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アラフォー冒険者、今日も嫁のために頑張ります  作者: 榊紅丸
第二章 冒険者都市ルグリア編
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88/100

第88話 十一階層

 翌朝。


 グレンたちは塔へ向かっていた。


「今日は十一階層からだね。」


「ああ。」


「ミャ!」


『つち!』


「覚えてたか。」


「昨日試せなかったもんね。」


「ミャ!」


『やる!』


「張り切りすぎるなよ。」


「ミャ?」


『だめ?』


「ダメじゃないけど。」


 アイリがミケを抱き直す。


「まだ子供なんだから、無理しちゃダメだよ。」


「ミャ。」


『わかった』


「魔法の威力は子供じゃないけどな。」


「それはそう。」


 三人は塔へ入る。


 入口には転移装置が設置されており、攻略済みの転移先として一階層、五階層、十階層が表示されている。


「十階層でいいね。」


「ああ。」


「ミャ!」


『いく!』


 グレンが転移装置へ触れる。


 淡い光が三人の身体を包み、次の瞬間には景色が変わっていた。


 十階層。


 すでに倒した階層主の部屋。


「これなら攻略が進んでも楽だね。」


「ああ。」


 三人はそのまま十一階層へ続く階段へ向かう。


「ここからだな。」


「うん。」


「ミャ。」


 三人は階段を上る。


 十一階層は、これまでとは少し雰囲気が変わっていた。


「森?」


「みたいだな。」


 石造りだった塔の内部とは思えないほど、木々や草、土が広がっている。


 頭上には高い天井があり、淡い光を放つ魔石が、まるで太陽のように階層全体を照らしていた。


「塔の中なのに。」


「ダンジョンだからな。」


「不思議。」


「今さらだろ。」


「それはそうだけど。」


 グレンが周囲を見る。


「気配察知。」


 複数の反応がある。


「いる。」


「どっち?」


「前。四……いや、五体。」


 さらに魔力感知を使う。


「魔力反応もある。」


「魔法を使う?」


「可能性はあるな。」


「ミャ。」


 ミケも前方を見る。


『いる』


「ミケも分かったって。」


「なら間違いない。」


 三人は慎重に進む。


 木々の間に、動く影が見えた。


「来る。」


 現れたのは、人間より少し小さな緑色の身体を持ち、弓を構えた魔物が五体。


「鑑定。」


 グレンが確認する。


「フォレストゴブリン。」


「ゴブリン?」


「ああ。普通のより強い。」


 フォレストゴブリン。


 森などに適応したゴブリンの上位種。


 弓を得意とし、風属性魔法を使用する個体も存在する。


「弓か。」


 五体とも、すでにこちらへ弓を向けている。


「アイリ。」


「うん。」


「身体強化。」


 光がグレンの身体を包む。


「クイック。」


 さらに身体が軽くなる。


「プロテクトオーラ。」


 淡い光が三人を包む。


「来る!」


 三本の矢が同時に放たれた。


 グレンが前へ出る。


 ミスリルバックラー。


 カン!


 一本を弾く。


 身体をずらして二本目をかわす。


 三本目がアイリへ向かう。


「アイリ!」


「大丈夫!」


 アイリもミスリルバックラーで矢を受け流す。


「ミャ!」


 ミケがアイリの腕から飛び降りた。


「ミケ?」


『やる!』


 グレンが少し考える。


 昨日試せなかった土属性。


「よし。ミケ、アーススパイク。」


「ミャ!」


 ミケの魔力が首輪へ流れる。


 グレンが魔力感知を使う。


 土属性魔石から魔銀糸の増幅回路へ魔力が流れていく。


「来るぞ。」


 次の瞬間。


「ミャア!」


 地面が揺れる。


 ゴゴゴゴゴ――!


「……え?」


 アイリが目を見開く。


 ドドドドドドドッ!


 大量の岩棘が地面から一斉に突き出した。


 一本や二本ではない。


 五体のフォレストゴブリンの周囲を囲み、逃げ道を塞ぐように岩棘が突き出していく。


「ギャッ!?」


「ギギッ!」


 完全に動きを封じた。


「……。」


「……。」


「ミャ!」


『できた!』


 グレンが大量の岩棘を見る。


「増えすぎだろ。」


「昨日、庭でやらなくてよかったね。」


「本当にな。」


 あんなものを庭で使われていたら、借家の庭が岩山になっていた。


「でも。」


 アイリがグリムゾンティアを抜く。


「ちょうどいいね。」


「ああ。次はアイリだ。」


「うん。」


 鍔にある風属性魔石。


 そこから魔銀糸の回路へ魔力を流す。


「まず風から。」


「エアーカッター!」


 魔力がグリムゾンティアへ流れる。


「……!」


 アイリ自身が、すぐに違いを感じた。


「すごい。」


 風が刀身へ集まり、そのまま放たれる。


 ヒュン!


「……。」


 グレンが目を見開く。


「速い。」


 これまでより明らかに速い。


 複数の風刃が、岩棘に拘束されたフォレストゴブリンへ襲いかかる。


 ザシュッ!


「ギャッ!」


「ギッ!」


 次々と切り裂かれる。


「威力も上がってる。」


「うん。」


 五体すべてが倒れた。


「……終わったな。」


「ミャ!」


『かった!』


「ミケがほとんど動けなくしたからね。」


「ミャー。」


 得意そうだ。


 グレンが周囲を見る。


 大量の岩棘が残っている。


「これ、どうするんだ?」


「そのうち消えるんじゃない?」


「ダンジョンだしな。」


「たぶん。」


「ミャ。」


『つよい?』


 アイリが笑う。


「すっごく強かったよ。」


「ミャ!」


『ミケつよい!』


「調子に乗るなよ。」


「グレン。」


「何?」


「褒めてあげて。」


「褒めてるよ。」


「今のどこが?」


「強いのは認めてる。」


「ミャ?」


 グレンがミケの頭を撫でる。


「よくやった。」


「ミャー。」


『もっとやる』


「それはほどほどで頼む。」


「ふふっ。」


 グレンはグリムゾンティアを見る。


「アイリ。」


「うん?」


「魔力消費は?」


「……。」


 アイリが確認する。


「そんなに変わってないと思う。」


「ミケと同じか。」


「効率が良くなってる?」


「たぶんな。」


 魔銀糸と属性魔石、そして増幅回路。


 魔力そのものを増やしているのではなく、魔法へ変換する時の無駄を減らしているのだろう。


「思った以上に使えるな。」


「魔銀糸?」


「ああ。」


「まだいっぱいある?」


「ある。」


「じゃあ防具にも使えるね。」


「そのつもり。」


 ライトアーマーの金属部分以外に魔銀糸を使えば、防御力をさらに高められる可能性がある。


「ただ、今すぐはいい。」


「困ってないから?」


「ああ。必要になった時に考える。」


「うん。」


 グレンが倒れたフォレストゴブリンを見る。


「素材を回収して進もう。」


「はーい。」


「ミャ!」


 三人は十一階層の探索を再開する。


 しばらく進むと、再びフォレストゴブリンと遭遇した。


 さらに、森に紛れるように大型の狼型魔物も現れる。


「来る!」


 二体が左右から迫る。


「アイリ!」


「うん!」


 アイリがエアーカッターを放ち、一体を牽制する。


 グレンはもう一体へ向かう。


「スマッシュウェーブ!」


 衝撃波が直撃し、狼が怯む。


 グレンが一気に距離を詰める。


「連続斬り!」


 二撃を叩き込み、狼を倒す。


「グレン!」


「分かってる!」


 反対側からアイリへ狼が迫る。


 だが、アイリは逃げない。


 グリムゾンティアを構える。


「……。」


 グレンが一瞬動きを止める。


「アイリ?」


「大丈夫。」


 狼が飛びかかる。


 アイリはクイックと身体強化を受けた身体で横へかわす。


 そして。


「えいっ!」


 グリムゾンティアを振るう。


 ザシュッ!


「ギャン!」


 傷は浅い。


 だが。


「……。」


「グレン。」


「ああ。」


 傷口に風属性の魔力が残っている。


 シュッ!


「ギャン!?」


 斬った直後、残った風属性の魔力が傷口をさらに切り裂いた。


「やっぱり。」


「刀身にも残ってる。」


 狼の動きが止まる。


「アイリ!」


「うん!」


 アイリがもう一度踏み込む。


 グリムゾンティアを突き出し、狼を仕留めた。


「……。」


 静かになる。


「倒せた。」


「大丈夫?」


「うん。」


「怪我は?」


「ないよ。」


「ならいい。」


 グレンがグリムゾンティアを見る。


「思った通りだ。」


「魔法だけじゃないね。」


「ああ。斬撃にも属性が乗る。」


「じゃあ氷なら?」


「凍る可能性がある。」


「試す?」


「次にちょうどいい敵がいたらな。」


「うん。」


 グレンは少しだけアイリを見る。


 以前なら、敵が接近すれば自分が前へ出る。


 それが当然だった。


 だが、今のアイリは違う。


 回復。


 支援。


 攻撃魔法。


 そして近接戦闘。


「……。」


「何?」


「いや。強くなったなと思って。」


「グレンのおかげだよ。」


「俺だけじゃない。」


「でも。」


 アイリがグリムゾンティアを見る。


「これも、スキルも、グレンが作ってくれたものいっぱいあるよ。」


「……そうだな。」


「だから。」


 アイリが笑う。


「これからもよろしくね。」


「ああ。任せろ。」


「ミャ!」


『ミケも!』


「もちろん。」


「ミケも一緒。」


「ミャー!」


 三人はさらに奥へ進む。


 十一階層の魔物は、十階層までより確実に強くなっている。


 だが、こちらも同じではない。


 やがて、階層の奥に上へ続く階段を見つけた。


「あった。」


「十二階層。」


「ああ。」


 グレンが階段を見る。


「今日はまだ行けるな。」


「うん。」


「ミャ!」


『いく!』


「じゃあ、次だ。」


 三人は十二階層へ続く階段を上り始めた。

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