fragment (宝石を集めて力にする土台)
「 、 」
誰かの声をきっかけに目が覚める。ここはどこだ、と見えるものを見て思う。
「 。 」
声が聞こえる。聞こえているのに、その内容は理解できない。言葉だ、確かに言葉だ。しかし自分のいた国の言葉とは別……ここはどこだ? どこかの建物の中、部屋の一室。思えば見える物が大きく見える。自分を覗いていた人の大きさを思い出す。明らかに大きい。巨人、というほどではないが……巨体ではあると見える人だった。
体を動かそうにもうまく動かない。首を動かし周りを見回す。自分も。服が綺麗だ。そして明らかに俺が着る服装でもない……病院、そういったものとも違う。籠? ベッドの上、で柵が作られているといった感じだ。なんというか、子供が入れられているベッドみたいな感じ……自分の状態もそうだ。明らかに自分の体は小さい。手も小さい。つまり今の自分の体は子供…………子供?
「 ー 。 ー」
まただ。声は聞こえているがその内容の理解ができない。いや、そもそも言語がわからないからだ。言葉は知っている……知っている? 聞き覚えはある。今の自分は子供だけど、生まれたばかりの赤ん坊という意味ではないのかもしれない。いや、せめて授乳期間は過ぎているとありがたい。いくら何でもこの体、この子供の母である女性の胸に吸い付くというのは自分には厳しい。精神的に死ねる。まだ制御できない排泄に関してはまあ、将来的に年を取った時に世話になる可能性もあるからその予行という思考で耐えられるかもしれないが、授乳は死ぬ。バブみとか赤ん坊になって甘えるような願望は自分にはないので。マジ精神的に死ねる。
「 ? 」
女性が触れてくる。今の自分はずいぶん理性的な様子に見えるだろう。赤ん坊……ではないと思うが、しかし立って歩けるほどの子供ではない……ならこのベッドはなんだろう。せめてもう少し活動しやすいベッドにしているのではないだろうか。まあベッドはそのまま使っている、という可能性はある。使いまわし。予算の節約。
「 …… ?」
何を言っているかわからない……眠気が…………
気づけば同じ景色、いや少し違う。自分も周りも。
「どうしたの? 元気ないわね」
「……そんなことないよー」
「あら、そう?」
普段の自分と今の自分は違う感じなのだろう。普段は子供らしい子供だが、今の自分は以前の人生の記憶、意識を引き継いでいる誰かだ。名前はある。しかし今ここでその名を維持する意味はない。おそらくだが、今の自分は転生と呼ばれる現象で転生したのだろう。なぜそうなったのかはわからないし、そもそも今の子供の意識と自分の意識が時々で違うのもよくわからない。
しかし、状況的に推測すれば恐らくそうだ、と思える。いや、そうであればいいなと思っている。
「いつもはもっと元気に遊ぶのに、今日は静かね」
「……かんがえごとー」
子供っぽくふるまうというのは難しい。一応それなりに動けるし話せるが……この母親っぽい人が一緒なので。いや、母親だ。自分の、この体の記憶は自分も覚えている。言葉を放せるのと同じように、記憶はしっかりと自分にも引き継がれている。
「あらあら」
母親のことはとりあえずいい。今はこの屋敷を見て回ることにしよう。従者、メイド、召使い、それっぽい人間がこの屋敷に入る。この母親らしき人もずっと自分についているわけではない。普段の世話がかかりはまた別の人だ。今たまたま自分の意識が出ているときにこの人がいるのは偶然か? 前もそうだった。いや、たぶん偶然だとは思う……そもそもこの状況がよくわからない。なぜ入れ替わる? 考えても仕方のないこと、自分じゃ制御のできないことだからあまり気にしても意味がないと思うが。
さて、今いるこの場所は貴族の屋敷だと思われる。仮に貴族でないのならばそれなりにお金のある豪商かなにか。そして自分は一応この家における長男的な立場……かもしれない。ほかの子供には出会わないし、記憶にある限り屋敷の中で見える範囲に他に家族らしい誰かがいる様子を見せない。父親は時々帰ってくる出張マン。たぶん貴族らしく中央に出向きいろいろと宮廷仕事か何かをしているか、見回りとか騎士てきなあれこれがあるか……俺の記憶では父親の職業までは判別できない。
この世界にはファンタジーらしい魔法と呼ばれる技術がある。冒険者と呼ばれる職業がある。魔物がいる。いろいろとファンタジーによくある設定が目白押しだが現状勇者と魔王という設定はない。魔王という魔族の長みたいな存在はいるようだが、それは国家的なあれで別に世界を恐怖に落とそうとしているそれではない。もっとも魔族と人間は対立しているらしい。戦争も時々あるのだとか。人種間での戦争に近いもので別に特別魔族が憎いとかでもない感じである……というのが持っている知識からの推測。現時点では情報が足りず当てにならない。
「…………」
「何か珍しいものでも見つけた?」
「……きらきらしてるー」
気にかかるのは宝石。別に俺が金目当てで宝石が欲しいから、とかそういうものではない。自分がベッドにいたとき、最初にこの世界で目覚めたときからあったものだが……あの時はちょっと意識が混乱気味で完璧には気づかなかったが、首飾りでかかっている宝石がある。この首飾り、他者の目には見えていないらしい。そもそも子供の首にかかっているものとしては明らかに違和感が強すぎる。普通子供の首にこんな物かけない。重さも感じない。宝石が一つ嵌まっているが嵌めることのできる穴はほかにもある……穴は全部で十二個、そのうちの一つが赤色の宝石で埋まっている。ルビーだろうか?
そして宝石が気にかかる。この首飾りのせいかもしれない。このまま宝石を気にして生活するようになってしまうともしかしたら綺麗な宝石好きの金くらいになってしまうと思われるかもしれない。少々自重しなければ。
「そうね、綺麗ね。でも触ったり持って行ったりしないようにね。呑み込んじゃったら危ないし」
「うんー」
「さあ、おかあさんといっしょに行きましょうか」
どこに行くかは知らないが、とりあえず連れられてついていくことにする。この今目覚めている状態がいつまで続くか知らないが……将来的にちゃんと意識は統合されるのだろうか。それとも自分とこの体の持ち主が別々に意識を持つようになるのだろうか。後者は面倒くさいのでもう少し何とかなってほしいところである。




