↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
73/102

第73話 十階層

 B級へ昇格してから数日後。


 グレンとアイリは、再びダンジョンへ来ていた。


「やっと冒険できる。」


「そんなに?」


「最近ずっと魔道具作ってたからな。」


「ふふっ。」


 アイリの腕の中。


 ミケもご機嫌そうに尻尾を揺らしている。


「ミャア。」


『たのしみ』


「ミケも楽しみだって。」


「お前は前回かなり暴れてただろ。」


「ミャ。」


『たたかう』


「戦うって。」


「無理はするなって伝えて。」


「ミケ、無理しちゃダメだよ。」


「ミャ!」


『わかった』


「本当に分かってるかな……。」


 二人と一匹が向かうのは。


 十階層。


 このダンジョンの最下層だった。


 九階層のボス。


 デュラハンを倒した先にある階段を下りる。


「ここからか。」


「最後の階層だね。」


「ああ。」


 グレンは気を引き締める。


 十階層。


 これまでより広い通路。


 天井も高い。


 壁には魔石灯が並び。


 薄暗い地下空間を照らしている。


「気配察知。」


 意識を広げる。


「前方。」


「いる?」


「三体。」


 少し進む。


 現れたのは。


 大柄な人型の魔物。


「鑑定。」


【オーガ】


「十階層はオーガか。」


「強そう。」


「今までよりはな。」


 オーガたちもこちらへ気付く。


「グオオオッ!」


 三体。


 一斉に走り出した。


「身体強化。」


「クイック。」


 アイリの支援。


 グレンが前へ出る。


「スマッシュウェーブ!」


 剣を振る。


 衝撃波。


 先頭のオーガへ直撃。


「グォッ!」


 巨体が揺れる。


 だが。


 倒れない。


「やっぱり硬いな。」


「エアーカッター!」


 風刃。


 残り二体へ。


 ザシュッ!


 身体を斬られながらも。


 オーガは止まらない。


「グオオオ!」


「来い!」


 棍棒。


 振り下ろされる。


 グレンはバックラーで真正面から受けず。


 斜めに流す。


 ドゴォン!


 石床が砕けた。


「相変わらず力はすごいな!」


 だが。


 速くはない。


 グレンが懐へ入る。


「パワースラッシュ!」


 腹部。


 強烈な斬撃。


 オーガが後ろへよろめく。


「連続斬り!」


 さらに。


 一撃。


 二撃。


 三撃。


 巨体が倒れた。


「ミャア!」


 バリバリッ!


「え?」


 横を見る。


 残り二体へ。


 青白い雷が連鎖する。


「グォォォッ!」


 二体の動きが止まった。


「ミケ。」


「ミャ!」


『てつだう』


「手伝うって。」


「分かったから。」


 グレンが苦笑する。


「無理だけはするなよ。」


「ミャ!」


 残った二体も。


 グレンとアイリ。


 そしてミケの援護で危なげなく倒した。


「やっぱり。」


 アイリが言う。


「三人だと楽になったね。」


「ああ。」


 グレンも頷く。


 以前なら。


 アイリを守りながら複数の敵を相手にする必要があった。


 今は違う。


 アイリ自身にも十分な自衛能力がある。


 そして。


 ミケがいる。


「頼もしいな。」


「ミャ。」


『もっとほめて』


「もっと褒めてだって。」


「調子に乗るからダメ。」


「ミャー。」


『けち』


「ケチって言われてるよ。」


「意思疎通魔道具、作らない方がよかったかな。」


「私は作ってもらってよかったよ。」


「だろうな。」


 探索を続ける。


 オーガ。


 ハイオーガ。


 時折。


 大型の魔物も現れた。


 だが。


 今の三人にとって。


 一体一体は脅威ではない。


 グレンが前衛。


 アイリが支援と攻撃。


 ミケが雷と土魔法。


 危険を感じれば。


 無理をせず下がる。


 休憩も早めに取る。


「最後だからって急ぐ必要はない。」


「うん。」


「今日中に攻略できなくてもいい。」


『おなかすいた』


「ミケがお腹すいたって。」


「……休憩するか。」


「ちょうどいいね。」


「ミケ基準になってない?」


「いいじゃん。」


 食事。


 水分補給。


 装備確認。


 十分に休んでから再出発。


 そして。


 数時間後。


「……あった。」


 通路の先。


 巨大な扉。


 これまでの階層主の部屋よりも。


 さらに大きい。


「ここだな。」


「最後のボス。」


「ああ。」


 グレンは扉の前へ立つ。


 だが。


 手はかけない。


「休もう。」


「やっぱり?」


「当たり前。」


 グレンがマジックバッグを開く。


「ここまで来て、疲れた状態で入る意味ないからな。」


「うん。」


 取り出したのは。


 結界魔道具。


「やっと本格的に活躍してるね。」


「前回も使っただろ。」


「そうだけど。」


 床へ置く。


 起動。


 淡い聖属性の魔力が広がった。


 結界が。


 三人を包む。


「ミケは?」


「ミャ。」


 普通に入っている。


「問題なし。」


 グレンは壁際へ座る。


 アイリも隣へ。


 ミケは当然のように。


 アイリの膝へ乗った。


「ミャア。」


『ねる』


「寝るって。」


「大物だな。」


 ミケが丸くなる。


 数分後。


「……。」


「寝たね。」


「ああ。」


 グレンが苦笑する。


「この扉の向こうに階層主いるんだけどな。」


「ミケには関係ないんじゃない?」


「強いな。」


「精神的にも。」


 二人も休む。


 軽食。


 水分。


 魔力。


 体力。


 全てを回復させる。


 しばらくして。


「そろそろ行くか。」


「うん。」


 アイリがミケを起こす。


「ミケ。」


「ミャ……。」


『ねむい』


「起きて。」


「ミャア。」


『もうちょっと』


「ボス戦だぞ。」


「ふふっ。」


 なんとか起こす。


 結界魔道具を停止。


 マジックバッグへ戻す。


「身体強化。」


 アイリがグレンへ魔法をかける。


「クイック。」


「防御強化。」


 さらに。


「プロテクトオーラ。」


 淡い光が。


 三人を包む。


「準備いい?」


「ああ。」


「ミャ!」


『たたかう』


「ミケも大丈夫。」


「よし。」


 グレンが巨大な扉へ手をかける。


「行くぞ。」


 重い扉が開く。


 その先。


 広大な石室。


 中央。


 一体の巨人が立っていた。


「……でかいな。」


「オーガ?」


「たぶん。」


 通常のオーガより。


 二回り以上大きい。


 分厚い筋肉。


 巨大な棍棒。


 身体には無数の傷跡。


 グレンが鑑定する。


【オーガロード】


【十階層・階層主】


【オーガ種の上位個体】


【極めて高い筋力・耐久力を持つ】


「やっぱり。」


「オーガロード。」


 グレンがミスリルソードを抜く。


「力と耐久力。」


「分かりやすい相手だな。」


「油断しないでね。」


「もちろん。」


「グオオオオオオオッ!!」


 咆哮。


 空気が震える。


「来る!」


 オーガロードが走り出した。


 速い。


「思ったより速い!」


 巨大な棍棒。


 横薙ぎ。


 グレンは後ろへ飛ぶ。


 ブオンッ!


 風圧だけで。


 身体が押される。


「まともに受けるのは無理だな。」


「グレン!」


「ああ!」


 再び。


 棍棒。


 今度は振り下ろし。


 グレンが横へ避ける。


 ドゴォォォン!!


 石床が大きく砕けた。


「エアーカッター!」


 アイリ。


 複数の風刃。


 オーガロードへ直撃。


 ザシュッ!


 ザシュッ!


 皮膚が裂ける。


 だが。


「浅い!」


「硬いね!」


「スマッシュウェーブ!」


 衝撃波。


 胸部へ直撃。


「グォッ!」


 一歩下がる。


 それだけ。


「耐久力おかしいだろ!」


「ミャア!」


 ミケ。


 青白い雷。


「サンダーチェイン!」


 バリバリバリッ!


 雷撃。


 オーガロードを包む。


「グオオオオッ!」


 効いている。


 だが。


 倒れない。


「やっぱりタフだな。」


「でもダメージは入ってるよ!」


「ああ。」


 グレンが接近。


「パワースラッシュ!」


 斬撃。


 脇腹。


 血が飛ぶ。


「グオオッ!」


 オーガロードが棍棒を振る。


「っ!」


 グレンがバックラーで軌道を逸らす。


 だが。


 完全には流し切れない。


 ドンッ!


「ぐっ!」


 衝撃。


 グレンの身体が数歩下がる。


「グレン!」


「大丈夫!」


 衝撃耐性。


 なければ。


 もっと大きく吹き飛ばされていた。


「力だけなら今までで一番だな。」


「ミャ!」


 ミケが前足を向ける。


 ゴゴゴゴッ!


 地面。


 亀裂。


「アーススパイク!」


 ズガガガガッ!!


 複数の岩棘。


 オーガロードの脚。


 身体。


 次々と突き刺さる。


「グオオオッ!」


「止まった!」


「今!」


 アイリがグリムゾンティアを向ける。


「エアーカッター!」


 風刃。


 グレンも走る。


「連続斬り!」


 一撃。


 二撃。


 三撃。


 確実に。


 ダメージを与える。


「これなら――」


 その時。


「グオオオオオオオッ!!」


 オーガロードが咆哮した。


 筋肉が膨れ上がる。


 ミケのアーススパイク。


 岩棘を。


 力任せに。


 バキッ!


「え?」


 バキバキバキッ!!


 砕いた。


「嘘だろ!?」


 拘束。


 解除。


 オーガロードが棍棒を振り上げる。


「グレン!」


 近い。


 避ける。


 だが。


 完全には間に合わない。


「くそっ!」


 バックラーを構える。


 その瞬間。


「ミャアアアッ!!」


「ミケ?」


 アイリの腕の中。


 ミケの身体が。


 光に包まれた。


「え?」


 膨らむ。


 身体が。


 一気に。


「ミケ!?」


 アイリが慌てて腕を離す。


 床へ着地したミケ。


 だが。


 もう。


 いつもの子猫ではなかった。


「……。」


「……。」


 巨大。


 大型の猛獣。


 虎すら上回るほどの体躯。


 太い四肢。


 鋭い爪。


 全身には。


 青白い雷が走っている。


「ミケ……だよな?」


「ミャア!」


『まもる!』


「ミケ!」


 巨大化したミケが。


 オーガロードへ飛びかかる。


「グオッ!?」


 前足。


 振り上げる。


「……まさか。」


 グレンが呟く。


 次の瞬間。


 ドゴォォォン!!


 猫パンチ。


「グオオオオッ!?」


 オーガロードの巨体が。


 横へ吹き飛んだ。


「……。」


「……。」


 壁。


 ドガァン!!


 激突。


 石片が飛び散る。


 グレンが固まる。


 アイリも。


 一瞬だけ固まっていた。


 だが。


「ミケすごい!」


「そこ!?」


「だってすごいよ!」


「いや!」


 グレンが巨大なミケを指差す。


「なんで大きくなった!?」


「ミャ?」


「鳴き声そのままなの!?」


 グレンが鑑定する。


【ラグナリンクス・幼体】


【状態:獣化】


【獣化】


【ラグナリンクス固有能力】


【一時的に本来の戦闘形態へ変化し、身体能力を大幅に上昇させる】


「獣化……。」


「そんな能力あったの?」


「俺も今知った!」


 オーガロードが立ち上がる。


「グオオ……!」


 まだ倒れていない。


「どんだけ頑丈なんだよ!」


「グレン!」


「ああ!」


 ミケを見る。


「ミケ!」


「ミャ!」


『まだやる!』


「いや。」


 グレンが笑う。


「もう十分だ。」


 ミケの巨大な身体。


 少しだけ。


 呼吸が荒くなっている。


「後は俺たちがやる。」


「ミャ……。」


『わかった』


 ミケが後ろへ下がる。


 グレン。


 前へ。


「アイリ!」


「うん!」


「エアーカッター!」


 風刃。


 オーガロードの顔。


 胸。


 腕。


 連続して斬り裂く。


「グオオオッ!」


 怯む。


「今!」


 グレンが走る。


 身体強化。


 クイック。


 全力。


「パワースラッシュ!」


 ミスリルソード。


 深く。


 オーガロードの胴体を斬る。


「グォォッ!」


 まだ。


「連続斬り!」


 一撃。


 二撃。


 三撃。


 最後。


 渾身の一閃。


「はぁぁぁっ!!」


 ザンッ!


「グ……オ……。」


 巨大な身体が。


 揺れる。


 そして。


 ドォォォン。


 倒れた。


「……。」


 グレンは。


 しばらく構えを解かない。


「気配は?」


 アイリが聞く。


「……消えた。」


「終わった?」


「ああ。」


 剣を下ろす。


「終わった。」


「やった!」


「ミャア!」


 振り返る。


「……。」


 まだ巨大なミケ。


「でかいな。」


「可愛いよ?」


「この大きさで?」


「ミケだもん。」


「その理屈最強だな。」


 数秒後。


 ミケの身体が光る。


 徐々に。


 小さくなる。


 そして。


 いつもの。


 子猫サイズ。


「ミャ……。」


 ぺたん。


 床へ座った。


「ミケ!」


 アイリがすぐに抱き上げる。


『つかれた』


「疲れたって。」


「やっぱり負担あるんだな。」


 グレンもミケの頭を撫でる。


「ありがとな。」


「ミャ。」


『がんばった』


「ああ。」


「頑張った。」


 アイリがぎゅっと抱きしめる。


「ミケ、すごかったよ!」


「ミャア。」


『もっとほめて』


「はいはい。」


「いっぱい褒めてあげる。」


 グレンが苦笑する。


「しかし。」


「ん?」


「幼体でこれだろ?」


「うん。」


「成長したらどうなるんだよ。」


「もっと強くなるんじゃない?」


「獣化した時の大きさは変わらないみたいだけど。」


「魔法とか身体能力は上がるだろうな。」


「楽しみだね。」


「俺はちょっと怖い。」


「ミケなのに?」


「ミケだからだよ。」


「ミャ?」


 二人が笑う。


 十階層。


 最終階層。


 その階層主。


 オーガロード撃破。


 グレンは部屋の奥を見る。


 そこには。


 今までの階層では見たことのない。


 大きな宝箱が置かれていた。


「……。」


「グレン?」


「ああ。」


 グレンが笑う。


「最後の報酬だな。」


 三人は。


 ついに。


 ダンジョン最深部へ到達した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。