第6話 効率アップ
翌朝。
朝食を終えたグレンとアイリは、いつものように冒険者ギルドを訪れた。
「おはようございます!」
受付ではミーナが笑顔で迎えてくれる。
「今日はどの依頼にしますか?」
「昨日と同じ、オーク五体討伐を頼む。」
「はい!」
手続きを終えた二人は、そのままダンジョンへ向かった。
五階層へ到着すると、グレンは剣へ手を添える。
「今日は昨日覚えたスキルを試しながら行こう。」
「無理はしないでね。」
「もちろん。」
安全第一。
それだけは変わらない。
最初に現れたオークへ向かって、グレンは剣を振る。
「スマッシュウェーブ!」
透明な衝撃波が一直線に飛び、オークの胸へ命中した。
「グオォッ!」
体勢を崩したところへ近付き、連続斬りで仕留める。
「やっぱり違うね。」
アイリが嬉しそうに笑う。
「ああ。」
グレンも頷いた。
「一撃入れてから近付けるだけで、こんなに楽になるとは思わなかった。」
戦闘時間が短い。
被弾の危険も減る。
体力の消耗も少ない。
その日は驚くほど順調だった。
五体。
十体。
十五体。
「グレン、まだ動けそう?」
「ああ。」
息は少し上がっている。
だが、いつものような疲労感はない。
「帰るか?」
アイリはそう聞いたが、グレンは周囲を見回して首を横へ振った。
「今日はもう少しだけ狩ろう。」
「珍しいね。」
「無理はしない。」
グレンは笑う。
「でも、まだ余裕がある。」
「じゃあ、私も付き合う。」
二人は探索を続けた。
オークを一体ずつ、安全に、確実に倒していく。
途中で二体同時に現れる場面もあったが、スマッシュウェーブで片方を牽制し、落ち着いて各個撃破する。
気が付けば――。
「二十五体……。」
アイリが討伐数を書いた紙を見て驚く。
「こんなに倒したの初めてだよ。」
「俺もだ。」
グレン自身が一番驚いていた。
以前なら依頼分の五体を倒した時点で帰っていた。
体力にも余裕がなく、それ以上潜るのは危険だったからだ。
しかし今日は違う。
まだ帰る余力まで残っている。
「このスキル、本当にすごいな。」
「安全だから疲れ方も全然違うね。」
「ああ。」
グレンは剣を鞘へ納めた。
「今日はこれで帰ろう。」
「うん。」
二人はダンジョンをあとにした。
◇
フォルンへ戻ると、そのままギルドへ向かう。
「お帰りなさい!」
ミーナが笑顔で迎える。
「依頼達成だ。」
「確認しますね。」
オークの牙を並べる。
一つ、二つ、三つ――。
ミーナの手が止まった。
「……え?」
数え直す。
「二十五個?」
「ああ。」
「五体討伐ですよね?」
「途中で余裕があったから、そのまま狩り続けた。」
ミーナは目を丸くした。
「そんなこと、今まで一度もありませんでしたよね?」
「今日は調子が良かった。」
「それにしても五倍ですよ!?」
ミーナは慌てて計算を始める。
討伐報酬は一体ごとに支払われるため、二十五体ならそのまま五倍だ。
「こちらが報酬になります。」
革袋を受け取ると、ずっしりとした重みが伝わる。
「こんなに入ってる。」
アイリが嬉しそうに笑う。
「今日は少し贅沢できそうだね。」
「たまには肉を買うか。」
「賛成。」
ミーナは書類を書きながら尋ねた。
「今日はスキルブックは出ましたか?」
グレンは一瞬だけアイリと目を合わせる。
そして自然に答えた。
「いや。」
「そうですか……。」
ミーナは少し残念そうに笑う。
「最近は運が良かったですからね。」
「ああ。またそのうち出るさ。」
何事もなかったようにギルドをあとにする。
赤いスキルブックも、ユニークスキルも。
すべて二人だけの秘密だった。
◇
家へ帰ると、アイリはすぐに玄関へ鍵を掛けた。
グレンも窓を確認する。
「今日も誰にも話さなかったね。」
「ああ。」
「じゃあ……。」
アイリが笑う。
「今日の研究、始めようか。」
グレンも笑みを浮かべ、木箱をそっと机の上へ置いた。
今日拾ったスキルブックを並べながら、小さく呟く。
「さて……次は何ができるかな。」




