春の茶
空気や景色が不自然だと感じていたが、こちら北半球では春だ。俺達の世界では北半球と南半球では四季が逆転することが三百年以上も前から理論上証明されてきた。俺達の世界では今は秋で紅葉と実りで賑わっている。しかしこちらでは薄い緑の葉や芽が生えて鳥や魚が賑わっている。
俺は船に乗りながら驚いた。仲間四人は先程から俯いている。俺達を誘導する五十人の指揮者らしい女が俺達の言葉で心が読めると暴露したのだ。女は自分達の船と他の船に警笛を鳴らしながら艦隊を組んでいる。綺麗に並んでいるので練度が高いのだろう。この世界で女の地位が高いのは本当のようだ。
船が停まる。港みたいな河原に到着した。俺達は降ろされた。その時、銃を没収された。俺は不自然だがこちらの世界の言葉で、
「俺達は捕虜なのか」
と、指揮者の女に尋ねた。女は、
「心外だね。私達は色々と交渉の窓口に立ってもらおうと思っているのに」
やや不快気味に俺達の言葉で答えた。彼女達の方が流暢に話すので、俺達は自分達の言葉で話すことにした。
暫く歩く。別の女が、
「貴方達がすぐ帰らないと南から攻撃を仕掛けてくるの?」
俺は説明した。俺達は三日分の食糧を持参している。誰とも会わなければ三日以内に帰って報告をする。一ヶ月経っても俺達が帰還しなければ他の飛行隊が捜索する。俺達の死亡が明らかになったり、更に一ヶ月経っても行方不明ならばこちらを飛行機で攻撃する。心を読まれているので正直に話さざるを得ない。
指揮官の女は肩をすくめ、
「本当は一年ほど滞在してほしかったけれど、一ヶ月以内に帰すように国に要請する」
気が付けば俺達を誘導する五十人以外に人はいない。住居らしい建物や田畑らしい土地は見かけるので、屋内に留まっているか隠れているのだろう。
木造の大きな建物に到着した。屋根は平たい陶器を敷き詰めている。俺達は門をくぐり中へ入っていく。五十人中、三十人は外で待機している。俺達は階段に誘導され登っていく。かなり登ったところで大広間に出た。そこの真ん中にある椅子と机の席に座らされる。二十人が出入口や壁際に待機して俺達を監視する。残り十人は俺達の正面に座る。半分以上は女達だ。
何が始まるのかと俺は拳を握っていたが、陶器に入った飲物を出された。湯気の立つ緑色の温かい飲物だ。隊長は訝しそうにそれを睨んでいたが、俺は喉が渇いていたので飲んだ。毒が入っているならばその前に俺達を殺しているはずだ。自白剤にしても心が読まれているのだから意味がない。
苦みと甘みが同居した不思議な味だ。




