南北往復
俺達の国・嵐の国以外からも最新式飛行機を飛ばして俺達は赤道を越えて行った。燃料が半減する前に引き返しては帰還する。その間に写真を撮る。技術者達や設計者達が飛行機の改良を加えていく。
従来のプロペラ式の飛行機も速かったが、今回のジェット機は音の速さに近い。一度の飛行で俺達は入念に打ち合わせをする。雲の上を飛ぶけれど、離陸前に嵐だと飛べない。天気の影響もある。決行日をずらすのは頻繁で、作戦を練り直したり急いで決行したりもした。
写真が貯まっていく。北半球では二つの大陸と一つの列島が有る様だ。大きな山が内陸に聳えていたり逆に沿岸部に迫ったりしている。陸地では整備された道路や水路が東西南北に走っている。やはり文明が存在している。建物は木造・鉄筋・土・岩石で造られている。様々な形をしている。人間や動物を撮影するのは無理だが、北の人達から入手した図鑑の解読も進んでいる。
俺達の世界では馬・牛・豚・羊を飼っているが、北半球ではそれらの家畜はいないようだ。鳥や魚介類や鯨類を捕まえて食べているようだ。馬車や鉄道の代わりに水路の船で移動しているのが写真で分かる。
北半球を一周できるほどの燃料を機内に詰め込むのは難しい。一人乗りならば北極まで行ける可能性が有るが一度どこかへ着陸して休憩しなければならない。ジェット機が海面に着陸するのは難しい。砂漠地帯の様に何も無い所は北半球では見つかっていない。集落が程良く散らばっており、森林や河川や水路が見事に交差している。文明や生態系を壊さずに着陸出来る場所は見つかっていない。
上官の中には強硬で着陸すべきだと主張する者がいたが俺と同僚達は反対した。技術者達も学者達も俺達に賛同した。今まで刺激しないようにしていた事が無駄になるからだ。
学者達は俺達からも図鑑や辞書を送るべきだと提案した。俺達が北半球に行った時に俺達の資料をパラシュートで放つのだ。俺は良い提案だと思った。上官達は苦い顔をしたが政府の許可を得ようとした。
俺達がこうして北半球との接触を試みている間にも北の人達は相変わらず潜水艦でこちらに来ては難破船を救助しながら助けている。北の人達もまた俺達の言語を学びつつあるようだ。救助を受けた証言者達が驚いている。俺達の飛行機を見つけては観察しているようだ。
北の人達は飛行機開発に興味が無かった様だが、俺達を見て更に学習するのだろう。高性能な潜水艦を造船出来るのだから出来ないことはないだろう。
政府も上官達も俺達の文化や言語や動植物を記した図鑑や辞書を北の人達に送ることにした。しかし飛行機についての知識を機密情報として一切教えないようにしている。俺達はそれを受け取り箱に仕舞いパラシュートに取り付けて機内に入れる。秘密にしてても北の人達は飛行機を造れる気がする。俺はそう思う。




