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第43話 魔銀糸

 グレンは崩れかけた石壁へ近付いた。


「この向こうだ。」


 隠し空間感知の反応は間違いない。


 壁の向こうに、それほど大きくない空間が存在している。


「入り口は?」


「探してみよう。」


 二人は周囲を調べ始めた。


 前回は柱に隠された仕掛けがあった。


 今回も同じとは限らない。


 壁。


 床。


 近くに並ぶ石像。


 グレンは一つずつ確認していく。


「あ。」


 アイリが声を上げた。


「これ、動かない?」


 石像が持っている剣だった。


 グレンが柄を握る。


「確かに。」


 少し力を込めると、剣がゆっくりと下がった。


 ゴゴゴゴゴ……。


 石壁の一部が奥へ沈み、そのまま横へ動いていく。


「正解。」


「やった。」


 二人は顔を見合わせて笑う。


 だが、すぐには中へ入らない。


「罠察知。」


 反応。


「ある。」


「やっぱり。」


 入り口の床に仕掛けられていた。


 踏めば何かが作動するのだろう。


 グレンはしゃがみ込む。


「罠解除。」


 仕掛けを確認しながら、一つずつ外していく。


 しばらくして。


 カチッ。


「よし。」


「解除できた。」


「じゃあ入ろう。」


「ああ。」


 二人は慎重に隠し部屋へ入った。


 前回より少し狭い。


 部屋の奥には石台があり、その上に小さな箱が置かれていた。


「宝箱……というより箱だね。」


「そうだな。」


 木製ではなく、金属で作られている。


 グレンは近付く前にもう一度罠察知を使った。


「こっちは大丈夫。」


 箱を開く。


「……糸?」


 中に入っていたのは、銀色に輝く糸の束だった。


 アイリが不思議そうに覗き込む。


「綺麗。」


「でも、普通の糸じゃないよね?」


「たぶんな。」


 グレンは手を伸ばす。


「鑑定。」


 情報が浮かび上がった。



【魔銀糸】


魔力を通しやすい特殊な糸。


非常に軽く、高い強度を持つ。


高級防具や魔道具の素材として使用される。



「魔銀糸。」


「高級素材みたいだ。」


「防具にも使えるんだ。」


「ああ。」


 グレンは一本だけ指先で摘まんでみる。


 細い。


 見た目は普通の糸とほとんど変わらない。


 それなのに、軽く引っ張った程度ではまったく切れる気配がなかった。


「すごいな。」


「これなら軽い防具を作るのに向いてそうだ。」


 アイリは自分のミスリルライトアーマーへ視線を落とした。


「こういうの?」


「たぶん。」


「革の部分に使ったりできるかもしれない。」


「へえ……。」


 アイリは興味深そうに魔銀糸を眺める。


 そして。


「売る?」


 グレンは即答した。


「取っておく。」


「やっぱり?」


 アイリが笑う。


「前のミスリルも取っておいたもんね。」


「ああ。」


「今は加工できないけどな。」


 グレンは魔銀糸を箱ごとマジックバッグへしまった。


「こういう珍しい素材は、必要になってから探す方が大変だ。」


「使える時が来るまで置いておこう。」


「うん。」


 二人は隠し部屋を出る。


 グレンは入り口を振り返った。


「隠し空間感知を選んで正解だったな。」


「もう二回も見つけたもんね。」


「ああ。」


「これだけでも十分元は取れた。」


 二人は再び古代遺跡を進み始める。


 少し歩いたところで、アイリが口を開いた。


「ねえ、グレン。」


「ん?」


「さっきの戦いのことなんだけど。」


「ああ。」


「やっぱり、まとめて攻撃できる魔法があったら便利だよね。」


「そうだな。」


 七体を相手にした戦い。


 勝つことはできた。


 しかし、一体ずつ倒していたため時間が掛かった。


「俺も欲しい。」


「スマッシュウェーブとは違って、周りをまとめて攻撃できる剣技があれば助かる。」


「私も。」


 アイリは少し考える。


「風の魔法とかだったら、たくさんの敵をまとめて攻撃できそう。」


「風か。」


「うん。」


「こう……。」


 アイリは両手を広げる。


「ぶわーって。」


「説明が雑だな。」


「だって、まだ使えないもん。」


「それもそうか。」


 二人は笑う。


 欲しいと思っても、どんなスキルが生まれるかは分からない。


 それがスキルブック合成だった。


「まあ、そのうち出たらいいな。」


「うん。」


 グレンは気配察知を使いながら先へ進む。


 古代遺跡は、まだまだ奥へ続いていた。

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