fragment (数値化と数値変動のチート)
「あれ? ここはどこだ……? いや、どう考えてもやばいよねこの状況?」
いつの間にかどこかわからない場所にいた男性。年齢の程はおよそ二十前後、恐らくは大学生だろう。そんな人物がいきなりどことも知れない草原の中に立っていた。いきなりその場にいる本人はまず理解ができない。仮に運ばれるにしても経っている状態から始まるのはおかしい。彼も直前の記憶は少なくともこんな見たこともない場所ではないだろう。
それ以前に彼の最後の記憶は自分に迫るトラックだった。避けることできず確実に轢かれていたはず、だったのだが。気が付けばこの何処であるかわからない場所にいた。
「……今どき転生トラック? 散々使い古されたネタだと思うけど……いや、まて。転生だとは限らない……突発的なワープとかもうちょっと現実的な物を……」
「ワープの何処が現実的なわけ? もうちょっと現実的な発想しなさいよね」
「っ! 誰だ!?」
唐突に自分の間近から聞こえた声に男性は反応する。その声の咆哮に振り向き見えたのはふわりと浮かぶ小さな人影。それは幼いという意味で小さいのではなく、物理的に小さな人影だ。しかもうっすらと透けている。一番近しいのは妖精だがその人影は現実的な人間の投身とは違い人形のような投身をしている。空飛ぶ透けた人形、あえて呼称するならばそれが一番正しいだろう。
「えっと…………」
「ふふん! 驚いたでしょう! 私はね、あなたが転生した先において困ったことを解消するための案内役をつかさどるあなたの力を表出した形の妖精! その名もイーラ! 驚いた!? ねえ、驚いたでしょう? ふふ、言わなくてもいいのよ? 私はその辺にいる誰よりも美人で美しくて可愛くて荘厳で素晴らしくて美しくて超美しいのよっ! どう!」
「…………………………うん、うつくしいよ」
「ありがとうっ!」
満面の笑顔で答える妖精……イーラであるが、その返答を行った男性は表情が固い。返答も棒読みである。イーラが言う通り彼女の見た目は決して悪くない、むしろ可愛らしい美しいの言葉が似合うものだろう。しかし主張するほどではないな、と男性は思っていた。
「ところで、一体なんで現れたの?」
「ああ……あなたがお困りだったからよ! とりあえずね、この世界にあなたは転生してきたの!」
「転生……」
「正確には転移だけど、元の世界のあなたは死んでるから転生! 体は元々の体と同じものを構築して使ってるから特に問題はないでしょ? 私がやったわけじゃないけどね!」
「そうなんだ……」
厳密には異世界転生であるが本人の感覚でいえば異世界転移に近いだろう。転生のようにその世界の人間として生まれる過程を通らず、その世界にいきなり大人の人間として元々の自分と同じ体で発生している状態だ。服装も同じだし、持ち物も同じ。簡単な筆記道具や財布などの入ったバッグが一つのほとんど着の身着のままの不安な状態である。
「……うわ、何かすごく不安になる……持ち物これだけか?」
「持っていた物はあなたが送られるときに有していたものに準拠するわ。残念ながらあなただけ特別扱いしてこの世界で使える便利なものをプレゼント、というわけにはいかないもの。でもね、でもね! あなたはその代わり私、私を含む特別な力を与えられているの! ありがちだけどね」
異世界転生や異世界転移において神に与えられたりすることの多い特殊な力……一応今回の異世界転移は神による転移であるためそういった特殊な力が与えられている。でなければ面白くない、と。
「……イーラだけ?」
「むしろ私の方がおまけなのよ! ふざけた話だと思わない!? この素晴らしい私を捕まえておまけ扱いだなんて! 私の方こそ本命であると称えるべきだと思うわ! ねえ、そう思うでしょ!?」
「あ、うん。そうだね」
「でしょ! あのバ神様はわかってないよのねほんと! そもそも今回の異世界転移もまた怒られるんだから! っと、あんまりあのバ神様のことを思い出してもプリプリしちゃうわ。さっさと忘れて本題に戻りましょうね。あなたに与えられた力に関して」
話が脱線しかけたが話を戻すイーラ。そもそも話の脱線の原因は彼女な気もするが、あまり気にしないでおこう。
「あなたに与えられた力はー……ダカダカダカダカダカ、ジャン! 存在数値改竄反映権限機構よ!」
「……存在数値改竄反映権限機構? 単語が……」
「"Exist numerical falsification Rreflection Authority System"……略してE.R.Aシステムよ!」
「なんで英語に直した!? っていうか色々な意味で危なくないかその略称!? っていうかそこの頭文字取るの!?」
「だって私の名前の元だし!」
ERAでイーラ、というのは少し違うような気もするし、色々な意味でこのシステムの名称は問題があるような気もする。と、男性がいくら突っ込んでも既に賽の投げられた仕方のない状態である。
「まあ、嫌なら数値改変能力って言って置けばいいわよ? 別に私は細かいこと気にしないし」
「わかった……えっと、数値改変? どうやって改変するの?」
「ふふ、なら教えてあげるわね! えーっと……この草を見なさい!」
イーラに言われて男性は指差された草を見る。
「じっと見て、この草の細かい情報を知りたいと思えば……」
「あ、何か出た……年齢、体力、耐久力、色々と何か書かれてるな……」
「いわゆるステータスとかそういう感じの物よ。その存在の持つ数値情報。内容自体はいろいろだけど、数値化できる情報であればそこに表示されるわ。一応限度はあるし、表示したい情報したくない情報の取捨選択もできるの。それで、その数値なんだけど、あなたはその数値を変更することができる。プラスもマイナスもね」
「へえ……」
いまいち男性はこの能力の強みを分からない。
「そうね、街まで行きましょう! 人間のいるところならもっとわかりやすいわ!」
「街よ!」
「何か省略された気がする」
「気にする必要はないわ。それよりも……あの女の子を見なさい」
「隠れてこそこそ女の子を見る男……変態か変質者か犯罪者か」
「どれも世界のゴミね」
「酷くない?」
辛辣な言われようだが男性は女の子を見る。とうぜんイーラが教えるということである以上数値の表示が必要になる。
「年齢は十五、身長体重……あ、スリーサイズまで表示されるのか。流石にこういった個人情報は……」
「女の子の秘密を暴けるのよ。実に犯罪チックな男の夢の詰まった能力だと思わないの?」
「いや、さすがに酷いからね?」
「それで……あった、これこれ。好感度ってあるでしょ?」
「ああ、これ? でも零だけど……」
「それをね、百まであげるの。ちょちょいのちょいっと」
「あ、こら」
イーラが勝手に数字を弄る。先ほど零が表示されていた好感度の欄は百に数値が変わっていた。
「はい、これであの子はあなたに惚れました」
「ちょっと!? 非道くない!?」
「ハーレム作り放題よ? 嬉しくないの?」
「そこまで俺は堕ちてない……っていうか、会ったこともないのに惚れるの?」
そもそも男性は数値を弄った女の子に合うったこともないのに惚れられる、というのはおかしな話だ。確かに数値をいじることが出来る陽であるがそれによる影響はないように見える。別に先ほどから女の子の様子は変わっていない。
「あったこともない今は面識がないから何も想えないだけ。会いさえすればあなたに一目惚れ、いちころよ?」
「うわあ…………」
流石にそういうことをするほど男性は外道、非道な人間ではない。
「戻しておくね」
「もー。女の子に好き勝手出来るんだから喜べばいいのに……」
「イーラは好き勝手されたいの?」
「私は能力の持ち主であるあなたに絶対服従だから基本的にあきらめてるわ。でも、言わせてもらうけど私はあなたの能力だから右腕とか左腕を愛するようなものになるけど、それでもいいの?」
「……それはまた高度なプレイだな、色々な意味で」
男性とイーラの関係はいろいろと複雑で面倒な形であるようだ。流石に戸惑っている。ともかく、彼はこの世界に来て得た数値改変能力によっていろいろとできるらしい。この先何をするのかは彼の判断次第だが……まあ、そこまで悪いことをすることはないと思われる。
色々ネタが危ない。なお、アレは本来数値をいじるゲームではない。セーブデータがいじりやすいのでチートが楽なだけ。




