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アラフォー冒険者、今日も嫁のために頑張ります  作者: 榊紅丸
第二章 冒険者都市ルグリア編
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第85話 十階層主

 十階層。


 巨大な扉の前。


「行くぞ。」


「うん。」


「ミャ!」


『ミケも!』


「分かった。」


 グレンが扉を押す。


 ゴゴゴゴゴ……。


 重い音を立てながら、巨大な扉が開いていく。


 その先には、広い石造りの空間が広がっていた。


 中央に、一体の魔物が立っている。


「……でかいな。」


「ゴーレム?」


「みたいだな。」


 人型だが、グレンの倍以上の高さがある。


 全身は黒い金属で覆われ、太い腕と巨大な脚を持っている。


 頭部には、二つの赤い光が浮かんでいた。


「鑑定。」


 グレンが確認する。


《アイアンゴーレム》


 鉄を主素材として作られたゴーレム。


 非常に高い物理防御力を持つ。


 動きは遅いが、その巨体から放たれる攻撃は強力。


「鉄か。」


「硬そう。」


「ああ。」


 グレンがミスリルソードを抜く。


「でも、やってみれば分かる。」


「うん。」


 アイリがグレンへ魔法をかける。


「身体強化。」


 力が身体に満ちる。


「クイック。」


 さらに速度が上がる。


「防御強化も。」


「ありがとう。」


「ミャ!」


『ミケも!』


「ミケは様子見。」


「ミャー。」


『できる』


「必要になったら頼む。」


「ミャ。」


『わかった』


 アイアンゴーレムの赤い目が光る。


 ズン。


 一歩。


 ズン。


 さらに一歩。


「遅いな。」


「でも。」


 アイリが巨大な腕を見る。


「当たったら痛そう。」


「間違いなく。」


 アイアンゴーレムが腕を振り上げる。


「来る。」


 次の瞬間。


 轟ッ!


 巨大な拳が振り下ろされた。


 グレンは横へ避ける。


 拳が石床へ叩きつけられた。


 ドゴォン!


「……。」


 床が砕ける。


「受けない方がいいな。」


「そうして。」


「分かってる。」


 グレンが一気に距離を詰める。


「パワースラッシュ!」


 剛力。


 身体強化。


 そこへ強力な剣技を重ねる。


 ガギィィィン!


「硬っ!」


 ミスリルソードがアイアンゴーレムの胴体を斬る。


 だが、傷は浅い。


「傷はついた。」


「でも浅いね。」


「ああ。」


 アイアンゴーレムが腕を横薙ぎに振るう。


「おっと。」


 グレンが後方へ跳ぶ。


 ブォン!


 巨大な腕が目の前を通過する。


「今度は私。」


 アイリがグリムゾンティアを向ける。


「アイスランス!」


 氷の槍が放たれる。


 ガァン!


 直撃した氷が砕ける。


「効いてない?」


「いや。」


 グレンが確認する。


「少しへこんでる。」


「でも決定打にはならないね。」


「ああ。」


 グレンがアイアンゴーレムを見る。


 全身が鉄。


 硬い。


 だが。


「人型なら関節がある。」


 膝。


 肘。


 首。


「そこを狙う。」


「分かった。」


 アイアンゴーレムが再び動く。


「グレン!」


「ああ!」


 振り下ろされる拳を避ける。


 グレンはそのまま脚へ回り込む。


「連続斬り!」


 一撃。


 続けて二撃目。


 膝関節へ斬撃を叩き込む。


 ガギン!


「さっきより通る。」


 関節部分は装甲が薄い。


「ならいける。」


 だが、アイアンゴーレムが脚を振るう。


「うわっ!」


 グレンが飛び退く。


 ギリギリで回避する。


「グレン!」


「大丈夫。」


「ミャ!」


『ミケやる!』


「……。」


 グレンがアイアンゴーレムを見る。


「じゃあ頼む。」


「ミャ!」


 アイリの腕からミケが飛び降りる。


 小さな身体が地面へ着地する。


「ミャア!」


 土属性の魔力がアイアンゴーレムの足元へ流れる。


 地面が隆起する。


 アーススパイク。


 ゴゴゴゴッ!


 複数の鋭い岩棘が、アイアンゴーレムの脚の周囲から突き出した。


 今回は身体を貫くためではない。


 岩棘で脚を囲み、動きを止める。


「いいぞ、ミケ!」


「ミャ!」


『とめた!』


 アイアンゴーレムが脚を動かそうとする。


 岩が軋み、少しずつ砕けていく。


「長くは持たない。」


「グレン!」


「ああ!」


 グレンが一気に走る。


 狙うのは、先ほど傷をつけた膝関節。


「パワースラッシュ!」


 剛力と身体強化を乗せた全力の一撃。


 ガギィィィン!


 金属が大きく歪む。


 アイアンゴーレムが体勢を崩した。


「倒れる!」


「離れろ!」


 ズズン!


 巨体が横倒しになる。


 ドォォォン!


「今!」


 グレンが倒れたアイアンゴーレムへ駆け寄る。


 狙うのは首。


 装甲の隙間。


「連続斬り!」


 一撃。


 ガギン!


 続けて二撃目。


 ガギィィン!


 首が切断される。


 ゴトン。


 頭部が床へ落ちた。


 赤い光が消える。


「……。」


 静かになった。


「倒した。」


「お疲れ様。」


「ミャ!」


『ミケも!』


「ああ。」


 グレンがミケを見る。


「助かった。」


「ミャー!」


『ミケつよい』


「強い強い。」


 アイリがミケを抱き上げる。


「よしよし。」


「ミャー。」


 グレンはミスリルソードを見る。


 刃に問題はない。


 欠けてもいない。


「剣、大丈夫?」


「ああ。」


「さすがミスリル。」


 だが、グレンは倒したアイアンゴーレムを見る。


「今回は関節を狙えば問題なかった。」


「うん。」


「でも、もっと硬い奴が出たら。」


「厳しい?」


「かもしれない。」


 ストレージの中には、オリハルコンインゴットがある。


「まだ作らない?」


「ああ。」


「今回は普通に倒せたからな。」


「必要になってから?」


「そのために取ってある。」


「分かった。」


 その時。


 アイアンゴーレムの身体が光へ変わり、そのまま消えていく。


 残ったのは、大きな魔石。


 そして。


「出た。」


「宝箱。」


 五階層と同じ階層主討伐の報酬。


 ただし、今回の宝箱は少し大きい。


「十階だからかな。」


「期待していい?」


「開けてみよう。」


「罠は?」


「今見る。」


 グレンが罠察知を使う。


 反応はない。


「大丈夫。」


 グレンが宝箱を開ける。


「……お。」


「何?」


「本。」


 中から一冊取り出す。


 紫色のスキルブック。


「紫。」


「直接出るんだ。」


「ああ。」


 さらに、青いスキルブックが二冊入っている。


「三冊も?」


「五階より豪華だな。」


「十階だから?」


「たぶん。」


「まず紫から見よう。」


「ああ。」


 グレンが鑑定する。


《魔力耐性》


「魔力耐性。」


「どんなスキル?」


「魔法によるダメージを軽減する。」


「いいね。」


「ああ。」


 この先、上へ進めば魔法を使う魔物も増えるだろう。


 前衛のグレンが攻撃を受ける可能性も高い。


「これは覚える。」


 グレンが紫のスキルブックを使用する。


 光となって身体へ吸収される。


《魔力耐性》


 習得。


「次。」


 青いスキルブックを一冊手に取る。


「鑑定。」


《裁縫》


「……。」


「グレン?」


「来た。」


「何が?」


「裁縫。」


「あ。」


 アイリも気づく。


「魔銀糸!」


「ああ。」


 八階層の隠し部屋で手に入れた希少素材。


 魔銀糸。


 ずっとストレージで保管していた。


「これで使える。」


「服作る?」


「いや。」


 グレンが首を振る。


「俺たちの鎧。」


「鎧?」


「金属で全部覆うわけにはいかないだろ?」


「ああ。」


 肩や脇、肘、腰、膝。


 身体を動かすためには、どうしても金属で完全に覆えない場所がある。


「そこを魔銀糸で補強できる。」


「なるほど。」


「ミスリルの装甲と魔銀糸。」


「かなり丈夫になりそうだね。」


「ああ。」


「じゃあ作る?」


「まだいい。」


「やっぱり?」


「今の防具で困ってないから。」


「ふふっ。」


「必要になったらな。」


「うん。」


 グレンが青いスキルブックを使用する。


《裁縫》


 習得。


「これで鍛冶、魔道具作成、裁縫か。」


「何でも作れるようになってきたね。」


「冒険者なんだけどな。」


「知ってる。」


 最後の一冊。


 グレンが鑑定する。


《魔力強化》


「これは。」


「魔力?」


「ああ。」


「最大魔力量を増やす常時発動型。」


「……。」


 グレンがアイリを見る。


「私?」


「俺が覚えてどうする。」


「魔道具作る時に使うでしょ?」


「それより、アイリの方が使う。」


 グレンがスキルブックを渡す。


 回復。


 支援。


 攻撃魔法。


 アイリの戦闘は魔力消費が大きい。


 さらにマナリカバリーもある。


「最大魔力が増えて、回復もできる。」


「相性いいね。」


「ああ。」


「じゃあ。」


 アイリが青いスキルブックを使用する。


 光となって身体へ吸収された。


《魔力強化》


 習得。


「どう?」


「すぐには分からないけど。」


 アイリが自分の身体を見る。


「魔力に余裕ができた感じはする。」


「次からもっと魔法使えるな。」


「使いすぎないようにする。」


「それがいい。」


 さらに宝箱の中を確認する。


「魔石が二つ。」


 一つは黄色。


「雷属性。」


 もう一つは茶色。


「土属性。」


「ミケと同じだね。」


「ミャ?」


「ミケの魔法と同じ属性だって。」


「ミャ!」


『ミケの!』


「お前のじゃないぞ。」


「ミャー。」


「ふふっ。」


 グレンが二つの中級魔石を見る。


「でも、ミケ用の魔道具に使えるかもしれない。」


「じゃあ取っておこう。」


「ああ。」


 二つともストレージへ収納する。


 そして最後。


「金貨。」


「五階より多い?」


「ああ。」


 グレンが数える。


「結構ある。」


「これなら家賃も問題ないね。」


「塔を攻略してれば生活には困らなそうだ。」


「よかった。」


 報酬をすべて回収する。


 すると、部屋の奥に光が現れた。


「転移陣。」


「これで十階も登録だね。」


 三人が転移陣へ近づく。


 光がグレン、アイリ、ミケの三人を包む。


「これで次から十階。」


「ああ。」


 グレンがさらに奥を見る。


 十一階層へ続く階段がある。


「どうする?」


「今日は帰る。」


「まだ行けそうだけど?」


「行ける。でも、ここから先は今までより時間をかけようと思う。」


「一階ずつ?」


「ああ。」


「魔物も強くなってきてるし、急ぐ理由もない。」


「うん。」


「疲れたら結界魔道具で休めばいいしな。」


「改良したやつ?」


「ああ。」


 弱い魔物は近づけない。


 もし結界を突破するほどの魔物が近づけば、警報が鳴る。


「それなら安心して休めるね。」


「絶対安全じゃないけどな。」


「それでも十分。」


「ミャ。」


『かえる?』


「ああ。今日は帰ろう。」


「ミャ!」


『ごはん!』


「やっぱりそれか。」


「ふふっ。」


 十階層、攻略完了。


 グレンたちは十一階層から、これまで以上に慎重に塔を登っていくことにした。

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