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再度北上

 俺は三十六歳になり、大佐に昇格した。大した功績も戦績も無いけれど、赤道を何度も横断したり北半球との接触に成功したりしたことが評価されたようだ。ここ一年、南半球では世界各国が大陸の何処かで国際会議を何度も開き北半球との接触にどう対応すべきか議論していた。


 五十カ国のうち十カ国で戦争や内戦が続いていたが停戦した。北半球を迎え討つのではなくて平和条約締結をすべきだと判断する者が多くいた。実際に北半球と交渉してきた俺達の話を知って北半球を利用したり攻撃したりするよりも相互不干渉の方が各国の国益になると判断したようだ。


 最初は覇権国である嵐の国が北半球の科学力を利用したり北からの使節を人質に取るべきだと考えていたが、俺達が世界各国に向けてラジオや新聞社を通して語ると、民衆は北半球の理性を知るようになった。機密情報とされる事は言えなかったが、俺達は北半球の人達の冷静で人道的な扱いを強調した。


 今まで嵐の国から二人乗りか一人乗りの飛行機を北半球に飛ばしていたが、今回は三十人乗りの大型旅客機十機を飛ばす。南半球各国の外交官や将官級の将校や資産家を乗せる。南半球の技術者達は俺達が乗る戦闘機開発に並行して安全性を最優先した旅客機を前々から開発してきた。現在では民間空港を旅客機が富裕層や要人を乗せて往復している。二十年もたたないうちに一般人も旅客機が利用できるようになるだろう。


 だから俺達操縦士が安全に操縦すれば機内は快適だ。七十代の高齢者も乗れる。今回の交渉には俺の父も参加することになっていた。北半球の人達が考古学に興味を示していたし、嵐の国一番の考古学者である父を南半球の人達も期待していた。父自身も女の地位が高い北半球の文明に興味を持っている。


 普段は電話と手紙で連絡し合うだけだったので、俺と父は久し振りに再会した。父は六十代で半ば引退している。今では発掘調査に参加せずに学校帰りの子ども達や歴史愛好家の富裕層に考古学で知った歴史を教えている。


 歴史はゴミだ。女の犠牲の上に成り立っている。考古学者なのにそんな台詞を吐く父を冷ややかな目で見る要人や富裕層は少なくなかったが、今回北半球に行く人達は純粋に北半球に興味を持っている。北の人達の中に心を読む者が多くいるので、北半球を見下す様な人達は除外されている。父の確立した調査方法と父の独特な歴史観を評価する者が多い。


 俺達は参加者に注意事項をシッカリと説明すると簡単な訓練をさせた。


 当日の秋。北半球では春のはずだ。俺達は飛び立った。

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