第8話:進み続けた先に、必ず成果は訪れる。
「今日はE、F、G、H組が発起側の番だ」
夏恋、瞬、イリスの三人は食堂で話し合っていた。
「これが俺たちのチャンスだ。選択側になれば自分の得意な種目を選べる。一ラウンド終わったばかりで、他の奴らも俺たちの実力はまだ知らない」
「うちのクラスには実力を隠す任務を受けた奴が10人いる。でも昨日は不意をつかれて不得意な種目をやらされたから、結果はあまり良くなかった。でも今日はこっちに有利だ」
「他のクラスも同じく10人が実力隠しの任務を受けてると考えて問題ないだろう。つまり学校は全部で80人にこの任務を配ってるってことだ。昨日俺たちが直面したのは少なくとも40個の爆弾みたいなものだ」
「夏恋の言う通りだ。前期はこの10人をうまく使うのが鍵だ。後期になるとみんな実力がバレてしまって、このアドバンテージは使えなくなる。でも…クラスメイト全員が全力を出すかどうかはわからないな。全敗したら退学だけど、一回勝つくらいならそんなに難しくないはずだし」
「ああ、それなら日曜日に学校がこっそりあの連中に『任務は終了した』ってメールを送ってたらしいよ。今日になって長月さんから聞いたんだ」
「それじゃあ、今日もみんな頑張ろう!」
夏恋は手をテーブルの上に差し出した。
瞬とイリスはその手の上に自分の手を重ねた。
「頑張ろう!」
「君が高橋瞬くんか」
青い髪の男子生徒が、教室に戻ろうとする瞬を呼び止めた。
「君は…」
「H組の小池平野だ。発起側として、君と対決したい」
瞬は目の前の男をじろじろと見た。中肉中背、身長はやや高め、目は細くて常に笑みを浮かべている。
「高橋くんは実力が高いと聞いて、是非挑戦してみたくなったんだ」
「わかった。じゃあ、魔法実践の会場に行こう」
魔法実践対決は、対決する双方が特定の防御陣の中に立ち、交互に相手に3回ずつ攻撃を行う。毎回防御陣が威力を計測して点数化し、最終的に高得点を出した方が勝利となる。対象に直接作用する魔法の使用は禁止されている。
(最初の攻撃は抑えめにしておこう)
「どんな魔法を使うんだ?今から高度な魔法を教えてやろうか?」
白夜が瞬の隣に立って尋ねた。
(いらない。授業で習った魔法だけで十分だ。これ以上俺の噂を広めたくない)
「範囲燃焼!」
これは佐藤先生が最近教えたばかりの火系魔法だ。小池平野の保護陣の周囲に一斉に炎が燃え上がり、勢いを増し、周囲の空気は灼熱に包まれた。小池はその炎の猛威に包み込まれた。
3200点。
「確かに焼かれる感覚は味わわせてもらったが、まだ物足りないな」
小池平野の顔には相変わらずの笑みが浮かんでいたが、数粒の汗が頬を伝っていた。
「それじゃあ、俺の番だ。暗夜よ、降り注げ!」
黒い物質が瞬を取り囲み、半球状に覆い、かすかに紫色の光を放っていた。半球の表面を物質が瞬の周りを回転し、回転に伴って紫の光が増していき、やがて紫色の光の半球体となり、そのまま炸裂した。瞬の周囲は闇から紫色の光に満たされ、再び一瞬の失明を味わった。
爆発音は大きくはなかったが、爆発の後、瞬の足元には滑らかな円環状の窪みができていた。
26800点。
「暗系魔法か…この男は要注意だ。暗系魔法をあそこまで使いこなすのは努力だけじゃできない。何か隠された秘密があるはずだ」
白夜は円環を跨ぎ、小池の前に歩み寄り、改めてその男を観察した。
「瞬、もっと力を出せ。早く終わらせろ。奴も全力を出してない。早いとこ自信を砕いてやれ」
「火柱術!」
瞬の目の前に炎が集まり、回転を始め、渦を形成した。速度が上がるにつれ、その規模も大きくなっていった。
「高橋くん、君は火系魔法しか使えないのか?」
小池は相変わらず微笑みながら言った。
「こんな簡単な魔法でお前を倒せる」
瞬も微笑み返した。
ほんの二言交わす間に、火の渦は校舎一棟分の大きさにまで成長し、なおも広がり続けていた。
瞬が手を前に差し出すと、オレンジ色の巨大な火柱が渦から放たれた。火柱の高熱は地面を溶かし、防御陣が生成した保護バリアに直撃した。
炎の色は徐々に変化し、オレンジ色から赤色へ、そして純粋な赤の光柱へと変わった。保護陣が突然激しく点滅し始め、バリアにもひび割れが生じた。
数秒後、バリアは轟音とともに粉々に砕け散り、法陣も光を失った。
「時間停止!」
火柱と渦は同時に静止し、その時間は止められた。
その時、スーツを着た中年の男性が歩いてきた。
魔法実践対決の安全を担当する宮野主任だ。
「間に合ったか。生徒、魔法を収めろ。法陣が破損したため点数が算出できない。高橋くんの勝利とする」
「どうやら君の勝ちだな。やはり実力が足りなかったようだ」
小池平野の笑顔は消えなかったが、背中はすでに汗で濡れていた。
宮野主任は瞬のところへ歩み寄り、肩を叩いて立ち去った。
「楽勝だったな」
白夜は誇らしげに言った。
その頃、体術対決会場では。
「風祭さん、うちの鳥山くんを半殺しにしたそうだな」
「あいつが試合前に煽ってきたからだよ。それに、猫宮さんもうちの高橋瞬を気絶させたって聞いてるけどな」
夏恋は鋭い目つきで猫宮夜を睨みつけた。
「どうやら俺たちは因縁の対決ってわけか」
「第一ラウンド、準備――始め!」
ベルが鳴ると、夏恋はすぐに猫宮夜の左側へ突進し、途中で左にフェイントを入れ、急に右方向へ切り返した。
「速いけど、私はもっと速いよ」
猫宮夜は即座に左へかわした。
夏恋は右に体をひるがえし、右足を猫宮夜に向けて振りぬいた。
猫宮夜は跳び上がってかわした。
夏恋は両手で猫宮夜の頭部を狙い連打を繰り出す。猫宮夜は左右に首を振って素早くかわした。
夏恋は徐々に猫宮夜をオクタゴンの端へと追い詰めた。
その様子を見た猫宮夜はすぐにしゃがみ込んだ。
「しゃがむのを待ってたんだ」
夏恋は両手で壁を掴み、両足で猫宮夜の腰を挟み、手を離して後方にバック宙を打った。空中で一回転した後、猫宮夜は地面に叩きつけられ、夏恋に両足で押さえ込まれた。
「10、9、8…3、2、1、第一ラウンド、風祭夏恋の勝ち」
「油断したな。まさかそんな力があるとは。本気を出すぞ」
「第二ラウンド、準備――始め!」
第二ラウンドが始まると同時に、猫宮夜は夏恋に向かって右の拳を繰り出した。
夏恋は慌てて左手でガードした。しかし防いだ瞬間、猫宮夜は跳び上がって夏恋の上を越え、背後に着地した。
「猫猫寸拳!」
夏恋は背中から全身に大きな衝撃が走るのを感じた。体が制御できず、吹き飛ばされた。
猫宮夜はまだ止まらず、爪を伸ばし電光石火の速さで夏恋の体に突き刺し、全身に無数の血痕を刻んだ。
「これが猫猫点穴だ」
夏恋は地面に倒れ込み、立ち上がることができなかった。
「…4、3、2、1、第二ラウンド、猫宮夜の勝ち」
しばらくして、夏恋は全身の傷を見ながら、歯を食いしばって痛みに耐えながらゆっくりと立ち上がった。
(まだ負けられない。瞬の仇を討つんだ。絶対に、絶対にここで倒れるわけにはいかない…)
夏恋は怒りで目を見開き、猫宮夜を鋭く睨みつけた。
「おやおや、そんなに怖い顔しないでよ。もうそんな状態なんだから、素直に降参すればいいのに」
「私…私はお前が瞬を気絶させた代償を思い知らせてやる!」
夏恋の血管が一瞬にして黒く変色した。気づきにくい一瞬だったが、すぐに元に戻った。
「第三ラウンド、準備――始め!」
夏恋は最速で猫宮夜に向かって突進した。傍から見れば瞬間移動のように猫宮夜の目前に現れた夏恋は、左拳を猫宮夜の右腕に打ち込もうとした。猫宮夜は右にかわしたが、夏恋の拳が周囲の空気を押しのけて気流を生み、鋭い衝撃音を響かせた。気流はオクタゴンの壁にぶつかり、大きな痕跡を残した。
猫宮夜はその場に立ち尽くした。
「あ…あなた、何なの…」
猫宮夜の声は震えていた。
夏恋は振り返り、猫宮夜を見た。
猫宮夜は夏恋から放たれる威圧感を感じ、恐怖が心に広がり、体が思わず震え始めた。
猫宮夜が再び意識を取り戻した時には、夏恋の拳が自分の胸に打ち込まれていた。
ほんの一瞬のことだった。猫宮夜は巨大な衝撃でオクタゴンから吹き飛ばされ、外壁に激突して止まった。胸部はひどく変形し、胸骨は粉々に砕け、口からは絶え間なく血が溢れ、内臓は既に移動していた。猫宮夜は瀕死の状態に陥った。
救命処置の教師がすぐに高級治癒魔法を施し、猫宮夜は辛うじて命を繋ぎ止めた。
イリスは教壇で本日の結果を報告していた。
「対決終了時点で、我々のクラスは25勝5敗、クラス積分25点、合計31点で順位は2位です。皆さん、お疲れ様でした」
「今日、お前の復讐は果たしたぞ」
夏恋は机に突っ伏している瞬を見た。
「猫宮夜と当たったのか?」
「ああ」
「ありがとう。二連勝か、気分はどうだ?」
瞬は体を向けて夏恋を見た。
夏恋は少し照れながら手を振った。
「別に…大したことじゃないよ」
「お前、結構俺のこと気にしてるんだな。殴るだけの暴力女じゃないってことか…いてて」
夏恋が瞬の頬を引っ張り、体を元の向きに戻した。
「だって私達は友達だろ」
対決三日目。
この日はA、B、E、F組が発起側だった。
瞬と夏恋はどちらも筆記対決に参加した。白夜の助けがある瞬は難なく勝利を収めたが、夏恋はC組のある生徒に敗れた。
イリスは得意ではない魔法に参加したが、幸い相手の実力は平凡で、僅差で辛勝した。
この日B組は11勝19敗、合計積分42点で5位だった。初日に比べて大きく前進したが、B組にはまだ一度も勝っていない生徒が3人いた。
対決四日目。
「今日はC、D、G、H組が発起側です。皆さん、引き続き頑張りましょう。この調子でいけば今日はトップに立てるかもしれません…」
午後、イリスが教壇で生徒たちを鼓舞していた。
「風祭夏恋さんはいますか?」
低い女の声がイリスを遮り、運動着を着た黒髪の女生徒が入ってきた。
「朝倉翔子さん…風祭さんに何の用でしょうか」
「発起側として、風祭夏恋と対決したい」
夏恋が立ち上がった。
「いいだろう。今すぐ行くぞ、体術会場だ」
「望むところだ」
会場へ向かう道すがら、翔子が先に口を開いた。
「火曜日に君はE組の猫宮夜と対決して、一発で彼女を瀕死に追いやったそうだな。それが私が君に挑戦した理由だ」
「猫宮さんの復讐か?」
「違う。彼女とは特に親交はない。ただ、猫宮夜は動きが速く、反応も鋭く、実力も悪くなかったと聞いている。その彼女を一発で重症に追いやるとは、君も相当な実力者だろう。私は強い者と戦うのが好きなんだ。この機会に君と対決しようと思った」
「まさか一昨日の話がもうここまで広まってるとは…」
「君の実力を見せてほしい」
翔子は立ち止まり、夏恋に一礼した。
「よろしくお願いします」
「第一ラウンド、準備――始め!」
翔子が先に仕掛け、右足で夏恋の脇腹を蹴った。夏恋は右にかわし、続けて右フックを翔子に向けて放った。
翔子は左手で防ぎ、右足で夏恋の鎖骨に下げ蹴りを打ち込むと同時に、左手で夏恋の手首を掴んだ。それにより夏恋は動きを封じられ、下げ蹴りを避けられず、鎖骨に激しい痛みが走った。
翔子は勢いに乗って、旋風脚を繰り出した。空中で360°体を回転させ、その回転力を乗せた一撃が夏恋の腹部に命中した。
夏恋は血を吐き、地面に倒れた。
翔子は倒れた夏恋を押さえ込んだ。
「10、9、8…3、2、1、第一ラウンド、朝倉翔子の勝ち」
翔子は夏恋を押さえる手を離し、二歩後退した。
「本気を出してくれ、風祭さん」
夏恋は口元の血を拭い、立ち上がった。
「第二ラウンド、準備――始め」
今度は夏恋が先に仕掛け、左フックで翔子の脇腹を打ち、続けてアッパーカットで翔子の顎を狙った。
しかし今回は翔子に両手で防がれ、押し返された。
翔子は跳び上がって双飛を放ち、夏恋の胸と首に命中させた。さらに後ろ蹴りを夏恋の胴体に打ち込み、空中で540°回転して着地した。
この連続攻撃を受けた夏恋は体勢を崩しかけたが、痛みに耐えながら倒れるまいと踏ん張った。
「なぜ本気を出さないんだ!」
翔子が夏恋に向かって叫んだ。
「もう全力を出してる!」
翔子はさらに突進し、バック宙の勢いを乗せて片足旋風脚を放ち、夏恋を再び蹴り倒した。
「…4、3、2、1、第二ラウンド、朝倉翔子の勝ち」
「失望したよ」
その一言を残して、翔子は一人で立ち去った。
四日目、B組は21勝9敗、積分63点で2位だった。
五日目はB、D、F、H組が発起側。
B組は16勝14敗、積分79点で4位だった。
しかし注目すべきは、桃井音羽という生徒がまだ一度も勝っていなかったことだ。五日間一度も勝てず、六日目も同様なら退学となる。
六日目、最終日、土曜日。
「桃井さん、何か得意なものはありますか?一緒に考えましょう」
イリスと瞬が桃井音羽の机のそばに立っていた。
「私…私、体術は全然得意じゃないし、魔法の才能もないの。この二つになったら勝ち目がない…唯一得意なのは魔法生物学と薬剤学だけど…」
「でも筆記はランダム科目ですよね」
「そうなの。他の理論科目はどれも壊滅的で、もしそれが当たったら…」
「あいつは構うな。足手まといが一人減ったところで構わない」
白夜が突然現れた。
(ダメだ。どんな理由であれ、クラスメイトを退学させるわけにはいかない。仲間を諦めるわけにはいかない)
「それなら自分で考えろ。時には諦めるのも賢い選択だ」
「桃井さん、心配しないでください。私と瞬が何とかしますから」
「でも、もうどうしようもないじゃないですか…私はもう退学を受け入れる準備ができてます」
「もし筆記対決を選んだら、賭けの要素が大きすぎて制御できない。対決相手が選べればいいんだけど…」
「でも誰がわざわざ奨学金のチャンスを捨てるんですか…」
「そうですね、誰がそんなチャンスを捨てるんでしょう…あ、待って、今日はC組が発起側ですよね」
「そうですけど…」
「いい方法がある。C組なら助けてくれる人がいるはずだ」
瞬はC組の教室の前に来て、真白澪を呼び出した。
「日記を取り戻してから、しばらく会ってなかったね。高橋くん、何か用かな?」
澪は少し恥ずかしそうに瞬を見つめた。
「頼みがあって来たんだ…」
「いいよ。あんなに大きな助けをもらったんだから、私もできる限り助けるよ」
澪は瞬に近づき、両手を握りしめて真剣な表情を見せた。
「今、お前のポイントはいくつだ?」
「600点」
「じゃあ、単刀直入に言う。俺たちのクラスの桃井音羽と対決してほしい。対決の時は手加減して、彼女に勝たせてやってほしい。彼女はもう5連敗で、このままじゃ退学になってしまう。俺はクラスメイトが退学になるのを許したくないから、頼みに来た」
(こういうのはあまり褒められたことではないかもしれないが、対決のルールには競技内容の制限と禁止事項しかなく、生徒同士が結託して手加減することを禁じるルールはない。だからルール上は許されているはずだ)
「いいよ」
「まさかこんなに快く承諾してくれるとは…」
「言ったでしょ、できる限り助けるって。借りを返せずにいるのは気持ち悪いからね。でも、ちょっとしたお願いがあるんだけど…放課後に君の部屋に遊びに行ってもいいかな?」
「もちろんいいよ」
「じゃあ、そういうことで」
澪は振り返って走り去った。
瞬が気づかなかったのは、澪の顔が真っ赤になっていたことだ。だから彼女は急いで走り去ったのだ。
(これで対決の件は無事に終わるだろう)
土曜日の夕方、学校講堂内。
「はははははははは!まずは、6日間の対決を無事にやり遂げた諸君を称えよう。そして、良い知らせがある。今回、全学年で退学者はゼロだった!」
会場は歓声と拍手に包まれた。
「本校で新入生対決を開催して以来、初めての快挙だ。そこで今回の奨学金は全て増額する。個人ポイント100ポイントを1000元として換算する」
会場は再び歓声に包まれた。
※注:この世界の通貨の1000元は、現実の約147.46ドルに相当する。
(ということは俺は8000元換算できるってことか。たくさんゲームと漫画が買えるな)
瞬も興奮していた。
「お前のその貧乏くさい態度、見てられないな。俺はこんな虚無的なものに金を使ったりしないぞ」
白夜がツッコミを入れた。
(うるさいな!俺の趣味はこれだけなんだ。これ以外に何に使えって言うんだ?)
「皆さん、日曜日はしっかり休んでください。来週からは通常授業に戻ります。忘れずに中間試験もありますよ。しっかり準備してください!はははははははは!」
夜、いつものように静かなキャンパスではなかった。多くの生徒たちがグループでお祝いし、寮で集まって飲み食いしていた。イリスも瞬をパーティーに誘いたかったが、瞬は賑やかな場所は苦手だと断った。
澪は男子寮に近づき、騒がしい廊下を通り抜けて115号室の前に立った。そこは瞬の部屋だ。
彼女はそっとドアをノックした。
「私だよ、約束を果たしに来た」
瞬がドアを開け、左右を見渡して誰も気づいていないことを確認すると、急いで澪を部屋に引き入れた。
「誰も気づかなくてよかった。夜遅くに女生徒が男子寮に来るなんて、誤解されかねないからな」
「ごめんね」
澪の顔は赤く、彼女は座った。
瞬は冷蔵庫から2本の飲み物を取り出し、一本を澪に差し出した。
「ところで、なんで俺の部屋に来たいって言ったんだ?」
「ただ君と話したかっただけ。話を聞いてもらえる人が欲しかったんだ」
「そうか。でもあの件の後、あの3人の女生徒はどうなった?」
「もう私のことを困らせなくなったよ。君のおかげだ」
澪は飲み物を開けて口をつけた。
「まあな、困ってる女の子を助けるのが俺の役目だ」
「女の子の前でかっこつけるのはやめてくれないか」
(お前は黙っててくれないか。いつも俺をけなすな)
「へへ、君って正義感が強いんだね。私の印象だと、君はとても頼りになる人だよ。もし君がいなかったら、私のことは全校に広まってたかもしれない…」
澪はテーブルにうつ伏せになった。
「私がお母さんを殺した後、まだ法的責任を問われる年齢じゃなかったから、少年院にしばらく入ってただけなんだ。それ以来、自分を責めて、必死に勉強して、ようやくグリンフィットに合格できた」
「ずっと一人で暮らしてきたんだな」
「うん。おじいちゃんとおばあちゃんが毎月生活費を送ってくれてるけど、10歳を過ぎてからはほとんど会ってなくて、今は連絡もほとんどない。それから、学校でもあんまり人と話さなくなった。今でもクラスに友達はほとんどいない。君だけだよ、友達なのは。そうだよね?」
「もちろん、ずっと友達だ。それに、今日の協力にも感謝してる」
部屋の明かりが瞬の顔を照らし、その端正な顔立ちに澪は無意識に長く見入ってしまった。
澪は顔を上げ、背筋を伸ばした。
「今日はここまでにするね。これ以上遅くなると良くないから。また話したくなったら、君のところに来てもいい?」
「いつでも歓迎するよ」
澪は部屋のドアのところまで歩き、ドアを開けて振り返り、瞬に向かってウインクしてから去っていった。
「なあ、あの娘、お前のことが好きなんじゃないか?」
白夜が突然瞬の前に現れた。
「変なこと言うなよ」
「最近お前、モテモテじゃないか。周りは女の子ばかりだぞ」
最終クラス積分:
B:98
H:95
F:92
A:90
C:88
D:87
G:86
E:84




