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北進

 北半球に行く前に俺達は砂漠に行って何度も練習を重ねた。今までの飛行機も高速で一気に空を駆けていたが、この新しい飛行機は雲の上を飛ぶだけではなく、音を超えるほどの速さだ。身体にかかる圧力もより強く、酸素を送るマスクが外れたら命に関わる。入念に整備して点検しなければ練習でも危険だ。圧倒的な速さと身体への負荷に慣れるまで数ヶ月かかった。墜落せずに着陸する度に俺は安堵の溜息を吐く。


 同僚も必死だ。三人ほど機体が故障して地面に衝突する前に脱出してパラシュートで着陸した。砂漠の中であったが遭難する前に通常の飛行機で救助されたので死者はいなかった。それが奇跡でもある。


 慣れたら確実な離着陸の他に旋回したり錐揉み回転したり宙返りしたりと試していく。これも圧力がかかり酔って嘔吐しそうになる。俺は堪える。


 どんどん出来る事が増える。北半球から得た辞書や図鑑の解読も学者達によって進む。俺達はそれを学んでいく。平和的に接触して対話できれば理想的だが、先ずは俺達に攻撃や侵略の意思が無い事を伝えればそれで良い。片言の言葉を習得していく。


 俺が三十二歳の時。作戦が決行される。俺を含めた十人五機が嵐の国北岸の滑走路から次々と飛んで行く。時化と巨大海流で阻む赤道を越えれば何が見えるだろうか。無事に陸地に到達出来るだろうか。少しでも危険を感じれば撤退することになっている。それでも俺達にとっては大きな一歩である。


 雲の上は不思議な空間だ。鳥も敵機もいない。下からは雲に覆われて何も見えない。無線と計器と方位磁針が頼りだ。俺達は真っ直ぐ北上していく。


 暫く飛ぶと赤道を越えて雲が消えた。大海原が広がる。このまま進むと陸地が見つかるだろうか。俺達は隊列を崩さないように飛んで行く。


 遥か前方に島影が見える。俺は歓声をあげそうになる。そのまま進むと確かに大きな島が現れた。先頭の隊長が高度を少しずつ下げていく。俺達もそれに倣う。


 俺の後ろに乗っていた同僚が写真を撮っていく。俺達は尚も下げていく。山が見えたので同時に右に旋回していく。


 このまま北進して着陸したかったが、燃料が尽きる前に戻らなければならない。隊長の合図で俺達は半回転すると南進していく。そして上昇していく。


 また雲の上を暫く通過し元の世界に戻って行く。基地を見つけると次々と着陸していく。一人も死傷者が出なかった。安堵する。


 北の人達にも潜水艦にも会わなかったが、作戦は成功した。同僚が撮影した写真を現像して確かめれば新たな発見が見つかるだろう。

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