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第45話 ミノタウロス

 巨大な石扉の前。


 グレンはミスリルソードの柄を握り直した。


「準備するか。」


「うん。」


 アイリが杖を構える。


「身体強化。」


 淡い光がグレンを包む。


 続けて。


「防御強化。」


 身体を守る力が高まる。


「クイック。」


 三つ目の光が重なった。


 グレンは軽く足を動かして感覚を確かめる。


「いい感じだ。」


「私にも掛けるね。」


 アイリも自分へ身体強化と防御強化を使う。


 最後に。


「プロテクトオーラ。」


 二人の周囲を淡い光が包んだ。


「これでよし。」


「ああ。」


 グレンは巨大な扉へ手を掛ける。


「行こう。」


「うん。」


 二人で押す。


 ゴゴゴゴゴ……。


 重い音を立てながら、石扉がゆっくりと開いていった。


 その先には巨大な広間が広がっていた。


 石造りの床。


 高い天井。


 そして中央に。


「……でかいな。」


 二本の角。


 牛の頭。


 人間の数倍はありそうな巨体。


 手には巨大な戦斧を持っている。


「鑑定。」



【ミノタウロス】


八階層の階層主。


高い筋力と耐久力を持つ大型魔物。


巨大な戦斧による攻撃は非常に強力。



「やっぱり階層主だね。」


「ああ。」


 ミノタウロスが二人へ顔を向けた。


「ブモオオオオオッ!」


 咆哮。


 空気が震える。


 次の瞬間。


 巨体が動いた。


「来る!」


 速い。


 見た目から想像していたよりも遥かに速かった。


 巨大な戦斧が横薙ぎに振るわれる。


「っ!」


 グレンは正面から受けない。


 バックラーを斜めに合わせる。


 ガギィン!


「ぐっ!」


 受け流した。


 それでも凄まじい衝撃が左腕へ走る。


 グレンの身体が横へ流された。


「グレン!」


「大丈夫!」


 まともに受けたら危ない。


 一撃で分かった。


「ファイアボール!」


 アイリの火球が飛ぶ。


 ミノタウロスの肩へ直撃。


 ボンッ!


 炎が弾ける。


 だが。


「効いてはいるけど……。」


「浅いな!」


 ミノタウロスがアイリへ向く。


「ブモオッ!」


「させるか!」


 グレンが一気に前へ出る。


 身体強化とクイック。


 二つの効果が重なり、巨体の前へ回り込む。


「スマッシュウェーブ!」


 衝撃波。


 ミノタウロスの胸へ直撃する。


 ドンッ!


 巨体がわずかに後ろへ下がった。


「やっぱり頑丈だな。」


 すぐに戦斧が振り下ろされる。


 グレンは横へ跳ぶ。


 ズガァン!


 石床が砕けた。


「これは受けたら駄目だな。」


「うん!」


 アイリも距離を取る。


「ファイアボール!」


 二発目。


 今度は顔を狙う。


 ミノタウロスが腕を上げて防いだ。


 その隙に。


「行く!」


 グレンが懐へ飛び込む。


「パワースラッシュ!」


 ミスリルソードが脇腹を斬り裂く。


「ブモオオッ!」


 血が飛ぶ。


「入った!」


 しかし浅い。


 ミノタウロスが身体をひねる。


「危ない!」


 巨大な腕が振るわれる。


 グレンはバックラーを構える。


 ガンッ!


「うおっ!」


 今度は防ぎきれず、数歩吹き飛ばされた。


「グレン!」


「平気!」


 防御強化とプロテクトオーラがなければ、もっと危なかった。


「やっぱり力が違いすぎる。」


 グレンは立ち上がる。


 ミノタウロスが追ってくる。


 戦斧が振り上げられた。


「アイリ!」


「分かってる!」


「ファイアボール!」


 火球がミノタウロスの顔面へ。


「ブモッ!」


 一瞬だけ動きが止まる。


 グレンはその隙を逃さない。


 懐へ潜り込む。


「連続斬り!」


 一撃。


 二撃。


 太腿を斬る。


 ミノタウロスの身体がわずかに傾いた。


「足を狙う!」


「うん!」


 倒せなくてもいい。


 まずは動きを鈍らせる。


 グレンは距離を取り、再び構える。


 ミノタウロスが怒ったように咆哮した。


「ブモオオオオオッ!」


 そして。


 戦斧を両手で握る。


「来るぞ!」


 大きく振りかぶった。


 真正面。


 グレンへ。


 振り下ろされる。


「っ!」


 避ける。


 ズガァァン!


 床が大きく砕けた。


 戦斧が石床へ食い込む。


「今だ!」


 グレンが走る。


「パワースラッシュ!」


 狙うのは、先ほど斬った太腿。


 ザシュッ!


「ブモオオオッ!」


 ミノタウロスが片膝をついた。


「グレン!」


「ああ!」


 戦斧を引き抜こうとするが、動きが遅い。


 グレンはさらに踏み込む。


「スマッシュウェーブ!」


 至近距離から衝撃波を叩き込む。


 ドンッ!


 ミノタウロスの上体が大きく仰け反った。


「アイリ!」


「ファイアボール!」


 火球が胸へ直撃する。


 爆発。


 炎。


「ブモオオオオオッ!」


 それでも倒れない。


「まだか!」


 ミノタウロスが戦斧を手放した。


 そして巨大な拳を振るう。


 グレンはバックラーで受け流す。


 ガギン!


 身体強化で踏ん張る。


 クイックで次の動きへ繋ぐ。


 拳を外へ逸らした瞬間。


「そこだ!」


 胸が開いた。


「連続斬り!」


 一撃。


 二撃。


 ミスリルソードが深く食い込む。


 ミノタウロスが大きくよろめく。


「もう一発!」


「ファイアボール!」


 アイリの魔法が傷口へ直撃した。


 ボォン!


 ミノタウロスの身体が大きく揺れる。


 そして。


 ドズン。


 巨大な身体が床へ倒れた。


 しばらく。


 二人は動かなかった。


「……終わった?」


 アイリが慎重に近付く。


 グレンは気配察知を使う。


「反応なし。」


「倒した。」


「やった……。」


 アイリが大きく息を吐いた。


 グレンも肩の力を抜く。


「強かったな。」


「うん。」


「でも、ちゃんと倒せた。」


「ああ。」


 二人は顔を見合わせて笑った。


 やがて、広間の奥で音がする。


 ゴゴゴ……。


「宝箱。」


「来たね。」


 二人は近付く。


「罠察知。」


 反応なし。


 グレンが蓋を開けた。


 中には三つ。


 一つ目。


 小型の銀色の盾。


「あ。」


 アイリがそれを見て、グレンの左腕へ視線を向ける。


「これ、二つ目だね。私も使えるかな?」


「試してみるか?」


「うん。」


 アイリは小型の盾を手に取り、左腕へ装着する。


 何度か腕を動かした。


「使えそう。軽いね。」


「ミスリルだからな。」


 アイリは自分の盾を見る。


 それから、グレンのバックラーへ視線を移した。


「……お揃いだね。」


「ああ。」


 グレンは思わず笑った。


 そして二つ目。


 銀色に輝く鎧。


「こっちは俺かな。」


「鑑定してみて。」


「ああ。」


「鑑定。」



【ミスリルアーマー】


ミスリルを使用した高品質な鎧。


高い防御力を持ちながら、同等の鉄製鎧より軽量。



「やっぱり俺用だな。」


「ちょうどよかったね。」


「ああ。」


 グレンは鎧を持ち上げる。


「見た目ほど重くない。」


「これなら動けそう?」


「十分。」


 三つ目は金貨。


「今回も当たりだな。」


「うん。」


 アイリは嬉しそうに、自分の左腕のバックラーをもう一度見る。


「これなら私も少しは自分で守れるね。」


「ああ。」


「でも無理はするなよ。」


「分かってる。」


 アイリが笑う。


「グレンもね。」


「それを言われると何も言えないな。」


 二人は顔を見合わせて笑った。


 こうして。


 二人は八階層の階層主を討伐した。

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