第9話 月例試験の後の挑戦
「月例試験の成績表はもう全員に配布した。自分の点数をしっかり見ておけ」
佐藤先生が教壇に立っていた。
「おい、お前の成績表見せろ」
夏恋が瞬の成績表をひったくった。
「基礎魔法学70、魔法陣学70、魔法生物学70、魔法史70……なんで全部70点なんだよ?」
「偶然、偶然だって。お前のを見せてくれたんだから、俺にも見せろよ」
「わ……私は別に何も見せるものなんてないよ」
夏恋が自分の成績表を腕で隠した。
新入生対決が終わってからまた三週間が経ち、月例試験は予定通りやってきた。問題の難易度は想像していたほどではなく、ほとんどの生徒が自分なりの点数を取ることができた。
ここ数日は平凡な学園生活が続き、特に変わったことも起こらなかった。その間に澪もまた瞬を二度訪ね、クラスでの出来事について話をした。
「皆さん、月例試験が終わったと思っているのか……いや、まだ終わってはいない。これから皆さんは『試練の迷宮』という特殊試験に挑戦してもらう。クラス単位で、迷宮内のランダムな位置に出現する。クラスが攻略に成功した順位と人数に応じてクラス積分が与えられる。私が提供できる情報はここまでだ。準備を整えろ。今日の午後から試験が始まる。全員が迷宮から退出するまで試験は終了しない」
「なんだよ、やっと試験が終わったと思ったのに!」
「迷宮って危ないんじゃないの?どうしようどうしよう」
生徒たちは佐藤先生の言葉に騒然となった。
「おい、この特殊試験どうするんだよ……」
夏恋が瞬のそばに寄った。
「これが学校からの二つ目の試練ってところだろう。でも、迷宮に入ってみないことには解決策は見つからないだろうな」
ツタンカーメンよ、ツタンカーメンよ。我が両の目を失くしたなら、いかにして聖堂へと続く道を歩めようか。
青い光が徐々に消えていく。B組の面々が再び目を開けた時、彼らはすでに一片の森林の中に立っていた。
「ここが迷宮の中なのか……」
イリスが周囲を見渡した。
「皆さん、しっかりついてきてください。絶対にはぐれないように」
イリスは先頭に立ち、皆を連れて森の奥へと進んでいった。
瞬は森の様子を観察し、夏恋はその後ろにぴったりとついていた。
(木や他の植物は普通だ。特別な魔法植物も見当たらない。でも、これだけ広い森なのに、なぜ一匹の動物もいないんだ?虫一匹すら見かけないぞ)
しばらく進むと、一行は広場のような場所にたどり着いた。時刻は夕方に近づいていた。
「時間も遅くなってきたし、ここでいったん野営にしよう。ひとまず休んで、明日また探索を続けよう」
皆はイリスの指示に従い、テントを張り、焚き火を起こした。学校が一人分のキャンプ装備を支給していたおかげで、彼らは寝る場所に困ることはなかった。
「瞬、今の状況をどう思う?」
イリスがテントを張っている瞬のところへ歩み寄った。
「歩いているときに気づいたんだが、この森は表面上は普通に見えるけど、動物がまったくいない」
「確かに、不気味なほど静かだ……」
「午後の間に俺たちは約二時間歩いてこの広場に着いた。おそらくこの森は想像以上に広い。あるいは……これ自体が迷宮の一部なのかもしれない」
瞬はペグを一本ずつ地面に打ち込んでいった。
「でも、もし森も迷宮の一部だとしたら、出口の方角はどうやって見つけるの?」
「法則だ」
瞬が手を止めた。
「未知のシステムの中にいるなら、法則を見つけることが何より大事だ。重要な手がかりはいつも深い水の底に沈んでいるものだ」
「うん、わかった」
瞬は最後のペグを地面に打ち込んだ。
(はあ、やっと終わった)
「お前の言う“法則”について、何か見つけたのか?」
白夜が張り終えたばかりのテントに寄りかかりながら尋ねた。
(まだだ。でも、その方向で考えているところだ)
「実はな、俺はもういくつか気づいてることがある。でもまだ教えられない。お前自身で見つけてほしいんだ」
(何て言えばいいんだろう、さすがは最悪の魔女ってところか?それに、いつからお前は先生みたいな態度になったんだ?)
「厳密に言えば俺もお前の先生の一人だ。毎晩お前に魔法の練習を教えてやってるんだぞ」
日が暮れ、生徒たちは次々とテントを張り終えた。
焚き火を囲んで、生徒たちは思い思いに話し込んでいる。
「おい、この圧縮ビスケット、まずいな」
夏恋が苦労しながら圧縮ビスケットをかじっていた。
「食べられるだけありがたいと思えよ。明日からは食料がなくなるんだ。学校がこれ一枚だけしか支給しなかったんだから」
「もし足りなかったら、私のを食べていいよ。私はちょっと食べたらお腹いっぱいになるからね」
そう言ったのは長月美和子だった。緑色の髪の少女で、黄色い瞳は時々閉じられ、開かれている。彼女はいつもゆっくりとした口調で話し、何気なく行動しているように見えて、どの作業も非常に細やかで完璧に仕上げる。
「この森に食べ物があるかどうかはわからないけど……水は魔法で何とかなりそうだな」
イリスが水筒を弄りながら言った。
「道中でいくつかベリーを見かけたよ。食料の足しにはなるかもしれない」
「じゃあ、明日数人で摘みに行こう」
朝、陽の光がテントに降り注ぎ、露の玉が静かに滑り落ちる。生徒たちは次第に目を覚まし、テントから出てきた。
瞬はテントの入り口に立ち、伸びをした。
「昨夜はよく眠れたか?」
イリスが尋ねた。
「ああ、この森の夜はとても静かだ」
「もう十数人に食料を探しに行ってもらったよ」
「俺たちも探索に出るべきだと思う。この森は広すぎる。手当たり次第に進んでも出口にはたどり着けない」
「うん、じゃあ先鋒隊を組もう。風祭さんも呼んで、私は長月さんも連れて行く」
「高橋くん!」
ややぽっちゃりした眼鏡の男子が駆け寄ってきた。
「伊藤さん、どうした?」
伊藤之介——瞬が『OurGirls2』を貸して以来、二人は友人になった。よくゲームやアニメの話をしており、これが二人の共通の趣味だった。
「もし何か行動を起こすなら、ぜひ俺も連れて行ってほしい!俺は生物学に詳しいから、役に立てると思うんだ」
「いいぞ。手伝ってくれるなら人数は多いほうがいい」
ツタンカーメンよ、ツタンカーメンよ。偽りの中で進むとき、いかにして前路が真実と信じられようか。
瞬、イリス、夏恋、美和子、之介の五人は森の中へと踏み入り、探索を始めた。
林の中の小道に沿って、雑草の中を縫うように進み、時折現れる小川を越えていく。
瞬は歩きながら、道端の木に印を付けていった。
「こっちにオレンジ色の小さな実がたくさんあるよ」
夏恋が一つ摘んでじっくりと観察した。
「見せてみろ……これはタマサンゴだ。毒があるから食べられない」
之介が注意を促した。
「後で戻って、他の人たちが摘んだ実が安全かどうか確認しないと」
数人がさらに進むと、やがて目の前に石碑が現れた。
石碑には苔がびっしりと生えて青緑色を帯びており、表面には何かの文字と奇妙な記号が刻まれていた。
「これは何だ?」
瞬は石碑の前で立ち止まり、じっと見つめた。
「この文字は……古代の魔族語だ」
イリスが記憶を頼りに言った。
「触ってみたらどうなる?」
夏恋が前に出て、石碑に手を置いた。
「待って——!」
しかし時すでに遅し。夏恋の手が石碑に触れた瞬間、石碑は青い光を放ち、周囲からざわめきが聞こえ始めた。
「木……木が動いてる!」
そう、周囲の木々だけではない。広範囲の木々が素早く移動し、根は土をものともせずに再配置されていった。
しばらくして、木々は止まり、静けさが戻った。
瞬が周囲を観察する。
「印を付けた木が……すべて消えている」
元来た道は今や密林に変わっていた。
「来た道が消えた……今度はこの道がどこに続いているのかわからない」
「どうしよう、戻るべき?それともこのまま進む?」
イリスが緊張した面持ちで言った。
「このまま進もう。高いところに登って炊事の煙が見えれば、戻る方向はわかるはずだ」
一行は新たに現れた小道を進み続けた。
さらに十数分歩くと、森の静けさが破られた。遠くから轟音が響いてきた。
「警戒しろ。前方から何かがこっちに向かってきている」
瞬が魔法棒を抜き、いつでも魔法を使えるように構えた。
やがて前方に人影が現れた。爆裂魔法を後ろに放ちながら、必死に前へと走っている。
人影は枝や葉が散らばる小道を器用に縫って進んでいた。
近づくにつれて、その正体が灰髪の猫耳と猫尾を持つ少女だとわかった。
その人物こそ、猫宮夜だった。
(猫宮夜だ。何かに追われているようだ)
「皆気をつけろ!後ろには双翅四眼黒毒狼が三匹いる。噛まれると傷が癒えない!」
伊藤之介が警告した。
(この森には魔獣がいるのか。どこから現れたのかはわからないけど、この森が安全ではないことは確かだ)
全力で走る猫宮夜もまた、数人の存在に気づいた。
「あなたたち、逃げて!」
瞬が一歩前に出て、魔法棒を持った右手を掲げた。
「氷壁!」
一瞬にして、猫宮夜の後方の地面に巨大な氷の壁が現れ、追いかけてくる魔獣の行く手を遮った。
猫宮夜はゆっくりと足を止め、瞬の前に立ち、荒い息を吐いた。
「あ……ありがとう」
「大したことじゃない」
「気をつけて!黒毒狼が回り込んできた!」
イリスが氷の矢を次々と放ち、氷壁の両側から回り込み、森の中から奇襲をかけようとする一匹の黒毒狼を攻撃した。
しかし、自分が発見されたことを悟った黒毒狼は、そのまま突進してきた。イリスの氷の矢は生成速度が遅く、素早く動く黒毒狼に命中させるのは難しかった。
「私がやる!」
美和子が雷系魔法を駆使して稲妻の鞭を具現化し、黒毒狼に叩きつけた。鞭が魔獣の体に当たると、電流が全身を走り、魔獣はその場に立ち止まらざるを得なくなった。
その頃、もう一方の二匹の黒毒狼も森の中から飛び出してきた。
「こっちは俺がやる——氷結陣!」
二匹の黒毒狼の足元に青い魔法陣が生成された。
これは、白夜が無人島で教えた魔法陣の構築方法と、授業で新たに学んだ魔法陣学の知識を組み合わせて、瞬が作り出した技だった。
氷が地面から生成され、黒毒狼の足に広がり、やがて全身にまで達し、魔獣は動けなくなった。
一方、美和子の方では、既に黒毒狼が電撃で形作られたロープに縛られ、気を失っていた。
「助けてくれてありがとう。この魔獣には爆裂魔法を何度も当てたんだけど、ただ表皮が焦げるだけで、すぐに傷が治っちゃってね。あなたたちがいなかったら、どう対処すればいいかわからなかったよ」
「黒毒狼は体が非常に硬い。体内の毒素が傷を素早く癒す効果もある。拘束系の魔法を使いこなせないと、一人で戦うのは確かに難しい」
「どうやらこの小太りのやつは詳しいみたいだな。それに、高橋くんは魔法がかなり得意なんだね。この前の対決は本当にごめん」
「まさか俺の名前を覚えてくれていたなんて。あの時の対決はお恥ずかしい限りだ……ところで、この魔獣たちにはどこで出会ったんだ?」
猫宮夜が耳を撫でながら言った。
「クラスメイトと一緒に森を歩いてたんだけど、周りの木が急に動き出してね。木が止まった時には、一緒にいた子たちはもういなくなってたんだ。その時、前方に三匹の魔獣が現れて、逃げながら攻撃するしかなかったんだ」
(どうやら俺たちが触った石碑の影響が彼女にも及んだようだ。でも魔獣が突然現れたってことは……石碑がランダムに魔獣を召喚することもあるのか?)
「じゃあ、E組の皆はどこにいるんだ?」
「クラスのほとんどは広場に野営してるよ。私と一部の子たちが森の中を探索してたんだ」
(どうやらE組も俺たちと同じ状況のようだ)
猫宮夜は周囲のB組の面々を見渡し、最後の方に立っている夏恋を見つけた。
「えっ!?なんであの人がここにいるの!」
猫宮夜は夏恋を指さし、恐怖のあまり瞬の後ろに隠れた。尻尾の毛は逆立っていた。
「こ……この女、すごく怖いんだから!」
あの時、夏恋に一撃でやられかけたことを思い出すだけで、猫宮夜は震えが止まらなかった。死の寸前まで行った感覚は、もう二度と味




