5 旅の仲間
早速、王様に紹介された研究者に会うことにした。
研究者は城のはずれの古びた塔の一番上の階にいた。
いかにも研究者の部屋、というようにいたるところに分厚い本が高く積み上げられていた。
ま、本の上にはうっすらと埃が積もっていたので、どこまでこの本たちが研究の役に立っているのかは疑問ではあった。
「ほう、お主がエロデロンドロロンスットコドッコイダッタか」
研究者はヤギのような髭をしごきながら、じろじろとねめつけてきた。
名前をエウレカという。……普通の名前じゃないか!
すこし、がっかりした。
ま、それはともかく。
「このエロデロンドロロンスットコドッコイダッタについて知っていることを教えてほしいのです」
早速聞いてみた。質問はシンプルに限る。
「太古の種族がエロデロンドロロンスットコドッコイダッタじゃ。
特に名無しのエロデロンドロロンスットコドッコイダッタが現れると、その地に災厄が降りかかると言われておる」
「それは聞きました。西の賢者が書いた予言書にそう書かれていたんでしょう。
でもそれ本当なんですか?
単なる与太話……、いや、おとぎ話じゃないんですか?」
「なんと罰当たりなことを!
名無しのエロデロンドロロンスットコドッコイダッタは、過去に何度か現れておる」
「じゃあ、その時にどんな災厄が起きているのですか?」
「それは!
……詳しい記録はない。みな地方に残っている断片的な記録ばかりじゃ。
だが、それによるとだな。人々が飢えで苦しんでいるのを助けたとか。争いを止めたとか。魔物を封じたとか。そのようなことが記録されておる」
飢えで苦しんでいる人を助けたとか、争いを止めたとか……?
そうなると災厄と言うのは飢饉とか戦争とか、あと、魔物ってのは魔王とかのことなのだろうか。
「それで結局、エロデロンドロロンスットコドッコイダッタってのは何なんでしょう?
どんな特徴があるんです?」
「謎じゃな」
「また、それですか? 過去のエロデロンドロロンスットコドッコイダッタについては何か書かれていないのです?
どうやって飢饉や戦争を止めたのかとか分かっていないのですか?」
「なに? 飢饉とか戦争をとめたのか?
それは有益な情報じゃ。忘れないようにメモっておかねば」
「いや、いや、ちょっと待って。そう言ったのはあなたですよね」
「うん? そんなことは言っておらんぞ。飢えとかで苦しむ人を助けたとか、長く続く争いをあざやかに解決した、ということしか記録にはないからな。
なるほど、飢餓や戦争を止めたとなると、まさに災厄を止めし勇者にふさわしい。
メモ、メモと……」
エウレカさんは、紙に忙しそうにペンを走らせた。
うーん、なにか話がかみ合わない。これ以上、この人と話しても何も得る物がない気がしてきた。
自分のことは自分で確認しないと駄目だな、と思った。
「最後に一つ教えてください。その西の賢者が書いたという予言の書を読ませてもらえませんか?」
「なに? 予言の書を読みたいだと?」
「はい」
「……無理じゃな。予言の書はすでに散逸しておる」
「散逸している?!」
意外な回答に驚いた。
「え、だって、その予言書に書かれていたんでしょう。散逸していたら分からないじゃないですか」
「昔は何冊かあったのだが、いろいろあってな、みな失われた。
とりあえず残っていた写本をつなぎ合わせて、重要そうなところが断片的に伝わっておるのじゃ。
その中に、エロデロンドロロンスットコドッコイダッタの災厄という一節が伝わっておる」
「うーーーん」
もう唸るしかなかった。
「だがしかしじゃ」
困っているとエウレカは言った。
「もしかしたら西の賢者の住んでいたところに一冊ぐらいあるやもしれぬ」
「西の賢者の住んでいたところに? それはどこなんですか?」
「ここから200キロほど西にある村に住んでいた屋敷があるのじゃ。そこに秘密の書庫があるという伝承がある。その秘密の書庫ならば原本があるかもしれぬな」
「秘密の書庫?」
「うむ、伝説じゃがな。その秘密の書庫を見つけられた者はいまだかつておらぬ。ゆえに秘密の書庫じゃ」
「なに、予言の書を求めて西の賢者の館に行ってみたいとな?」
ロンゲチャパツ3世は少し驚いたように言った。
2回目の謁見の時の話だった。
「話を聞きましたところ予言の書は散逸していると聞きました。
今回の伝承も断片との話です。ならば失われた箇所になにか災厄についての記述があるかもしれません。
何とかして完全な予言の書を手に入れるべきです。
その可能性として西の賢者の秘密の書庫を見つけて予言の書を手に入れるべきかと思います」
「ふむ。なるほど。しかし、旅は危険だ。
お主の身になにかあればそれこそ一大事だ。それにいつ災厄が起きるやも知れん」
「ならば旅の伴をおつけください。
護衛と連絡のための者をおつけください。
災厄が起きればすぐに戻ります。
このまま、いつ起きるか、何が起きるかも分からぬ災厄を待つのは時間の浪費かと思いますが、いかがでしょうか?」
「なるほど、お主の言うことも最もなことじゃ。すこし考えよう」
王様はそう言ってくれた。
そして、次の日、王様から呼び出しがかかった。
ロンゲチャパツ3世は、開口一番こう言った。
「お主の進言を受け入れることに決めた。
西の賢者の館へ行くことを認めよう。
そして、その旅の護衛として供の者を手配した」
王様が視線を動かした。その先には3人の男女がいた。
金髪に白いローブを纏った女性。ものすごい美人だった。そして胸がすごいことになっていた。
ゆったりしたローブがまるで富士山のように隆起している。鼻血、出そう……
そして、その横、金属製の鎧も身に着けたいかにも騎士といういでたちの男。
なぜか頭はモヒカンだった。眉毛も剃っていた。ちょっと怖い……
最後に、上半身裸でムッキムキのマッチョな男が一人。これは、ええっと、格闘家とか言う感じなのだろうか。
「聖女 シモネッタ
剣聖 パチキカマシタロー
そして宮廷魔導士 ヒラメキン
我が王国随一の者たちだ」
それが、これからの旅の仲間たち……、ぶっ飛ぶのも大概にしろ、と思った。




