南の警戒と傲慢
俺達五人は南半球から無事に帰還した。一ヶ月ほど行方不明だったので皆、驚きながら迎えてくれた。捜索の準備をしていたようだが、中止になった。俺達は休む前に上官達の元に行き、北半球の人達の手紙と音声資料を渡した。一年以内に北半球の潜水艦部隊がこちらに向かって来ることも話した。狼狽する上官達に俺達は更にこちらからも要人を北半球に連れて行く事を約束した事も伝えた。
上官達は上層部に報告した後、大統領や長官や代議士達に連絡を取る。俺達の疲労が見て取れたのか、五日ほど休暇がもらえた。俺は倒れるように寝続けた。北の人達から客人扱いされたが一ヶ月にも及ぶ質問攻めには疲れた。
上官達は情報将校達を招集して俺達が渡した資料を分析させていた。その間に嵐の国では緊急会議が行われた。嵐の国が覇権国とはいえ、一国で高度な文明を持つ北半球を相手にするのは危険だ。大陸各地に連絡を取って国際会議を開くことになった。
休憩を終えた俺達は上官達や情報将校達から次から次へと問い糾された。また質問攻め。しかし北半球と南半球の命運にも関わることなので俺達は真面目に答えた。
皆、北半球の世界では女の地位が高い事に疑問を持っていた。女は感情的で視野が狭くて非力で政治にも軍事にも向かない。南半球の俺達の世界ではそう考える者が沢山いる。しかし俺達と議論してきた北の人達の大半は女だったし、淡々と冷静に議論をしていた。俺達が上手く返答できなかったら答えやすいように質問を変えていた。そもそも北の女達が浅はかで感情的ならば俺達は無事に戻って来れなかったし、殺し合っていたかもしれない。
俺達の飛行機をたった一ヶ月で調べて精確に整備を施した。その科学力と技術力もまた皆を驚かせた。驚嘆というよりは恐怖に近い。北の人々が潜水艦で俺達の世界を蹂躙するのではないのか。こちらに来た時に油断させて拿捕して尋問して技術を奪うべきだ。そんな浅薄な考えを述べる者もいた。
しかし北半球の人々の中には全員ではないが心が読める者が多くいる。また、俺達を侵略するつもりならば既に攻撃している。北半球はあくまでも理性的な交渉を求めている。
俺達が力説すれば力説するほど皆は北半球の人々を擁護していると誤解していく。絆されたり洗脳されたりしているのだと憐れむ者もいる。俺は腹が立った。南半球の皆は北半球の人々を心の何処かで見下している。隙有らば侵略したいのは南半球の方だろう。
上官達や情報将校達は大統領や代議士に俺達の話を報告していく。大統領達は国際会議でそれを伝えていく。しかし北半球の理性的な態度よりも高度な文明を警戒するような伝え方をしていた。俺は不安になった。
一年後には市民を内陸に一時的に避難させる。潜水艦が来れないからだ。俺達が北半球に来た時も北の市民は避難していたから互い様ではある。しかし、こちらの要人達は果たして理性的な対応が出来るのだろうか。俺は疑問だ。




