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fragment (力を得る理由、力を向ける矛先)

「出たな"数多食らい"!」

「殺せ!」

「賞金首だ!」


「おおっと、有象無象の雑魚ばっかり」


 暗い夜の闇の中、月の輝きでそれなりの明るさに満ちる街で小さな騒動が起きている。その騒動の中心、騒動の対象となっている存在は賞金首"数多食らい"。多くの場所で多くの人間の未来を奪い賞金首となった男性である。


「行け!」

「うらあっ!」

「吹き飛べっ!」


「壁」


 男性に向けて飛んでくる数々の攻撃。魔法のようなもの、武器を飛ばしたようなもの、爆発、様々な攻撃が飛んできているが男性……数多食らいはたった一言でそれらを防ぐ防壁を作り出す。数多食らいに向けて攻撃を放った彼らは決して弱くはないが、それ以上に数多食らいが強い。数多食らいの使う能力の多様性、またその能力の強さゆえに。もっともそれは彼の能力ではないが。


「くっ、ダメか!」

「私がやるっ! 天鳴! 穿て指針!」


「おっと?」


「"其は太陽の現身。灼熱の劫火よ狙い違わず撃ち貫け"!」


「っ!」


 ずどん、と数多食らいを襲う熱線……あるいは光線。それは壁を吹き飛ばし数多食らいを襲う。そしてその焔にて肉体を焼き尽くす。黒炭化してぼろぼろになる数多食らいの肉体。おおっ、と周囲から喝采が上がる。


「やるじゃねーか!」

「おい、これマジで死んだんじゃねえの?」

「よっしゃ! 賞金だあ!」

「いや、これあの女が総取りじゃね……?」


 そんな風に喜ぶ人々の中。一部賞金の入手の問題、分配があるのかないのかと不安がっている者もいる中。黒炭化した数多食らいの肉体がふわりと元に戻っていく。まるで時間を巻き戻し方のように。


「なっ!?」

「まさか……!」


「素晴らしい! あの壁を破ってここまでやられるとは思わなかった!」


 自分の肉体を炭にする強力な力にて殺されかけた数多食らいはその力を放った女性を称賛する。彼にとっては強い能力とは称賛するべきもの。素晴らしいと褒め称えるもの。それを使う本人ではなく、あくまで能力を、だが。


「実に強い能力だ。いいね」


 とん、と軽く空を蹴って数多食らいは女性のもとへと向かう。いつのまにか、数多食らいは女性のそばにいた。


「い、いつのまに!」


「だから、それ、貰うよ」


「え」


 ぶわっ、と数多食らいから広がり包み込むような力の流れが女性を包む。


「う…………」


「ありがたく貰っていくよ」


「あ…………あああああああああ! わ、私の能力、つ、使えないっ!? なんでっ!?」


 女性が混乱し叫ぶ中、数多食らいは去っていく。

 数多食らい、その名がつけられた賞金首。彼はなぜその名前をつけられたのか。それは『数多の能力を食らう』という特徴を彼が持っているからである。彼の持つ能力は他者の能力を奪うもの。それはとても強力で凶悪な能力。能力を持つ人物の人生を壊してしまう恐ろしい能力。それを他者の能力を奪うことに費やしている彼は実に賞金首として狙われて当然といえる相手である。











「また能力を奪ったのですか」


「必要なことだろう? 強い能力がなければお前の言う"最悪の怪物"に勝ち目はない」


「そうですね。ですからあなたが能力を集めることをしているわけです。ですが死なれたら困るので今回のような無茶をしないでもらいたいものです」


「はいはい」


 数多食らいと全身が光っている女性が話をしている。数多食らいが他者の能力を奪う理由。それは将来現れる最悪の怪物に対抗するための戦力として彼を利用するため。そのため能力を奪うことを許容している……別に許容しているというよりは、そもそもこの世界の人間がそういったことをするのは彼女には関係ないというほうが正しいのだろう。


「しかし、奪ってしまった以上……やるべきことがあるのはわかっていますね?」


「ああ、わかってる。"運命の清算"だろ?」


「わかっているのならいいのです。彼女が将来成すべきことをあなたが成さなければならない。その能力によって。」


「はいはい。まあ、ちゃんと何をすればいいのか教えてくれよ」


「それが私の仕事ですので」


 数多食らいが能力を奪うことは強力な力である。しかしそれに代償がないわけではない。それが"運命の清算"である。能力とはその人物のもつ力であり、その人物がこの世界で生き将来なすことにかかわる大きな根幹のもの。能力を奪われればその人物の人生は狂う。それは別に普通の意味での人生が狂うというだけではなく、この世界における運命にとってもまた同様のことなのである。そしてその中にはその人物が成すだろう大功、偉業などが存在する場合もある。それが成されないのはこの世界にとって大きな問題となる。それゆえに、その運命を能力を奪った彼が成す。それが代償、"運命の清算"である。

 そしてそれは場合によっては物作り、魔物退治、特殊なレシピの開発、いろいろな物事があるが、場合によっては人殺しも含む。悪人善人に関わらず。そういったこともあって彼は、数多食らいは賞金首になった。能力を奪うだけではなく人殺しの結果も含めて。悪人善人といってもそれは将来的なことで今は悪でない、善でない、将来行った悪事を成す前ということもある。まあ、それらの運命も狂ってしまうのは大きな問題となるため今すぐにやらなければいけないということばかりでもない。そういったことは今果たしても後で運命の修正があることもあるので単純な話ではないが。

勇者が勇者の力を持っているのは勇者としてその運命を果たすため。他者がそれを奪うことで勇者が勇者でなくなり勇者としての運命を果たさなくなれば? 果てにあるのは魔王が世界を支配するという運命になるかもしれない。それを代わりに果たすのは勇者の力を奪った者である……と、そういった感じの話。

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