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7 族長の遺言

 ……………………


 …………


 ……


 はっ! 気が付くと、そこは大きな天幕の中だった。

 なにか恐ろしい物を見せられて、めまいを感じた気がするが思い出せない。いや、思い出したくない。


「我がモンモン族の族長が薨去なされたのは先月の初めですじゃ」

 

 目の前の老人が重々しく口を開いた。

 名を、エイジャナイカエイジャナイカドドンガドンさんと言う。モンモン族の族長に仕える重臣とのことだ。

 

「125代ヨーミョーハツルジョツルジョトモウセシガー様には3人の息子がおりました。ヨーミョーハツルジョツルジョトモウセシガー様はこの3人に遺産分けをなされたわけです。

基本的には長男には全体の2分の1、次男には3分の1、三男には6分の1をそれぞれ受け継ぐようにとの仰せでした。

大体のものはそれできちんと分けられたのですがただ一つ、どうしても上手く分けられないものがありました。

それが金羊毛(アルゴシープ)なのです」

「アルゴシープ?」

「はい、金色の毛並みのそれはそれは美しい羊です。

金色の羊毛は大変な高値で取引されますし、角は宝飾品として、肉は高級食材として金と同じ価値で取引される、生きた財産と言われている羊でございます。ですが育てるのがとても難しく、羊毛が取れるまで育成するのも至難とされています。

故にアルゴシープを育て上げることができた者は、それだけで賞賛に値すると言われております。

このアルゴシープをヨーミョーハツルジョツルジョトモウセシガー様はなんと35頭も持っておられるのです。

『草原の育て主』。

我々、モンモン族にとって最高の誉れの称号を持っておられるお方でした」

「なるほど……」

「ゆえにアルゴシープは他の財産とは違う意味がございます。

一族を率いていく権威と資質の象徴なのです」

「まあ、その羊が大事なのはわかったが、だからなんだ。ちゃっちゃと分ければいいではないか」


 後ろに控えていたパチキカマシタローがじれたようにいった。

 

「つまり、うまく分けれないってことなのでしょう。

35頭を2でも3でも6でも割れない。だから遺産相続でもめていると、言うことですね」


 俺の言葉に、エイジャナイカエイジャナイカドドンガドンさんは、ぱっと明るい表情を見せて、何度も頷いた。


「そうなのです。そうなのです。さすがは聡明なるエロデロンドロロンスットコドッコイダッタの勇者様だ。古の言い伝えは本当でした。この地に再び争いの種が芽生える時、名もなきエロデロンドロロンスットコドッコイダッタ様が現れ、解決をしてくださる。

我ら、モンモン族に200年も前からの言い伝えでございます。

ですから、なにとぞ、この難問を解決していただきたいのです」

 

 エイジャナイカエイジャナイカドドンガドンさんは、また深々と頭を下げた。


「うーん、お願いをされてもねぇ」


 35頭の羊を遺言通りに分けるのは不可能だったと思った。

 腕を組んで、悩んでいると、パチキカマシタローが再び言った。


「簡単です。俺が割り切れるように羊を切ります」


 とんでもないことを言い出した。


「いや、駄目だろう」

「大丈夫です。きっちり真ん中で切り分けてごらんにいれます」

「そういう問題じゃない。そんなことしたら死んじゃうでしょう。

話、聞いてた? アルゴシープはこの人たちにとってとても大事なものなのよ。

殺したら大騒ぎになるって」

「それなら私が、回復魔法をかけますわ」


 とシモネッタが参戦してきた。


「私が前後に切り分けられても生きていられるように回復魔法をかけましょう」


 もっととんでもないことを言い出したよ。


 俺の頭の中で、前半身と後半身に分かれた羊が草原で草を食んでいる姿が思い浮かんだ。


「やめて、それ、気持ち悪いから、ほんと、やめてね」

「ふふ、どうやら、ここは私めの出番のようですな」


 と、ヒラメキンが不敵な笑みを浮かべながら言った。


「なにか、方法があるの?」

「我が魔法で、羊を一頭増やしましょう」

「え、そんなことできるの! さすが宮廷魔法使い」

「勿論です。お見せしましょう」


 ヒラメキンは、そう言うと目の前にあるお茶菓子に向かって呪文を唱えた。

 するとお茶菓子が一つ増えた。


「おお、すごいな。これはまさに魔法」


 俺は感心して、増えたお茶菓子を手に取ってみようとした。


スカッ!


 お茶菓子を掴むことができなかった。


「あれ?」


 もう一度、慎重にお菓子を掴もうとする。しかし、目には見えるのに、お菓子に触ることができなかった。


「え、これ、触れないよ」

「そりゃ、幻ですから、触れませんよ。まあ、遠目から見ればわかりませんから。

ばれないうちにさっさと行ってしまえば問題ないでしょう」

「問題大ありだよ。

しかも、エイジャナイカエイジャナイカドドンガドンさんの目の前で、そんな堂々とネタばらしすんな!」

「むう、駄目ですか?」

「当たり前だよ」


 ヒラメキンはしょんぼりしたように言った。


「うーん、割り切れないものは仕方ないからなぁ。とりあえず三人に会って、説得してみるのはどうだろうか。

だれかが折れてくれれば、丸く収まるんじゃないのかな」


 いいアイディアが思いつかないので、苦し紛れに言った。


「そうですか。お三方も、あるいはエロデロンドロロンスットコドッコイダッタ様の言葉なら聞き入れてくれるかもしれませんな」


 エイジャナイカエイジャナイカドドンガドンさんはそう言うと三人に会わせてくれる手配をしてくれた。


 そして、すぐに天幕に三人の男がやってきた。

 エイジャナイカエイジャナイカドドンガドンさんが三人を紹介してくれた。


「長男、ジュゲムジュゲムゴコーノスリキレ様。

次男、カイジャリスイギョノフウライマツ様。

そして三男、ポンポコナーノポンポコピー様です」


「ああ……」


 俺は思わず、ため息をつく。

 たらちねの息子は寿限無かよ。と思った。


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