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fragment (森の魔法使い)

「よっと……ふむ…………………うーん…………っと、こんなものかな」


 暗い覆いの中、一人の男性がぶつぶつと呟きながらうっすらと光る魔法陣を弄っている。


「流石にそろそろ魔力も薄れて来たかな。この場所も移し替えるべきか……一応補充される魔力は十分、繋がりは悪いものではないが…………少し減ってるか? まあずっと外に出てないしな。そういえば引きこもってもう何年だっけ……魔法関連に集中してると時間忘れるからなあ……あー、お腹すいた? お腹すいた、もう何年食ってないっけ……まるで霞食ってる仙人みたいな生き方だよなー。植物的って言えば仙人に近いんだろうけど」


 ふっと作っていた魔法陣を消して男性は立ち上がる。覆いの中から外へ。暗い所から少し明るめの場所へ。その場所は森、覆いを作り部屋のような閉所の空間を作り上げていたのは囲むように生えた草。外は少し明るいが日の明かりはなく、月の明かりもない。空が薄明かりでぼんやりと、しかし夜闇のような暗さを保っている不思議な空間。周囲は森に満ちて、ある一定の範囲からは切り取られたかのように黒い空間が壁となっている。


「………………!」

「お、久しぶり。元気してたか?」


 男性が覆いの外にでると近くにあった木の一つが変形し人間の上半身となって男性に近づく。女性のもので下着なども付けていない。もっとも造形はそこまで精密ではないため女性的な艶やかさは感じないだろう。それは木々の意思、精霊、妖精、樹精と呼ばれるような存在である。この場所にある木々のいくつかには彼ら彼女らのような存在が宿り男性に対して従属している。他にも動く草木草花もありそれらも使い魔のような存在として男性に使われている。

 彼らにとってはこの地は安住の地、男性の支配下にある土地で木々が生きるのに問題のない敵となる存在のない地。それゆえに男性は慕われ……ているかはともかく、それなりにいい関係性でいられている。


「もう何年たった?」

「…………」

「あー、そうか。えっと、一、十、あー、そうか、百年以上はたってるか。そりゃ薄れるわなー。実際何年たってるかまではわからないか……まあ百年以上たってるならやっぱり外に出たほうがいいよな」


 男性がこの空間に来て既に百年以上たっているらしい………と言うのは少々おかしな話だろう。通常人間はそれほどの時間を生きることはできない。食事もなしにずっと生活していることも不可能だろう。しかし、男性はそれができる。


「ありがとなー。さて、ちょっと外に出てきますか……」


 黒い空間の壁の場所まで行く。この地は黒い空間の壁によって隔離されている場所。この地は彼の支配地、黒い空間の壁による隔離は彼の手によるものでありそれを解除するのは彼なら容易だ。


「御開帳ー」


 そして黒いう空間の壁を切り開き、そこから外に出る。


「………………あっれー? 俺確か森に穴作ったはずなんだけど……まあそれだけ時間たったってことかなー。そりゃそうなるか。っていうかこれが原因か。あそこに魔力の供給が行かなかったの。大分ため込んでいたから問題はなかったけど、こう森が無くなってたら厳しいな。一応俺のため込んでいる魔力で補充されるからそこまで大きな問題にはならないけど、俺が魔法の研究できなくなるのは問題だー。まったく……誰だこんなことしたの? 自然にはこうはならんでしょ。はあ、まったく……森よ」


 ざわざわと周囲に魔力が満ちる。そしてぼこりぼこりと大地の底から何かが沸き上がってくる。それは茶色、それは緑、この地にかつては得ていた植物たちと同じ植物、草木草花あらゆる種類の植物が生えてきた。それを成しているのは男性の魔法、植物を支配し操り生み出す最大最強最高位の魔法……彼は最大級の植物の魔法の使い手なのである。

 彼がいた森の空間もまた彼が作り上げた世界、小規模の植物で満たされた植物のための世界。彼が引きこもりあれこれするのに最適な植物異界。それもまた植物の魔法の手によるもの。彼はこの世界に転生してきたいわゆる異世界転生者、その際に神に植物関係の魔法の能力を与えられ、今の彼はその魔法を使いその結果長生き、長寿になっている。また植物は彼の力の源であり、周囲に植物があればそれだけで魔力が供給され無限に魔法を扱える。そして今やったように森の一つや二つを作り上げるのも容易な魔法の能力を持っている。もはや植物魔法の神と言ってもいいのではないだろうか……というのは流石に言いすぎだが、それくらいに彼の植物の魔法はとんでもない規模の魔法になる。そもそも小規模でも異界を作り上げる時点であり得ないレベルの魔法だろう。


「んー、荒れ地だった場所が元の森に! しかし一体なぜ森が失われていたのか……焼き畑? でも人はいなかったのよな。何か大規模な戦争か何かでもあったのかね。わからん。まあいいか。とりえあず……ドリアードこーい」

「…………!」


 彼の異界の中にいる樹精の一人を呼び出す。


「ここ頼むわ。しばらくここにいて問題なさそうだったら回収するから。何かあったら連絡よろしく」

「……!」

「頑張ってねー」


 特に危険がなければそのまま居ついてもいいし、また彼の持つ異界の中に戻ってもいい。現時点では様子見で何か起きないかの確認が先である。森が荒れ地に代わるほどの異変、異常。


「ここで異界の方に戻ってもいいけど……せっかく外にできたんだし、久々にお外を楽しみますかねー。荒れ地ができるよう何かがあったみたいだし、その何かが何なのかを確認するのも必要だし。まーた同じことになったら困るしねー」


 のんびりとしているが、危機感はある。森の異変、森の消失。植物を操り支配し生み出す彼にとってはそれは大敵ともいえる事変。できれば二度と起きないように、のんびり過ごしても問題ないように、そうできるようにその事変を起こす元凶をどうにかしたい。そう思いながら、森を構えても問題ない植物の多い場所も探すため彼は旅に出る。

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