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帰還

「百合国」という言葉が出てくるが、深い意味はない。アマゾン百合からインスピレーションを得た。

 未だに戦争を続けている南半球の国々が北半球との交渉をするには最低でも一年以上は必要だ。無線や電話が発達しても各国首脳が一つの方針にまとめるのは簡単なことではない。むしろ何十年も前から戦争せずに南半球へ潜水艦を派遣している北半球の国々の結束力の方が奇跡的だ。


 俺達五人は南半球に戻ったら母国に北の人達の要請を伝えて指示を仰ぐ。丈夫な手紙に文章を書いたり録音機に音声を吹き込んだりして条約案を盛り込んでおく。北の人達の考えを俺達がまとめて自然な言語に直していく。


 とりあえず丁度一年後に俺達は外交官や首脳を何人か飛行機に乗せて盤古大陸の南側まで連れてくる。同時に北半球からも潜水艦が俺達の国・嵐の国の北岸に来る。不穏な空気を感じれば双方共に逃げて諦める。敢えて互いに武装を認める。交渉が始まれば武装解除する。


 北と南の全面戦争は人類滅亡の可能性があるのでなるべく避ける。


 北の人達は最初から色々と考えを一致させていたようだ。足並みを揃えているので組織や国によって無駄な重複がない。簡潔に質疑応答していく。


 俺達の南半球では嵐の国が覇権国だが、それは南半球で最大の軍事力と経済力を持っているだけであって特別な権威があるわけではない。嵐の国は南半球全体の利益に責任を持つのではなく嵐の国の国益を優先している。


 一方、北半球では覇権国が二ケ国ある。盤古大陸中心部の巨大盆地に位置する藍帝国と海風列島中央部の島国である百合国。藍帝国は一人の皇帝を頂点とする権威国家、百合国は人間の男が一人もいない不思議な共和国。北半球では藍帝国が指導的な立場をとっているが、百合国は医学と科学の発達した先進国。


 うぶすな大陸のまほろば帝国と百合国は昔から女の地位が高いが、他の国々はむしろ男尊女卑の文化が根強かった。しかし、南半球ほど執拗に女を殺傷する文化はなかった。


 女の地位が高い世界だから文明が発達して理性的なのだろうか。俺は不思議に思った。


 こちらの世界に来てから約一ヶ月。俺達は飛行機に戻った。雨露に晒された上に蓄電池バッテリーが切れているはずだ。本当に帰還できるのか不安だ。


 しかし、俺達を質問攻めにしている間に北半球の人達の技術者達が飛行機を調べて整備をしたり蓄電池に電気を流したり東屋を建てたりして風雨を防いでいた。恐る恐る点検すると全く問題がなかった。俺達は舌を巻く思いだった。こちらの人達はたった一ヶ月で自分達の文明に存在しなかった物を調べ尽くして整備したのだから。


 俺達は手を振って挨拶すると扉を開けて乗った。北の人達も手を振りながら離れていく。安全を確認すると俺達は飛行機を走らせる。一気に飛んで行く。


 一ヶ月も操縦していなかったので腕が鈍ったのかと思っていたが、何とかなった。

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