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アラフォー冒険者、今日も嫁のために頑張ります  作者: 榊紅丸
第二章 冒険者都市ルグリア編
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第99話 ミケとスキルブック

 十七階層へ続く階段を上る。


「今度は……。」


「遺跡?」


 目の前には、崩れかけた石造りの建物が並んでいた。


 壁。


 柱。


 石畳。


 かつて街だったようにも見える。


「塔の中に街か。」


「本当に何でもありだね。」


「ミャ。」


『おうちいっぱい』


「家みたいに見えるよな。」


 グレンが周囲を確認する。


 気配察知。


 魔力感知。


「いる。」


「どこ?」


「正面の建物の向こうに四体。」


 さらに右。


「右にも二体いるな。」


「囲まれない?」


「今のところ大丈夫。」


「じゃあ前から?」


「ああ。」


 三人は石畳の道を進む。


 崩れた建物の陰から、人型の魔物が姿を現した。


「またゴブリン?」


「いや。」


 身体は細い。


 黒い革鎧。


 手には短剣。


「鑑定。」


《ゴブリンアサシン》


 素早い動きと奇襲を得意とするゴブリン系上位種。


 短剣による連続攻撃を行い、毒を使用する個体も存在する。


「アサシン。」


「速そうだね。」


「ああ。毒にも注意。」


 四体。


 左右へ散る。


「来るぞ!」


 一体が一気に距離を詰める。


 速い。


 だが。


「クイック。」


 アイリの支援。


「ありがとう。」


 グレンがヴァリアントを抜く。


 短剣。


 一撃。


 バックラーで受け流す。


 二撃目。


 身体をずらしてかわす。


「速いけど。」


 踏み込む。


「こっちも速くなってる。」


 ヴァリアントを振るう。


 ザンッ!


「ギャッ!」


 一体が倒れる。


 別の一体。


 アイリへ。


「アイリ!」


「大丈夫!」


 グリムゾンティアを構える。


 ゴブリンアサシンが低い姿勢から短剣を突き出す。


「旋風防陣!」


 ブォン!


 グリムゾンティアが高速で旋回する。


 カン!


 短剣が弾かれる。


「ギッ!?」


「今度はこっち。」


 回転を止め、そのまま踏み込む。


「三段突き!」


 シュッ!


 シュッ!


 シュッ!


 三連続の突き。


「ギャッ!」


 ゴブリンアサシンが倒れる。


「……。」


 グレンが一瞬だけアイリを見る。


「何?」


「いや。」


「また心配?」


「思ったより普通に戦えてるなと思って。」


「ヴァルキリーだからね。」


「そうだった。」


「ミャ!」


『ミケも!』


「残り頼む。」


「ミャア!」


 雷撃。


 サンダーチェイン。


 バヂィィィン!


 残った二体へ雷が連鎖する。


「ギャアッ!」


 一体が倒れ、もう一体も大きく怯む。


「終わり。」


 グレンが距離を詰める。


「スマッシュウェーブ!」


 至近距離からの衝撃波。


 最後の一体も倒れた。


「右の二体は?」


「……来てる。」


 グレンが振り返る。


 路地。


 影。


「遅かったな。」


「こっちの戦闘が終わるの待ってた?」


「そこまで賢いか?」


 現れたのは二体のゴブリンアサシン。


「ミャ。」


『ミケやる』


「今度は土で止めてくれ。」


「ミャ!」


 アーススパイク。


 ゴゴゴゴッ!


 岩棘が一体の周囲から突き出し、動きを封じる。


 もう一体。


 グレンへ向かう。


「来い。」


 短剣。


 右。


 左。


 連続攻撃。


 グレンはバックラーとヴァリアントで受け流す。


「やっぱり。」


「何?」


「十六階より速い。」


 グレンが一歩下がる。


「階層が上がるたびに、ちゃんと強くなってるな。」


「でも大丈夫?」


「ああ。」


 ヴァリアント。


「武器を替えておいてよかった。」


 一気に踏み込む。


「連続斬り!」


 二撃。


 ゴブリンアサシンが倒れる。


 残りはミケが拘束した一体。


「アイリ。」


「うん。」


 グリムゾンティア。


 氷属性。


「薙ぎ払い!」


 ザシュッ!


 パキパキッ!


「ギャッ!?」


 斬られた胴体から氷が広がる。


 動きが止まったところへ。


「三段突き!」


 三連撃。


 倒れる。


「終わり。」


「ミャ!」


『かった!』


「ああ。」


 三人は周囲を警戒してから、素材を回収する。


「毒は使ってこなかったね。」


「今回はな。」


「上の階層だと使うのかな。」


「可能性はある。」


「毒耐性、まだ保管してる?」


「ああ。」


「必要なら使えるね。」


「そういうこと。」


 三人は遺跡の奥へ進む。


 崩れた建物。


 狭い路地。


 途中、罠らしい反応もあった。


「止まれ。」


「罠?」


「ああ。」


 グレンが地面を見る。


「ここ。」


 石畳の一部。


 罠解除。


 仕掛けを確認し、解除する。


「何だった?」


「踏むと横から矢が飛んでくる。」


「嫌だね。」


「毒矢だったらもっと嫌だな。」


「気をつけよう。」


「ミャ。」


『きをつける』


 さらに進む。


 やがて。


「……ん?」


「どうしたの?」


「隠し空間感知。」


「何かある?」


「ああ。」


 グレンが崩れかけた建物を見る。


「この中。」


 三人が建物へ入る。


 石壁。


 奥。


「ここだな。」


 グレンが壁を調べる。


 押せる石。


 動かす。


 ゴゴッ。


 壁の一部が横へずれた。


「隠し部屋。」


「久しぶりだね。」


「ミャ!」


『たから!』


「まだ宝箱があるとは限らない。」


 三人が中へ入る。


「……あった。」


「あるじゃん。」


「ミャ!」


『たから!』


 部屋の中央。


 小さな宝箱。


「罠を見る。」


 罠察知。


「反応なし。」


「開けよう。」


「ああ。」


 グレンが宝箱を開く。


「スキルブック。」


「何色?」


「青。」


 一冊。


 取り出す。


「鑑定。」


《魔力回復》


「魔力回復?」


「消費した魔力の回復を補助する常時発動型みたいだ。」


「マナリカバリーと似てる?」


「近いけど、こっちはもう少し単純な回復補助みたいだな。」


「じゃあ私?」


「……。」


 グレンがスキルブックを見る。


 そして。


 ミケを見る。


「ミャ?」


「グレン?」


「前に話しただろ。」


「……あ。」


 アイリも思い出す。


「ミケがスキルブック使えるかって話?」


「ああ。」


「試す?」


「このスキルなら危険は少なそうだ。」


 魔力回復。


 ミケは魔法を使う。


 もし習得できるなら、相性も悪くない。


「でも。」


 アイリが少し心配そうにミケを見る。


「本当に大丈夫かな。」


「無理なら使えないだけだと思う。」


「分からないけど。」


「嫌ならやめる。」


 グレンがミケを見る。


「ミケ。」


「ミャ?」


「これ、使ってみるか?」


「ミャ。」


『つかう』


「本当に?」


「ミャ!」


『つかう!』


「本人はやる気だな。」


「ミケ。」


 アイリが抱き上げる。


「変だったらすぐ教えてね。」


「ミャ。」


『わかった』


 グレンが青いスキルブックをミケの前へ出す。


「どうやって使うんだ?」


「人間なら触って使おうと思えばいいけど。」


「前足でいいのかな。」


「やってみるか。」


 床へ置く。


「ミケ。」


「ミャ。」


 ミケが前足を伸ばす。


 肉球がスキルブックへ触れた。


「……。」


「……。」


 何も起きない。


「やっぱり無理?」


「ミャ。」


『つかう』


「使うって思ってみろ。」


「ミャ!」


 次の瞬間。


 青いスキルブックが光った。


「え?」


「グレン!」


「ああ。」


 光がミケの身体を包む。


 そして、スキルブックが消える。


「……。」


「……。」


「ミャ?」


『できた?』


「ちょっと待て。」


 グレンが鑑定する。


《ミケ》


 種族:ラグナリンクス


 成長段階:幼体


 主人:アイリ


 属性:雷・土


 スキル。


《魔力回復》


「……。」


「どう?」


「覚えてる。」


「本当に!?」


「ああ。」


「ミャ?」


『おぼえた?』


 アイリがミケを抱き上げる。


「覚えたって!」


「ミャ!」


『できた!』


「魔物もスキルブック使えるのか。」


 グレンは少し驚いたまま、ミケを見る。


「これは。」


「どうしたの?」


「かなり大きいぞ。」


「ミケもスキルを増やせるから?」


「ああ。」


 今まで。


 スキルブックはグレンとアイリが使うものだと思っていた。


 だが。


 ミケにも使える。


「ミケに合うスキルが出たら。」


「覚えさせられるね。」


「ああ。」


「でも何でもはダメだよ。」


「分かってる。」


「ちゃんとミケに合うものだけ。」


「当然。」


「ミャ。」


『いっぱいおぼえる』


「いっぱいはダメ。」


「ミャー。」


『おぼえる』


「聞いてないな。」


「ふふっ。」


 グレンは改めてミケを見る。


 ラグナリンクス。


 ただでさえ珍しい魔獣。


 幼体の時点で中級魔法を使う。


 さらに。


 スキルブックまで使用できる。


「……。」


「グレン?」


「育て方によっては、とんでもないことになりそうだな。」


「もう結構とんでもないよ?」


「それもそうか。」


「ミャ!」


『つよくなる!』


「ああ。」


 グレンがミケの頭を撫でる。


「でも無理はするな。」


「ミャ。」


『わかった』


「そこはちゃんと覚えてくれ。」


 隠し部屋を出る。


 三人は再び十七階層の探索を始めた。


 ミケ。


 新しく覚えた《魔力回復》。


 すぐに効果を実感できるものではない。


 だが。


 これで一つ分かった。


 魔物も。


 スキルブックを使える。


 そして。


 ミケの成長には。


 まだまだ先がある。


 やがて、遺跡の奥に上へ続く階段が見えてきた。


「十八階層。」


「今日はどうする?」


「まだ余裕ある。」


「私も。」


「ミャ!」


『いく!』


 グレンが階段を見る。


「じゃあ、もう一階行くか。」


 三人は十八階層へ続く階段を上り始めた。

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