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fragment (勇者有利の出来レース……な事実を覗き見た)


「ここも寂しくなったね」


「ふん。余計なやつらがいなくなって清々する!」


「しっかし、本当に数減ったな。友人なやつもいたけど、あっさりと」


「…………うう」


「まだ弱音吐いてんのか。お前のところもいずれやばいんだろ」


「まあ、彼女の場合……向こうに姉がいるからね」


「っ!」


「はっ。ま、俺らには関係ねえよ」


「それで彼らだけど……」



 数人の若い男女が集まる……円卓に近い机を囲んでの会議。もっともその周りにいる人々、その姿は本来の姿ではなくホログラムに近い姿形の投影。この場に彼らはいない。全員別の場所にいる。集まって話をしなければならない、情報共有をしなければならない。彼らは同じ敵を抱えている。しかしその男女たちの座る机の椅子の数は彼らの数よりも多い。もともとこの場にはもっと多くの人々が集まっていた。彼らが抱える敵、それらに殺された。



「勇者たちか」


「はあ……なんで俺らは魔王なんかね。どうせなら勇者がよかった……」


「結局お互い殺し合うことには変わりないけど」


「立場的なものが全然違うだろうが。向こうも減ってるけど、向こうと違ってこっちは個々だぞ?」


「よくあるゲームと同じで勇者が徒党を組むのはよくあること。何せ正義の味方だからな」


「……殺し合いなんてしたくなかった」


「ま、それが本音だわなあ……誰だって殺し合いなんてしたくねーわ。俺たち魔王も減ってるけど勇者も減ってんだろ?」


「みたいだね。まあ、確かに殺し合いなんてしたくないよ。友人だった相手もいるんだし」


「こんなくそみたいな世界に召喚されなければなあ」



 彼ら魔王と呼ばれる者、そして彼らに敵対する勇者と呼ばれる者たち。どちらももともとは同じ仲間、学友であった。しかし彼らはこの世界に異世界召喚された。そして彼らは勇者と魔王の陣営に分かれ殺し合いをさせられることとなった。



「ま、俺たちは俺たちで何とかするしかねえな」


「勇者側有利すぎて笑えないけど」


「……もうやだ」



 消えていく魔王の彼ら。一人だけ残っている。



「はあ。ま、勇者側有利なのは確かだよね…………ねえ? そう思わない?」



 そう彼が空中に呟くと、空間に穴が開く。いや、穴は開いていない。幻影、向こう側に彼ら魔王と同じような円卓があるのが見える。



『全くだな。しかし、お前ほんとどこにいんの?』


「教えないよ? 僕だって死にたくないし」


『こっちのことばれてっから面倒くさい……』


『さっさと始末しておいた方がいいんだけどね。こっちの動きがばれてて魔王側が厄介なことになってるし』


「それくらいこちらが優勢になれることくらいないと困るよ」


『…………………………』


「……妹さんとの殺し合いは楽しい?」


『何がわかるっ! 家族と殺し合いをしなければいけない状況になっている奴の気持ちがわかるのかお前にっ!!』


「経験はないからわからないね。ま、殺さなくていいなら殺さずに済ませたら」


『っ! お前!!』


『おい! ったく……下手に関わってくるのも厄介だな。しかしお前も変な奴だよ』


「そうかな。まあ、変だからこそこういう能力を得たんじゃない? 君らも色々持ってるしさ」


『ちっ……ま、いいわ。お前は無視しておくに限り。いずれお前も殺さなきゃいけないんだろうけど』


「一人も二人も変わらない……最初から殺し合いなんてせずに他の方法を模索すればよかったのに」


『それが簡単にできりゃあ苦労しねーよ。勇者なのは俺たちだが、魔王に敵対しているのは勇者だけじゃない。この世界の人間がお前らの敵なんだ。そのせいで味方になることなんてできない。諦めな』


「僕は変わらず探し続けるよ。これ以上の犠牲を出さなくてもいい方法をね」



 その彼の言葉でお互いのつながりが切れる。



「……見ているんだろう? この力は僕だから得たものだろうけど、そちらも持っているはずだ」



 彼は何もない空間に語り掛ける。



「『千里眼』、この世界のあらゆるすべてを見ることのできる能力……これはそちらが僕に与えた力だ。僕が見ることができるものをそちらが見えないはずがない。僕も、皆も、何もかもが見えているはずだ」



 何もかもが見える、あらゆる場所のあらゆるすべてを見ることができる。だからこそ彼は勇者たちを回避できる。他のすべての魔王を始末しても彼だけは生き延びられる可能性がある。それくらいに彼は逃げに徹すれば安全に逃げられる。まあ囲まれれば流石に見えても逃げられない。それができるかは不明だが、彼だけをどうにかするなら勇者たちはそうしてしまえばいい、そうするしかないともいえる。



「ああ、そういえば。夜食は体に良くないんじゃない? カップ麺なんて食べてさ。っていうかジャージ? 神様っぽくない格好どうにかしたら?」



 彼は神の姿も見ることができる。『千里眼』は見える限りすべてを見ることができる。どうやら神様はどこか俗物っぽいらしい。まあこの世界の神様はそうである、というだけなのだろうか。人間っぽいのはどうなのだろう。もしかしたら、この世界を作り上げた存在は人間である、ということを示唆しているのかもしれない。

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