第2話基礎魔法学
「登校日に皆さんにお会いしましたね。私は皆さんの担任であり、基礎魔法学の教師でもある、佐藤隆一です。今日は始業式ですが、この最初の授業が皆さんにとって初めての基礎魔法学の授業でもあります」
「わあ、佐藤先生かっこいい!」
「まさに理想の男性だわ」
「佐藤先生が担任で本当に良かった」
(この女子ども、イケメン見るとすぐに目がハートになるな)
「あの子たちはまだ経験が足りなすぎるわね。私はそんな外見に惑わされたりしないから」
白夜が窓辺に座りながら、つぶやいた。
(まさか風祭さんが俺の隣の席になるとはな。偶然すぎるだろ)
瞬が隣の風祭夏恋を見ると、ちょうど夏恋も瞬を見ていた。二人の目が合った。
「ねえ、なに見てるの?」
夏恋の頬が少し赤くなった。
「いや、ちょっと時計を見てただけだよ」
「バカバカ!私を見ないで!」
夏恋は顔をそらし、もう瞬を無視した。
(はあ……失礼な奴だな。そういえば、俺が女の子とこんなに話したのは久しぶりだな)
「おや?どうやら今まで女の子と話す機会なんてなかったみたいだな、ははは」
(今までは男子とすらほとんど話したことがなかった。いわゆる透明人間ってやつだ)
「基礎魔法学では、まず元素魔法から学んでいきます。ご存知の通り、元素魔法の主要元素は、金属・自然・水・火・電・光・氷の7つの魔法です。これらは主系元素魔法と呼ばれ、まずはこれを優先して学びます。そして今学期は、風や闇などの傍系元素魔法もいくつか学んでいく予定です」
瞬は机に突っ伏して窓の外を眺めていた。
(座学は本当に退屈だな。早くゲームがしたいよ)
「もう退屈になったのか?」
(そうだよ、つまらなすぎる。はあ……俺の二次元の嫁たちが待ってるのに)
「ふん、オタクめ」
白夜が口をとがらせた。
佐藤先生は、居眠りしそうな生徒たちを見て、仕方なくため息をついた。
「お前たち、しっかりしろ。しっかり聞け。1ヶ月後に中間試験がある。これはかなり重要な試験だ。校長が笑っているからといって、グリンフィットが甘いと思ったら大間違いだ。お前たちは各学校の優秀な生徒で、魔法の才能がある者ばかりだ。最後に言っておくが、最初の中間試験はお前たちの未来、クラスの未来を左右する重要なものだ」
「え?試験?やめてよ!」
「そうそう、なんでこんなにすぐ試験なの」
「ここには試験なんて堅苦しいものはないと思ってたのに……」
生徒たちは一斉に嘆き悲しんだ。
「続けるぞ。しっかり授業を聞くかどうかは、自分でよく考えろ。主系元素魔法は火系から始める。火系魔法は比較的習得しやすい。皆さんは中学ですでに火系の初級魔法は学んでいるはずだ。そしてここに来ている皆さんは優秀な子たちばかりだから、簡単な中級火系魔法、例えば火系化形魔法なども学んだことがあるだろう。そこで、今回の新しい授業では、新しい中級魔法——火柱術を学ぶ。皆さんが既に習得している火球術に比べて、威力がはるかに強く、魔力の消費も大きい持続放出型の魔法だ」
(火柱術?しかも持続放出型か。確かに今までより難易度が一段上がってるな)
「こんなゴミ魔法、わざわざ学ぶ必要あるのか?瞬、ここで学ぶことは簡単すぎる。夜に俺がもっと面白いものを教えてやろう」
佐藤先生が時計を確認した。
「よし、座学はここまでだ。これから実技練習のために訓練場へ連れて行く」
(やっと実技か)
生徒たちが次々と立ち上がり、佐藤先生について訓練場へ向かった。
「火柱術の放出には、まず火の渦を想像する必要がある。これは火球の想像方法と似ている。そしてその火の渦を回転させ、回転しながら火を中央の一点に集める。さらに魔力を注ぎ続け、火の渦と火の放出を同時に維持しながら、火柱として打ち出す。もちろん、これが難しいところだ。私が手本を見せよう」
佐藤先生が手を差し伸べると、前方に一団の炎が現れた。炎が回転を始め、速度がどんどん上がっていく。「ドン」という音とともに、渦の中心から火柱が放たれ、鉄製の標的に命中した。持続的な炎の衝撃で、標的は徐々に溶けていった。
「佐藤先生すごい!魔法棒なしでこんなに簡単に魔法を使えるなんて」
「こんな感じだ。皆さんも魔法棒を持って試してみてください。最初の失敗は当然のことです。大胆に挑戦し、想像の感覚を体験することが大切です。自由練習を始めましょう」
生徒たちはそれぞれ自分の魔法棒を取り出し、挑戦を始めた。
「わあ、ジュリアン君の魔法棒、すごく高級そう!」
「最新型のST-9000だって、価格は5万以上するらしいよ」
「へへ、これは父さんがくれたんだ。しかも特注品で、5万以上はするぞ。お前たちには買えない代物だ」
「あらあら、また古臭い展開だな。なんでどのクラスにも一人は金持ちがいるんだろうな。なあ、瞬」
「ジュリアン……おそらくどこかの財閥の御曹司だろうな」
「よしよし、皆よく見てろよ。この魔法棒がどれほど使えるか試してやる」
ジュリアンが魔法棒を手にし、魔法を行使し始めた。
すぐに炎の塊が現れ、渦へと変わり、火柱が持続的に放たれ、標的を溶かした。
「ジュリアン君、すごすぎる!一回で成功だよ」
「そうだね、本当にすごい」
白夜が軽蔑したように首を振った。
「そんな高価な道具に頼ったところで何がすごいんだ。瞬、お前がやってみせろ。俺の力を使えば、この場所を更地にするなんて朝飯前だ」
「無理だよ、目立ちたくないし……」
「あの、高橋くん……」
「どうした、風祭さん」
「私、何回試しても火の渦しかできなくて、火柱を放つことなんて全然できなくて……しかも持続なんて……」
「まあ、練習すれば上手くなるよ。先生も言ってたけど、最初は失敗が当たり前だって」
「でも、私ってやっぱりバカなのかな……何もできなくて」
夏恋がうつむいた。
「そんなことないよ」
「だって……前はこんなじゃなかったのに……」
白夜が夏恋を見た。
「瞬、あいつに触れてみろ」
(何する気だよ)
「そうすればあいつの魔力を感じ取れる。実力がわかる」
瞬が一歩前に出て、夏恋の肩に手を置いた。
「え……高橋くん……」
「過去がどうであれ、今がどうであれ、今の失敗は確かに君にとってはショックかもしれない。でも、そういう困難がなければ、すべて順調すぎて人は成長できないんだ」
夏恋の顔が一瞬で真っ赤になった。
「あ……あんたに何がわかるのよ!」
夏恋が瞬を押しのけた。
「いててて!なんでそんなに力強いんだよ」
(なんだかギャルゲーのヒロイン攻略みたいだな)
「ギャルゲーって何だ?感じ取れたぞ。この娘もかなりの魔力を持っている。ただ、コツがつかめていないだけだ」
(美少女ゲーム(ギャルゲー)とは、美しい二次元の美少女たちと交流できる電子ゲームのジャンルであり、その起源は……)
「止まれ、そんなの暗記するな。魔女はそんなの興味ないぞ。学校の授業でそんなに真面目にやったことないだろうに」
「ねえ、高橋くんもやってみてよ」
夏恋が瞬を引っ張って、標的に向かわせた。
「じゃあ、一応やってみるか」
(威力は抑えないとな。あまり派手にやるわけにはいかない)
瞬が魔法棒を掲げ、深呼吸した。
一団の炎が集まり始めた。その炎はひときわ明るく、どんどん大きく、どんどん大きく膨らんでいく……
「見てあれ!」
クラスメイトたちが光に引き寄せられ、続々と集まってきた。
炎の塊が回転を始め、渦を形成する。そのエネルギーの大きさは、周囲に風まで巻き起こすほどだった。渦の回転が加速するにつれ、渦の中心はますます明るくなり、やがて直視できないほどになった。
巨大な轟音の後、直径約1メートルの巨大な火柱が持続的に放たれ、標的を瞬時に溶かし、訓練場の外壁を貫通して爆発を引き起こした。
魔法が収束し、すべてが静まり返った後、訓練場には数十メートルにわたる大穴ができ、壁の半分が崩れ落ちていた。
「こ……これはすごすぎる!」
「佐藤先生のより威力が大きいよ」
「あ……あいつ誰だよ、こんなにすごいなんて」
「くそっ……俺の見せ場を奪いやがって」
(やばいやばい、制御しきれなかった。終わった……)
その時、佐藤先生が歩いてきた。
「うん、なかなかいいね。でも高橋くん、授業中はちゃんと聞いてたほうがいいよ」
佐藤の目が白く光り、細められた目には笑みが浮かんでいた。
なぜか瞬は背筋が凍るような感覚を覚えた。
一方、破壊された地面と壁はゆっくりと元の状態に戻っていった。
白夜が瞬の肩を叩いた。
「どうやらここの結界には修復機能があるようだ。よくやったな。でもお前、かなり威力を抑えたんだろ」
(よくやったも何も……これで終わりだ。クラスの全員に知られてしまった……それに他のクラスにも伝わるかもしれない——訓練場をぶっ壊した男子、高橋ってな)
「何が悪いんだ。名を轟かせれば、他人もお前の強さを知るようになる。世の誰もが俺、最悪の魔女を知っているように」
(いやだよ……俺の平凡な学園生活が……)
「まさかあんたがこんなにすごいなんて……」
夏恋が悔しそうに瞬の腕をつねった。
「いててて!そんなに暴力振るわなくてもいいだろ!」
「よくも私を暴力女って言えるわね!」
「お前のその態度、女子らしくないぞ」
「それはあんたにだけよ!それと、昼ご飯は一緒に食べるからね」
「なんで?なんで俺が暴力女とご飯を食べなきゃ……いてっ!」
瞬はまた一発殴られた。
「今日はあんただけしか友達ができなかったんだから……」
(まさかあいつ、俺のこと友達だと思ってるのか……俺はただのサンドバッグじゃないのか?)
「おやおや、女の子にランチに誘われたのかよ~」
(うるさい!俺のギャルゲー経験のおかげだ。俺を『攻略の神』と呼べ!)




