美味い。料理も卓上に置かれていく。俺達は食べ始める。北の人達は二本の棒を右手に挟んでそれを動かしながら食べていく。俺達はそんな器用な事が出来ない。北の人達もそれを知っているのでスプーンとフォークを用意してくれている。


 こちらに来るまでに藍帝国の料理を食べてきたが極上だ。旨味や出汁が絶妙で濃過ぎないし薄過ぎもしない。鳥肉や鯨肉や魚肉が程良く調理されている。炒め物も蒸し料理も有る。野菜からも独特の風味が出ている。俺達は料理を誉めた。


 皇帝が食事をしながら御簾の奥から俺達を観察しているのが何となく分かる。俺達の品性を試しているのだろう。皇帝は食事を終えるとゆっくりと立ち上がる。宰相が合図する。俺達は食事を中断して拱手する。


 平和条約も締結したし食事も素晴らしい。この後俺達は宿舎に案内されて休むことになった。これから一ヶ月ほど滞在しながら交渉を深めていく。宮殿に籠るばかりでは身体に良くないので北の人達が名所を案内する。更に北半球各地の景勝地や劇を撮影した映画も観る。


 浴室も便所も完備されている。着替えも寝床も清潔だ。俺達の要人は五十歳以上が多いので医師が何度か様子をうかがう。至れり尽くせりだ。皆、快くなっている。


 南半球でも北半球から来た潜水艦隊を受け入れている。何も報せがないということは南半球でも無事に交渉が進んでいるのだろう。


 俺達の南半球では大陸の砂漠地帯で石油を採るが、こちら北半球では海底から採る。映画でその光景を説明された。俺達は北半球の文明に驚嘆せざるを得なかった。この石油は船舶や機械や発電所の動力にもなる。医療品等にも使われている。石油加工技術は俺達と同じかそれ以上だ。


 藍帝国では絶対的な君主制であるにもかかわらず、北半球では科学と経済が発達している。藍帝国自体もまた科学知識を取り入れながら政治改革を繰り返している。選挙制度も取り入れて議会も設けてもいる。


 北半球の人達が見栄を張っているわけではなさそうだ。

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