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アラフォー冒険者、今日も嫁のために頑張ります  作者: 榊紅丸
第二章 冒険者都市ルグリア編
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第81話 最初の階層主

 五階層。


 巨大な扉の前。


「行くぞ。」


「うん。」


「ミャ!」


『たたかう』


「必要だったらな。」


「ミャ。」


『できる』


「知ってるよ。」


 グレンは苦笑しながら。


 巨大な扉を押した。


 ゴゴゴゴゴ……。


 重い音を立て。


 扉が開いていく。


 その先。


 広い石造りの空間。


 中央に。


 一体の魔物がいた。


「熊?」


「大きいね。」


 四本の足。


 巨大な身体。


 黒褐色の毛。


 そして。


 身体の一部を覆うような。


 硬質化した毛皮。


「鑑定。」


 グレンが確認する。


 アーマーベア。


 高い筋力と防御力を持つ熊型の魔物。


 硬質化した毛皮は。


 並の斬撃では簡単に傷つかない。


「なるほど。」


「強そう?」


「五階の階層主としては、ってところかな。」


「じゃあ大丈夫そう?」


「油断はしない。」


「うん。」


 アイリがグリムゾンティアを構える。


「身体強化。」


 グレンの身体へ。


 力が満ちる。


「クイック。」


 さらに。


 身体が軽くなる。


「ありがとう。」


「防御強化もいる?」


「いや。」


 グレンはアーマーベアを見る。


「まずこれでやってみる。」


「分かった。」


「グルルルル……。」


 アーマーベアが。


 グレンたちを見た。


 立ち上がる。


「でかいな。」


「グオオオオオッ!!」


 咆哮。


 そして。


 一気に走り出した。


「速い。」


 巨体に似合わない。


 かなりの速度。


 だが。


 身体強化。


 クイック。


 今のグレンなら。


 十分に見える。


「よっ。」


 横へ。


 かわす。


 アーマーベアが通り過ぎる。


 急停止。


 振り返る。


「グオオッ!」


 再び。


 グレンへ。


「力押しタイプか。」


 巨大な腕。


 振り下ろす。


 グレンはバックラーを構え――。


「いや。」


 受ける必要もない。


 一歩。


 横へ。


 轟ッ!


 巨大な爪が。


 石床を叩いた。


「威力はあるな。」


「でも当たらないね。」


「ああ。」


 隙。


 グレンが踏み込む。


「パワースラッシュ!」


 剣。


 硬い毛皮へ。


 ガギィッ!


「……硬い。」


 だが。


 斬れないわけではない。


「グオオッ!」


 アーマーベアがよろめく。


「グレン。」


「ああ。」


 後方。


 アイリが。


 グリムゾンティアを向ける。


「アイスランス!」


 氷の槍。


 一直線。


 アーマーベアの肩へ突き刺さる。


「グオオオッ!」


「通った。」


「硬いのは毛皮だけみたいだな。」


 アーマーベアが。


 アイリを見る。


「おっと。」


 グレンが前へ。


「こっちだ。」


「グオオッ!」


 巨大な腕。


 今度は。


 バックラー。


 ガァン!


「おお。」


 重い。


 だが。


 耐えられる。


「フォルンに来たばかりの頃なら。」


 押し負けていたかもしれない。


 だが。


 今は。


「ノックバック!」


 衝撃。


「グオッ!?」


 巨体が。


 後方へよろめく。


「熊を押し返した……。」


 アイリが少し驚く。


「俺も強くなったな。」


「自分で言うんだ。」


「事実だから。」


 アーマーベアが。


 再び体勢を整えようとする。


「終わらせる。」


 グレンが踏み込む。


「連続斬り!」


 一撃。


 二撃。


 先ほど傷つけた場所。


 硬質化した毛皮が裂ける。


「グオオオオ……!」


 巨体が揺れ。


 倒れた。


 ドォォン!


「……。」


 静かになる。


「終わったね。」


「ああ。」


「ミャ?」


『ミケは?』


「……。」


 グレンが振り返る。


 アイリの腕の中。


 ミケが。


 こちらを見ている。


「終わったぞ。」


「ミャ!?」


『たたかってない』


「必要なかったから。」


「ミャー!」


『ミケもできる!』


「知ってるって。」


 グレンがミケの頭を撫でる。


「上にはもっと強いのがいるんだろ?」


「ミャ。」


『いる』


「その時は頼むよ。」


「ミャ!」


『まかせて』


「頼もしいな。」


「ふふっ。」


 その時。


 部屋の中央。


 アーマーベアが倒れていた場所。


 光。


「グレン。」


「ああ。」


 魔物の身体が消えていく。


 残ったのは。


 魔石。


 そして。


「宝箱。」


 石床の上。


 一つの宝箱が現れていた。


「階層主の報酬かな。」


「開けよう。」


「待って。」


 グレンが手を出す。


「罠察知。」


 反応。


 なし。


「大丈夫。」


「こういうところ慎重だよね。」


「宝箱で死んだら笑えない。」


「それはそう。」


 蓋を開ける。


「さて。」


 中を見る。


「お。」


 最初に見えたのは。


 二冊の本。


「青。」


「二冊あるね。」


「ああ。」


 青いスキルブック。


「これは嬉しい。」


 グレンが一冊を取る。


「鑑定。」


 表示されたのは。


《剛力》


「剛力?」


「筋力を高める常時発動型の強化スキル。」

は

「グレンに良さそう。」


「ああ。」


「身体強化とも併用できるみたいだ。」


「じゃあ強くなるね。」


「これは覚える。」


 迷う必要はない。


 グレンがスキルブックを使用する。


 青い光。


 身体へ吸収される。


「……。」


 拳を握る。


「どう?」


「まだ分からないけど。」


 グレンが腕を動かす。


「力が入りやすい感じはする。」


「次の戦闘で分かりそうだね。」


「ああ。」


 続いて。


 二冊目。


「鑑定。」


《毒耐性》


「毒か。」


「それも便利じゃない?」


「便利ではある。」


 だが。


 グレンは少し考えた。


「これは保管する。」


「覚えないの?」


「ああ。」


「どうして?」


「毒だけだからな。」


 グレンが青いスキルブックを見る。


「もっと上に。」


「状態異常耐性みたいなスキルがあるかもしれない。」


「あ。」


「毒も麻痺もまとめて防げるような?」


「そう。」


「もしあるなら。」


「毒耐性を覚える必要はなくなる。」


「なるほど。」


「それに青なら。」


「合成にも使えるね。」


「ああ。」


「今すぐ必要じゃないなら取っておく。」


 グレンは。


 毒耐性のスキルブックをストレージへ収納した。


「他は?」


「魔石。」


 一つ。


 青白い魔石。


「鑑定。」


 氷属性。


 中級魔石。


「氷だ。」


「いいね。」


「……。」


「……。」


 アイリがグレンを見る。


「何?」


「いや。」


「今、何考えたの?」


「別に。」


「冷房?」


「……。」


「やっぱり。」


「まだ作らないぞ。」


「誰も作ってって言ってないよ?」


「いや。」


「氷属性の魔石を見ると。」


「冷房が頭に浮かぶようになった。」


「フォルンで五台も作ったからね。」


「最後の最後にな。」


「ふふっ。」


「まだ暑くないし。」


 グレンは魔石を収納する。


「夏になったら使う。」


「自分たちの家用?」


「家を借りてればな。」


「じゃあ取っておこう。」


「ミャ。」


『つめたい?』


「冷たい魔石だぞ。」


「ミャ?」


「触らなくていいから。」


「ミャ。」


 さらに。


 宝箱の中。


「金貨。」


「結構入ってるね。」


「ああ。」


 グレンが確認する。


「これなら。」


「塔を攻略しながら生活費も稼げそうだ。」


「冒険者なんだから、それが普通なんだけどね。」


「最近。」


「魔道具作って稼いでたから。」


「誰のせい?」


「ミーナ。」


「領主様も。」


「そうだった。」


 二人が笑う。


 そして。


 部屋の奥。


 先ほどまで何もなかった場所。


 淡い光が現れる。


「あれか。」


 床。


 円形の魔法陣。


「転移陣。」


「たぶん。」


 三人が近づく。


 すると。


 光が強くなる。


「……。」


 グレン。


 アイリ。


 そして。


 ミケ。


 三人を包む。


 しばらくして。


 光が収まった。


「これで登録されたのかな。」


「試してみる?」


「一度入口へ戻ろう。」


「うん。」


 三人が。


 転移陣へ乗る。


「入口。」


 グレンが告げる。


 光。


 一瞬。


「……お。」


 景色が変わった。


 目の前。


 塔の入口。


「本当に戻った。」


「すごい。」


「じゃあ。」


 もう一度。


 転移陣へ。


「五階。」


 光。


 次の瞬間。


 三人は。


 先ほどのボス部屋に戻っていた。


「……。」


「便利。」


「便利だね。」


「ミャ。」


『はやい』


「だろ?」


 グレンが頷く。


 そして。


 少しだけ。


 遠い目をした。


「フォルンにも欲しかった。」


「まだ言ってる。」


「だって便利すぎるだろ。」


「ふふっ。」


 五階層。


 最初の階層主。


 攻略完了。


 剛力。


 青いスキルブック。


 氷属性の中級魔石。


 金貨。


 そして。


 転移陣。


「どうする?」


 アイリが聞く。


「まだ行く?」


「いや。」


 グレンは首を振った。


「今日はここまで。」


「まだ余裕あるよ?」


「ある。」


「でも。」


 グレンが塔の上を見る。


「初日だ。」


「塔の感じも分かった。」


「うん。」


「一度街に戻って。」


「今後どうするか決めよう。」


 無理をする必要はない。


 ルグリア。


 三十階層の塔。


 どうやら。


 ここなら。


 しばらく冒険を続けられそうだった。


「家。」


「探す?」


「ああ。」


「ミャ!」


『いえ!』


「ミケも賛成みたい。」


「じゃあ決まりだな。」


 三人は。


 転移陣へ向かった。


 次に探すのは。


 魔物でも。


 宝箱でもない。


 ルグリアで暮らす。


 新しい家だった。

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