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第46話 レイド

 八階層の階層主、ミノタウロスを倒した翌日。


 グレンとアイリは冒険者ギルドを訪れていた。


「おはようございます。」


 受付にいたミーナが二人に気付き、すぐに笑顔を向ける。


「おはよう。」


「おはようございます。」


「今日は八階層の報告ですか?」


「ああ。」


 グレンは討伐証明をカウンターへ置いた。


 ミーナが確認する。


「……これは。」


 顔を上げた。


「ミノタウロスの討伐証明ですね。」


「うん。」


「八階層、クリアしたよ。」


 アイリが嬉しそうに答える。


 ミーナは少しだけ目を丸くした。


「本当に早いですね……。」


「そうか?」


「そうですよ。」


 七階層を突破してCランクへ昇格してから、それほど時間は経っていない。


 そのまま八階層まで攻略したとなれば、驚かれるのも無理はない。


「怪我はありませんでしたか?」


「大丈夫。」


「攻撃はかなり重かったけどな。」


 グレンが苦笑する。


「バックラーがなかったら、もっと苦戦してたと思う。」


「装備を整えておいて正解でしたね。」


「ああ。」


 ミーナは討伐証明を処理し、報酬を用意する。


「こちらがミノタウロス討伐分と、八階層踏破分の報酬になります。」


「ありがとう。」


 グレンが受け取る。


「それと、今回は素材もいくつか持ち帰ってる。」


 マジックバッグから八階層で集めた素材を取り出していく。


 スケルトンたちの討伐証明。


 途中で入手した素材。


 そしてミノタウロスから回収できた角など。


 ミーナが一つずつ確認していく。


「こちらも買い取り可能です。」


「じゃあ普通の素材はお願いする。」


「かしこまりました。」


 グレンは少し考えたあと、マジックバッグの中にあるミスリルインゴットと魔銀糸には触れなかった。


 珍しい素材は保管しておく。


 今は使えなくても、いつか役に立つかもしれない。


 処理が終わるまで待っていると。


「あ、そうでした。」


 ミーナが何かを思い出したように顔を上げる。


「お二人にお話ししておきたいことがあるんです。」


「俺たちに?」


「はい。」


 ミーナは少し声を落とした。


「近いうちに、レイド討伐が行われる予定なんです。」


「レイド?」


 アイリが首を傾げる。


 グレンも聞き慣れない言葉ではなかったが、実際に参加したことはない。


「複数のパーティが合同で行う大規模討伐です。」


「かなり強い魔物が相手ってことか。」


「はい。」


 ミーナは頷く。


「今回の討伐対象はヒュドラです。」


「ヒュドラ……。」


 グレンの表情が少し変わる。


「五つの首を持つ大型魔物です。」


「五つも?」


 アイリが驚く。


「はい。それぞれの首が別々に攻撃してくるため、通常のパーティだけで相手をするのは非常に危険です。」


「なるほどな。」


 一人が前で抑えれば済む相手ではない。


 首が五つあれば、それだけ攻撃方向も増える。


「それだけじゃないんです。」


 ミーナが続ける。


「ヒュドラの縄張りには、スネーク系の魔物が多数集まっています。」


「蛇か。」


「はい。」


「ヴェノムスネーク、パラライズスネーク、それから大型のジャイアントスネークも確認されています。」


 パラライズスネーク。


 その名前には聞き覚えがある。


「六階層にもいたな。」


「うん。」


 アイリも頷く。


「麻痺させてくる蛇だよね。」


「今回確認されている個体は、六階層にいるものより強い可能性があります。」


「しかも数がいる、と。」


「はい。」


 グレンは腕を組んだ。


 ヒュドラだけでも厄介。


 そこへ大量のスネーク系まで加わる。


「確かに二人じゃ無理だな。」


「だからレイドなんです。」


 ミーナは頷いた。


「複数のパーティで役割を分担します。」


「役割?」


「ヒュドラ本体を抑える班。」


「スネーク系の取り巻きを処理する班。」


「後衛や負傷者を守る班。」


「回復や状態異常への対処を担当する支援班。」


 アイリが少し考える。


「キュアがあるなら、私も役に立てるかな。」


「むしろ、かなり助かると思います。」


 ミーナが即答した。


「毒や麻痺を使う魔物が多いので、状態異常を治せる人は重要です。」


「そっか。」


 アイリは少し嬉しそうに笑う。


「参加条件は?」


「Cランク以上です。」


 ミーナは二人を見る。


「なので、お二人も参加できます。」


「なるほど。」


 グレンはすぐには返事をしなかった。


 二人だけで戦うのとは違う。


 人数が増えれば戦力も増える。


 だが。


 他の冒険者との連携が必要になる。


 誰がどこまで動けるのか。


 どんなスキルを持っているのか。


 それすら分からない。


「いつ?」


 アイリが聞く。


「五日後の予定です。」


「まだ少し時間はあるんだな。」


「はい。」


「参加するかどうかは、それまでに決めていただければ大丈夫です。」


 グレンはアイリを見る。


「どうする?」


「私は……。」


 アイリも少し考える。


「興味はあるかな。」


「俺もだ。」


 危険だから参加しない。


 それだけで決めるつもりはない。


 情報を集めて。


 準備をして。


 それでも危険すぎるなら断ればいい。


「参加するなら、詳しい作戦とかも聞ける?」


「もちろんです。」


「事前に参加者を集めて打ち合わせも行われます。」


「じゃあ。」


 グレンは頷いた。


「参加する方向で考える。」


「分かりました。」


 ミーナが笑顔を見せる。


「正式に参加される場合は、受付で登録してください。」


「ああ。」


 話が終わり。


 二人はギルドを出た。


 朝の街を並んで歩く。


「ヒュドラかぁ。」


 アイリが呟く。


「五つ首って、どんな感じなんだろ。」


「でかそうだな。」


「それはそうだけど。」


「蛇もいっぱいなんだよね。」


「ああ。」


 グレンは少し考える。


「取り巻きが多いなら、やっぱりまとめて攻撃できる手段は欲しいな。」


「だよね。」


 アイリが両手を少し広げる。


「ぶわーって。」


「またそれか。」


「でも今度こそ必要そうでしょ?」


「否定はできない。」


 二人は顔を見合わせて笑う。


 五日後。


 初めてのレイド。


 それまでに何ができるか。


 二人は新しい戦いに向けて、準備を始めることになった。

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