藍帝国での旅
赤道を越えて暫くすると円形の盤古大陸の南側に大きな山が聳えている。そこを風に注意しながら迂回する。盆地を臨む。
過去に北半球の人達とも確かめたし、こちらに来る前も何度も調べ直している。間違いはない。時間も場所も予定通りのはずだ。藍帝国と芭蕉国との国境。
俺達は麓の大地に着陸する。十機共に無事だ。強化ガラスから覗くと砂と岩石が覆う荒地だ。俺達は飛行機が完全に停止して計器も機体も異常無い事を確かめると操縦室のレバーを引いて客室の扉を開けた。
最初は誰も怖がって降りようとしない。何時もは民衆に演説したり労働者や貧困層を嘲笑したりする要人なのに臆病である。俺達操縦士が最初に降りる。俺の飛行機では父がそれに続いた。それでやっと皆が少しずつそれに倣っていく。
三百人中、顔色が悪い者が何人かいたが怪我人はいなかった。将官達が要人達を慇懃に並ばせる。俺達も荷物を持ちながら整列する。
警笛が鳴る。俺達は音のする方へ歩いて行く。皆もそれに続く。前方からわらわらと沢山の人達が岩陰から出て来た。黒髪の者が多いが赤い髪や紺色の髪の者もいる。北半球の人達が約束通りに出迎えている。俺達は立ち止まって敬礼した。北の人達もそれに倣った。
暫く歩くと川が流れている。皆、桟橋に繋がれていた船に乗る。十隻に分かれて隊列を組みながら進んで行く。蒸気船だが煤が目立たない。高度な科学力で煙突内の煤を処理しているのだろう。
何度か休みながら四日かけて盤古大陸中心部にある藍帝国の首都に向かう。前回、うぶすな大陸で食べた料理とは違う美味い食事を味わえた。うぶすな大陸では薄味だが独特な風味が楽しめたが、藍帝国では味が少し濃い上に様々な香辛料と調味料による味付けが絶妙だ。
北の人達は俺達を丁重に扱った。特に高齢者の多い要人達に親切に接した。何度も体調を気遣っているし、船の操作も丁寧だ。
しかし、要人達の中には数日も旅をしなければならないと愚痴をこぼす者もいる。北半球では主な輸送手段は船だ。馬車も自動車も鉄道もないし、ましてや飛行機も空港も無い。それを不便で未開だと蔑む者すらいる。俺は腹が立ったが、父が北半球の文明を心底褒め称えているのでこらえた。船の移動は自動車や鉄道と比べれば生態系に負荷を与えていないし、馬のいない世界では理に適っている。
父が要人達を諌めると要人達も言葉を慎むようになった。父は風景を観察しながら北の人達とも会話を試みた。何度も撮影許可を得て写真を撮っている。発掘調査しなくても考古学者としての職務を果たしている。




