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アラフォー冒険者、今日も嫁のために頑張ります  作者: 榊紅丸
第二章 冒険者都市ルグリア編
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第96話 三種の神器

 エレナが家へ遊びに来た翌日。


 朝。


 グレンは作業部屋のテーブルに、グリムゾンティアを置いていた。


「本当に長くなるんだね。」


「ああ。」


 隣ではアイリが興味深そうに覗き込んでいる。


「今のままでも使えるけど、ヴァルキリーになったなら長柄武器適性を活かした方がいい。」


「長柄武器術も覚えたしね。」


「ああ。」


《三段突き》


《薙ぎ払い》


《旋風防陣》


 三つの基本スキル。


 今のグリムゾンティアでは、その力を十分に発揮できない。


「それに、アイリが前で戦うなら少しでも敵から距離を取れた方が安全だ。」


「やっぱりそこなんだ。」


「当たり前だろ。」


「ふふっ。」


「ミャ。」


『ながくする?』


「ああ。」


 グレンがミケを見る。


「薙刀にする。」


「ミャ?」


『なぎなた』


「ミケには分からないよね。」


「出来たら見せればいい。」


「ミャ!」


『みる!』


 グレンは作業を始める。


 まずはグリムゾンティアを分解する。


 鍔。


 柄。


 三つの魔石スロット。


 そして、内部へ組み込んだ魔銀糸の増幅回路。


「ここは全部残すの?」


「使えるものはな。」


 特に三つの魔石スロットは重要だった。


 現在装着されているのは風と氷。


 残る一つは空いている。


「火属性が欲しいね。」


「そのうち手に入るだろ。」


「火と風、一緒に使ってみたい。」


「俺も気になる。」


「爆発したりして。」


「……。」


「グレン?」


「安全な場所で試そう。」


「そうだね。」


 刀身にも手を加える。


 今までより少し長く、薙ぎ払いに適した形へ。


 さらに長い柄を作り、刀身と接続する。


 内部には魔銀糸。


 魔力回路を柄の中まで延ばす。


「結構長いね。」


「これくらいあった方が間合いを取れる。」


「重くならない?」


「ミスリルだからな。」


 軽い。


 それでいて丈夫。


 長柄武器には相性がいい。


 しばらくして。


「できた。」


 グレンが完成したグリムゾンティアを持ち上げる。


 長い柄。


 その先には、緩やかに反ったミスリルの刃。


 三つの魔石スロット。


 内部を通る魔銀糸の増幅回路。


 以前の面影を残しながらも、その姿は完全に長柄武器へ変わっていた。


「これが薙刀。」


「うん。」


 アイリが受け取る。


「……。」


「どう?」


「不思議。」


「何が?」


「初めて持つのに、なんとなく使い方が分かる。」


「長柄武器適性か。」


「たぶん。」


 アイリが軽く構え、ゆっくり振る。


「軽い。」


「問題なさそうだな。」


「うん。」


「庭で少し試すか。」


「壊さない?」


「魔法を使わなければ大丈夫だろ。」


「ミャ!」


『ミケも!』


「今日は見学。」


「ミャー。」


 三人は庭へ出る。


 アイリがグリムゾンティアを構える。


「まずはこれ。」


 頭の中に浮かぶ武技。


「三段突き!」


 シュッ!


 シュッ!


 シュッ!


 三連続の突き。


 穂先がほぼ同じ場所を正確に狙う。


「おお。」


「できた。」


「初めてとは思えないな。」


「スキルのおかげだね。」


「適性もあるだろ。」


「次。」


 アイリがグリムゾンティアを横へ構える。


「薙ぎ払い!」


 ブォン!


 広い範囲を一気に薙ぐ。


「これ、集団戦で使いやすそう。」


「ああ。」


「剣より範囲が広い。」


「その分、周りには気をつけろよ。」


「分かってる。」


 そして。


「最後。」


 アイリが柄を握り直す。


「旋風防陣!」


 グリムゾンティアが高速で旋回する。


 ブォン!


 ブォン!


 長い柄と刃が、アイリの正面に円を描く。


「わっ。」


 アイリ自身が驚く。


「思ったより速い。」


「これなら矢くらいなら弾けそうだな。」


「近づいてきた敵にも使えそう。」


「ああ。」


 攻撃を受け止めるのではなく、弾く。


 逸らす。


 そして、間合いを維持する。


「いいな。」


「グレン、これ気に入ったでしょ?」


「防御手段が増えたからな。」


「やっぱり。」


「何か問題あるか?」


「ないよ。」


 アイリが笑う。


「ありがと。」


「ああ。」


「ミャ!」


『ミケもやる!』


「何をやるんだ。」


「ミャ。」


 ミケが前足を振る。


『くるくる』


「無理だろ。」


「ふふっ。」


 アイリがグリムゾンティアを抱える。


「これなら次の塔も楽しみ。」


「最初は無理するなよ。」


「分かってるって。」


 三人は家へ戻る。


「さて。」


 グレンが作業部屋へ戻る。


「次だな。」


「エレナさんの?」


「ああ。」


 グレンが紙を見る。


 昨日、エレナから頼まれたもの。


 冷蔵庫。


 洗濯機。


 暖房。


「三つ。」


「三種の神器だね。」


「神器ってほどじゃないだろ。」


「私たちのいた世界なら普通だけど。」


 アイリが笑う。


「こっちでは神器みたいなものじゃない?」


「まあ、便利ではあるな。」


「すっごく便利。」


「ミャ。」


『ごはん』


「冷蔵庫はミケにも重要だな。」


「ミャ!」


『いる!』


「分かってるのか?」


「ミャ!」


『ごはん!』


「ご飯が入ってる箱だと思ってるね。」


「たぶんな。」


 まずは冷蔵庫。


 以前、自分たち用に作ったものと基本構造は同じ。


 冷気を発生させる魔石。


 魔力回路。


 冷気を逃がしにくい構造。


「これならそんなに時間かからない。」


「一回作ってるもんね。」


「ああ。」


 魔道具作成。


 加工。


 組み立て。


 調整。


 しばらくして。


「一つ。」


「早い。」


「次。」


 洗濯機。


 水。


 回転。


 排水。


 こちらも一度作ったもの。


 構造は頭に入っている。


「二つ。」


「残り暖房。」


「ああ。」


 室内の空気を暖めるための魔道具。


 火を直接使わないため、火事の危険も少ない。


 グレンが慣れた手つきで組み上げていく。


「よし。」


「できた?」


「ああ。」


 冷蔵庫。


 洗濯機。


 暖房。


 三つが完成した。


「三種の神器、完成。」


「だから神器じゃないって。」


「エレナさん、喜ぶだろうね。」


「昨日の様子ならな。」


「冷蔵庫見ても欲しい、洗濯機見ても欲しい、暖房見ても欲しいだったもんね。」


「全部だったな。」


「ふふっ。」


「……。」


 グレンが三つの魔道具を見る。


 そして。


「そういえば。」


「何?」


「エレナ、仕事中も寒いって言ってたな。」


「あ。」


 アイリも思い出す。


「ギルド用の暖房。」


「ああ。」


「作る?」


「頼まれたからな。」


 グレンが再び材料を取り出す。


「でも、ギルドに置いていいのかな?」


「エレナがギルドマスターに許可を取るって言ってただろ。」


「取れるかな?」


「さあな。」


「でも、一回使ったら欲しくなると思う。」


「エレナみたいに?」


「うん。」


「それはありそうだ。」


 グレンが二台目の暖房を作り始める。


「これで四つだね。」


「三種の神器なのに四つあるぞ。」


「三種類だからいいんじゃない?」


「そういう問題か?」


「ミャ。」


『よっつ』


「ほら、ミケも四つって言ってる。」


「ミャ!」


『よっつ!』


「分かったって。」


 しばらくして、二台目の暖房も完成する。


「よし。」


 グレンが出来上がった暖房を見る。


 自宅用。


 そして、ギルド用。


 二台。


「これで本当に終わり。」


「お疲れ様。」


「ミャ!」


『できた!』


「ああ。」


 グレンが四つの魔道具をストレージへ収納する。


「明日、ギルドに持っていくか。」


「うん。」


「エレナさん、絶対喜ぶよ。」


「……。」


 グレンが少し考える。


「どうしたの?」


「いや。」


「何?」


「最初は三つだけ出してみるか。」


「……。」


 アイリがグレンを見る。


「グレン。」


「何?」


「もしかして。」


「ああ。」


「ギルド用の暖房は隠す。」


「エレナさん、仕事中も寒いって言ってたよ?」


「だからだよ。」


「えー。」


「ちょっとだけ。」


「……。」


 アイリが困ったように笑う。


「エレナさん、残念そうにすると思うよ?」


「すぐ出すって。」


「本当に?」


「ああ。」


「ミャ。」


『だんぼうある』


「ミケ。」


「ミャ?」


「明日は黙ってろよ。」


「ミャ。」


『ある』


「聞いてないな。」


「ふふっ。」


「まあ、エレナにはミケの言葉分からないから大丈夫か。」


「私には分かるけどね。」


「……。」


 グレンがアイリを見る。


「アイリ。」


「何?」


「すぐバラすなよ。」


「えー。」


「ちょっとだけだから。」


「……分かった。」


「本当か?」


「たぶん。」


「信用できない。」


「だってエレナさんが本当に残念そうだったら、かわいそうじゃない。」


「だからすぐ出すって。」


「ふふっ。」


「ミャ!」


『だんぼう!』


「お前は明日静かにしてろ。」


「ミャー。」


 グレンが息を吐く。


 明日。


 冷蔵庫。


 洗濯機。


 自宅用の暖房。


 まずは三つ。


 そして、少しだけエレナをからかった後で、ギルド用の暖房も渡す。


「……楽しそうだね。」


「たまにはいいだろ。」


「エレナさん、怒っても知らないよ?」


「その時は暖房出せば機嫌直るだろ。」


「物で解決しようとしてる。」


「本人が一番欲しがってるものだからな。」


「それはそうだけど。」


「ミャ。」


『エレナ』


「ああ。」


「明日はエレナのところだ。」


「ミャ!」


『いく!』


 グレンは、少しだけ楽しそうに笑う。


 翌日。


 完成した三種の神器を持って、冒険者ギルドへ向かうことになった。

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