↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
64/100

第64話 九階層

 翌朝。


 グレンとアイリは、久しぶりにダンジョンへ向かっていた。


「なんか久しぶりに外出た気がする。」


 グレンが歩きながら呟く。


「二日だけだよ?」


「そうなんだけどさ。」


 魔道具作りで二日間。


 ほとんど家にこもっていた。


「前世なら二日くらい家にいるの普通だったよな。」


「むしろ休みの日は出たくなかったよね。」


「そうそう。」


 グレンは笑う。


「前世ではインドア寄りだったのに、冒険者してるとアウトドアになるもんだな。」


「アウトドアっていうレベルじゃないけどね。」


「確かに。」


 グレンが苦笑する。


「命懸けでダンジョン潜るアウトドアは嫌だな。」


「ふふっ。」


「でも。」


 アイリが隣を歩きながら言う。


「私、今はこっちも結構好きだよ。」


「俺も。」


「家でのんびりするのも好きだけど。」


「それは変わらない。」


「暖房もできたしね。」


「そこ重要?」


「重要。」


 即答だった。


 二人は笑いながらダンジョンへ向かった。


 八階層を抜け。


 ミノタウロスを倒した先にある階段を下りていく。


 そして。


 九階層。


「……うわ。」


 アイリが小さく声を漏らした。


 薄暗い。


 石造りの通路。


 壁には所々、青白い炎が灯っている。


 その先には。


 墓石。


 石棺。


 崩れかけた墓所。


「地下墓地か。」


「みたいだね。」


 空気も八階層とは違う。


 冷たい。


 暖房のある家から出てきたせいか、余計に寒く感じる。


「帰ったら暖房だな。」


「もう帰る話?」


「楽しみがある方がいいだろ。」


「それはそうだけど。」


 グレンはミスリルソードを抜く。


 アイリもグリムゾンティアを構えた。


「とりあえず慎重に。」


「うん。」


 しばらく進む。


 カタ。


 グレンが足を止めた。


「いる。」


 気配察知。


 前方。


 複数。


「三……いや、四体。」


 石棺の陰から。


 ゆっくりと何かが姿を現した。


 人の形。


 だが。


 皮膚は干からび。


 目には生気がない。


「鑑定。」


【グール】


【アンデッド系魔物】


【鋭い爪と牙を持つ。生命力が高く、通常攻撃では倒しにくい】


「グールか。」


「アンデッドだね。」


「ああ。」


 これなら。


 試すにはちょうどいい。


 グレンが剣を構える。


「聖光剣。」


 ミスリルソードが白い光に包まれた。


「おお。」


 覚えた時にも確認した。


 だが実戦で使うのは初めてだ。


「綺麗。」


「見るのそこ?」


「だって綺麗なんだもん。」


 グールが走り出す。


 速い。


 だが。


「クイック。」


「身体強化。」


 二つの支援が重なる。


 グレンが一歩踏み込む。


「はっ!」


 一閃。


 聖なる光をまとった剣が、グールの胴体を斬り裂く。


 次の瞬間。


 白い光が傷口から広がった。


「ギィィィッ!」


 グールが崩れ落ちる。


「……効くな。」


「すごく効いてる。」


 残り三体。


 左右に分かれて迫る。


「グレン、下がって。」


「ん?」


「私も試したい。」


「なるほど。」


 グレンが横へ動く。


 アイリがグリムゾンティアを前へ向けた。


「ホーリーレイ!」


 白い光が広がった。


 一直線ではない。


 前方へ大きく広がる聖なる光。


 三体のグールをまとめて包み込む。


「ギィィィッ!」


 光が消えた時。


 三体とも地面へ倒れていた。


「……強いな。」


 グレンが呟く。


「うん。」


 アイリ自身も少し驚いたようだった。


「アンデッド相手だから余計に効いてるんだろうけど。」


「これなら九階層、かなり相性いいかもな。」


「油断はダメだよ。」


「分かってる。」


「グレンが言う側じゃなかった?」


「最近アイリも言うようになったな。」


「五年一緒に冒険してるからね。」


「染まった?」


「たぶん。」


 二人は倒れたグールを確認する。


 魔石を回収。


「行こう。」


「うん。」


 さらに奥へ。


 九階層は墓所が複雑に入り組んでいた。


 通路の両側には石棺。


 時折。


 半透明の影が壁の向こうを横切る。


「今の見た?」


「見た。」


「幽霊っぽかったね。」


「嫌だな。」


「怖い?」


「別に。」


「ほんと?」


「……ちょっとだけ。」


「ふふっ。」


「笑うなよ。」


 その時。


 気配察知に反応。


「来る。」


 壁の向こうから。


 半透明の人影が、すり抜けるように現れた。


「鑑定。」


【レイス】


【アンデッド系魔物】


【物理攻撃への耐性が高い。生命力を奪う攻撃を行う】


「物理耐性。」


「じゃあ私が。」


 アイリが前へ出る。


「ホーリーレイ!」


 光が走る。


 レイスが大きく揺らぐ。


 だが。


 一撃では消えない。


「まだいる。」


「聖光剣なら?」


「やってみる。」


 グレンが踏み込む。


 普通の剣なら通り抜けるかもしれない。


 だが。


 白い光をまとった刃が。


 レイスの身体を確かに斬った。


「ギィィィ……!」


 レイスが消える。


「通った。」


「聖光剣なら霊体にも効くんだね。」


「これは助かるな。」


「グレンもちゃんとアンデッド倒せる。」


「俺だけ役立たずにならなくてよかった。」


「そこ気にしてたの?」


「ちょっと。」


 アイリが笑う。


 さらに探索を続ける。


 罠察知。


 気配察知。


 隠し空間感知。


 新しい階層でも。


 これまで集めてきた探索技能が役立つ。


「止まって。」


 グレンが手を上げる。


「罠?」


「ああ。」


 床。


 薄く沈み込む石板。


「踏んだら何か出そう。」


「解除できる?」


「やってみる。」


 罠解除。


 慎重に機構を確認し。


 動作を止める。


「よし。」


「解除できた?」


「ああ。」


「じゃあ行こう。」


 通路を抜けた先。


 少し広い墓室へ出た。


 中央には大きな石棺。


 その周囲に。


 六つの人影。


「またグール?」


「いや。」


 鑑定。


【ワイト】


【上位アンデッド】


【武器を扱い、闇属性の力を持つ】


「上位か。」


 六体。


 その手には錆びた剣や槍。


「さっきより強そう。」


「ああ。」


「まとめていける?」


「やってみる。」


 アイリがグリムゾンティアを構える。


「プロテクトオーラ。」


 淡い光が二人を包む。


「身体強化。」


「クイック。」


 支援を重ねる。


「ホーリーレイ!」


 白い光が墓室を照らした。


 前方のワイトたちをまとめて飲み込む。


 二体。


 三体。


 光の中で崩れていく。


 だが。


 残り三体は耐えた。


「来る。」


「任せろ。」


 グレンが前へ。


 聖光剣。


 光る剣で一体を斬り倒す。


 横から槍。


 ミスリルバックラーで受け流す。


「はっ!」


 返す剣で二体目。


 最後の一体がアイリへ向かう。


 だが。


 アイリも左腕のバックラーを構えた。


 剣を受け。


 身体をずらす。


「エアーカッター!」


 至近距離から放たれた風刃。


 ワイトが吹き飛び。


 そこへ。


「ホーリーレイ!」


 追撃の光。


 ワイトが消滅した。


「終わり。」


「ああ。」


 グレンが剣の光を消す。


「新しいスキル、当たりだったな。」


「リジェネもあるしね。」


「そういえばまだ使ってない。」


「使わないで済むなら、その方がいいよ。」


「確かに。」


 二人は墓室を見回した。


 大きな石棺。


 奥にはさらに通路。


「今日はまだ進めそうだな。」


「うん。」


 グレンは奥を見る。


 九階層。


 アンデッドが徘徊する地下墓地。


 不気味ではある。


 だが。


 今の二人には。


 それに対抗するための力があった。


「行こうか。」


「うん。」


 二人は再び。


 薄暗い墓地の奥へと歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。