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アラフォー冒険者、今日も嫁のために頑張ります  作者: 榊紅丸
第二章 冒険者都市ルグリア編
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第90話 十三階層

 十二階層を攻略したグレンたちは、そのまま十三階層へ続く階段を上った。


「今度は草原?」


「みたいだな。」


 十三階層には、広い草原が広がっていた。


 ところどころに木や岩があるものの、十二階層のような岩場ではない。


「見通しはいいね。」


「ああ。隠れる場所も少ない。」


「ミャ。」


『いない?』


「今見る。」


 グレンが気配察知を使う。


「いる。前に四体。」


「近い?」


「まだ少し離れてる。」


 続けて魔力感知。


「こっちに気づいてるみたいだな。」


「じゃあ来る?」


「ああ。」


 草原の奥。


 四つの影がこちらへ向かってくる。


「狼?」


「みたいだな。」


 見た目は十一階層で戦った狼型の魔物と大きく変わらない。


 だが、少しだけ身体が大きい。


「鑑定。」


《グラスウルフ》


 草原に生息する狼型魔物。


 高い敏捷性を持ち、複数で獲物を襲う。


「硬そうには見えないね。」


「ああ。」


 グレンがミスリルソードを抜く。


「俺が二体。」


「じゃあ私が一体。」


「ミャ!」


『ミケも!』


「残り一体はミケな。」


「ミャ!」


『やる!』


 四体のグラスウルフが一気に距離を詰めてくる。


「来るぞ!」


 一体がグレンへ飛びかかる。


 横へかわし、すれ違いざまにミスリルソードを振るう。


 ザシュッ!


「ギャン!」


「……。」


 傷は入った。


 だが、グレンの表情が少し変わる。


「グレン?」


「いや。」


 二体目が横から迫る。


 グレンはバックラーで爪を受け流し、そのまま剣を振るう。


「連続斬り!」


 一撃。


 続けて二撃目。


「ギャウン!」


 グラスウルフが倒れる。


「やっぱり。」


 グレンがミスリルソードを見る。


 一方、アイリの前にも一体のグラスウルフが迫っていた。


「今度は風でいくね。」


「ああ。」


 アイリがグリムゾンティアへ魔力を流す。


 風属性魔石から魔銀糸の回路を通り、刀身へ風属性の魔力が流れていく。


 グラスウルフが飛びかかる。


 アイリは横へかわす。


「えいっ!」


 ザシュッ!


「ギャン!」


 グリムゾンティアが胴体を斬る。


 さらに傷口へ残った風属性の魔力が弾けた。


 シュッ!


「ギャウン!」


 グラスウルフが倒れる。


「……。」


 アイリが自分の武器を見る。


「やっぱり強くなってる。」


「かなりな。」


 残る一体。


「ミャ!」


 ミケが前へ出る。


「ミケ、やりすぎるなよ。」


「ミャ。」


『わかった』


 グラスウルフが走ってくる。


「ミャア!」


 サンダーチェイン。


 バヂィィィン!


 雷撃が直撃する。


「ギャン!」


 グラスウルフが倒れた。


「……一体だとチェインする必要ないんだけどな。」


「ミケはこれが得意なんじゃない?」


「ミャ!」


『とくい!』


「そうみたいだな。」


 アイリがミケを抱き上げる。


「よしよし。」


「ミャー。」


 グレンは最初に斬ったグラスウルフへ近づく。


 まだ生きている。


 立ち上がろうとしていた。


「グレン?」


「ちょっと確認する。」


 グレンがミスリルソードを構える。


「パワースラッシュ!」


 斬撃が胴体へ入る。


「ギャウン!」


 今度は倒れた。


「……。」


「どうしたの?」


「硬い。」


「この狼が?」


「ああ。」


 アイリも倒れたグラスウルフを見る。


「見た目は普通だけど。」


「俺もそう思った。」


 十二階層のロックスコーピオンやストーンリザードは、見るからに硬そうだった。


 だが、グラスウルフには硬い甲殻も石のような鱗もない。


「十一階層の狼より、明らかに剣の通りが悪い。」


「種類が違うからじゃなくて?」


「それもあるかもしれない。」


 グレンが周囲を見る。


「もう少し戦ってみる。」


「分かった。」


 三人は素材を回収し、先へ進む。


 しばらくして、再び魔物の気配を捉えた。


「今度は三体。」


「何がいる?」


「来る。」


 草むらから姿を現したのは、大型の猪型魔物だった。


「鑑定。」


《ラッシュボア》


 強靭な身体と高い突進力を持つ猪型魔物。


「これも普通に見えるね。」


「ああ。」


 硬い甲殻もない。


 特殊な鎧もない。


「俺がやる。」


「気をつけて。」


 ラッシュボアが地面を蹴る。


「ブオォォッ!」


「速いな。」


 グレンが横へかわす。


 すれ違う瞬間。


「パワースラッシュ!」


 ザシュッ!


「ブオッ!?」


 斬れる。


 だが。


「浅い。」


「やっぱり?」


「ああ。」


 ラッシュボアが方向を変える。


 二体目、三体目も続く。


「アイリ!」


「うん!」


「エアーカッター!」


 複数の風刃がラッシュボアへ飛ぶ。


 ザシュッ!


「ブオォッ!」


 一体が大きく体勢を崩す。


「ミケ!」


「ミャ!」


「足を止めてくれ!」


「ミャア!」


 アーススパイク。


 ゴゴゴゴッ!


 複数の岩棘が地面から突き出し、一体のラッシュボアを囲む。


「ブオッ!?」


「よし。」


 グレンが残った一体へ向かう。


 突進をかわす。


 今度は首。


「連続斬り!」


 一撃。


 二撃。


 同じ場所へ斬撃を重ねる。


「ブオォ……。」


 ラッシュボアが倒れる。


「やっぱり二撃いるか。」


 アイリもエアーカッターで体勢を崩した一体へ近づく。


 グリムゾンティアを構える。


「氷でいく。」


「頼む。」


 刀身に冷気が集まる。


 ラッシュボアが立ち上がる。


「えいっ!」


 ザシュッ!


 パキパキッ!


「ブオッ!?」


 斬られた前脚が凍りつく。


「止まった!」


「ああ。」


 グレンが一気に近づく。


「パワースラッシュ!」


 首へ一撃。


 ラッシュボアが倒れた。


 最後はミケが拘束している一体。


「ミケ、そのまま。」


「ミャ!」


『とめる!』


 グレンが近づき、連続斬りで仕留める。


 戦闘が終わる。


「……。」


 グレンがミスリルソードを見る。


「確定だな。」


「硬くなってる?」


「ああ。」


「見た目の問題じゃない。」


 グレンが倒れたラッシュボアを見る。


「階層が上がって、魔物そのものが強くなってる。」


「身体も?」


「たぶんな。」


 力。


 速度。


 耐久力。


 すべてが少しずつ上がっている。


「まだ戦える?」


「余裕はある。」


「剣も?」


「ああ。刃こぼれもない。」


「じゃあ進む?」


「……。」


 グレンが十三階層の奥を見る。


 まだ攻略できる。


 十四階層も、おそらく行ける。


 十五階層の階層主まで進むことも、不可能ではないかもしれない。


 だが。


「帰る。」


「うん。」


 アイリはすぐに頷いた。


「聞かないんだな。」


「グレンがそう言うなら、理由があるんでしょ?」


「まあな。」


 グレンがミスリルソードを鞘へ収める。


「今なら普通に倒せる。」


「うん。」


「だからこそ、一度帰る。」


「もっと強くなってから苦労する必要ないもんね。」


「ああ。」


 ストレージの中には、オリハルコンインゴットがある。


 これまでは、まだ必要ないと判断して使わなかった。


 だが、状況が変わった。


「グリムゾンティアは増幅回路でかなり強くなった。」


「うん。」


「ミケも首輪で魔法が強くなった。」


「ミャ!」


『つよい!』


「ああ。強い。」


「ミャー。」


 グレンが自分の腰を見る。


「今度は俺だな。」


「オリハルコン?」


「ああ。」


「剣にする?」


「そのつもり。」


 アイリが笑う。


「やっと使うんだ。」


「必要になったからな。」


「まだ困ってないけど?」


「困ってからじゃ遅い。」


 グレンが十三階層の奥を見る。


「俺が前で斬れなくなったら、その分アイリとミケが危険になる。」


「……うん。」


「無理して進む理由はない。」


「安全に進める準備ができるなら、先にやっておく。」


「グレンらしいね。」


「そうか?」


「うん。」


「ミャ。」


『かえる?』


「ああ。」


 グレンがミケの頭を撫でる。


「今日は帰る。」


「ミャ!」


『ごはん!』


「結局それだな。」


「ふふっ。」


 三人は来た道を戻る。


 十二階層。


 十一階層。


 そして十階層。


 転移装置へ到着する。


「次に来る時は。」


 アイリがグレンを見る。


「新しい剣?」


「ああ。」


 グレンはストレージの中にあるオリハルコンインゴットを思い浮かべる。


 ミスリルより希少で、強力な金属。


 これまで温存してきた素材。


「帰ったら作る。」


「楽しみだね。」


「俺もな。」


「ミャ!」


『つくる!』


「ミケは作らないぞ。」


「ミャ?」


『つくる』


「なんでだよ。」


「ふふっ。」


 転移装置が光る。


 三人の姿が塔から消えた。


 次の攻略へ向けて。


 今度はグレン自身の武器を強化するために。

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