第36話 初めての依頼
Cランクへ昇格した翌日。
グレンとアイリは、いつものように冒険者ギルドを訪れていた。
「おはようございます。」
受付のミーナが微笑む。
「ギルド長がお待ちです。」
「また?」
グレンは少し驚きながらも頷いた。
「分かりました。」
二人は応接室へ向かう。
部屋へ入ると、ガレスが席を立った。
「急に呼び出してすまない。」
「いえ。」
「何かありましたか?」
グレンが尋ねる。
ガレスは机の上へ、一つの木箱を置いた。
蓋を開ける。
中には白いスキルブックが二十冊並んでいた。
「これは……。」
「白のスキルブックだ。」
「ギルドでは討伐品として買い取ることも多い。」
「だが、価値が低いものは売れ残り、倉庫に眠ったままになることも珍しくない。」
グレンは木箱を見つめた。
「そこで、一つ依頼したい。」
ガレスは真っ直ぐグレンを見る。
「君のユニークスキルで、これらを合成してもらえないだろうか。」
グレンは少し考えた。
「報酬はありますか?」
「もちろんだ。」
ガレスは頷く。
「今回は試験的な依頼にしたい。」
「白二十冊を合成すれば、緑十冊。」
「さらに合成すれば、青五冊になる。」
「そのうち四冊はギルドへ納品してほしい。」
「残る一冊は、報酬として君たちのものだ。」
グレンは静かに口を開く。
「一つだけ。」
「合成結果は選べません。」
「同じスキルができることもあります。」
「期待どおりにならなくても、それでよければ。」
ガレスは穏やかに笑った。
「構わない。」
「白のまま眠らせておくより、価値は遥かに高い。」
「分かりました。」
「お引き受けします。」
ガレスは木箱をグレンの前へ押し出した。
「もし構わなければ、この場で合成してもらえないだろうか。」
「結果を、この目で見てみたい。」
グレンはアイリを見る。
アイリは小さく頷いた。
「私はいいよ。」
「では。」
グレンは白いスキルブックを二冊重ねる。
淡い光が部屋を包み込む。
光が消えると、一冊の緑のスキルブックが机の上へ残った。
「……これが合成か。」
ガレスが静かに呟く。
グレンはそのまま作業を続けた。
白二十冊は緑十冊へ。
さらに緑十冊は青五冊へ。
最後の光が消える。
机の上には五冊の青いスキルブックが並んでいた。
グレンは一冊ずつ説明を確認していく。
「剛力。」
「マジックアロー。」
「火炎耐性。」
「鑑定。」
そして最後の一冊を開く。
「……隠し空間感知。」
グレンの表情が少しだけ変わった。
「どんなスキルですか?」
アイリが尋ねる。
「隠し通路や隠し部屋など、隠された空間を感知できるらしい。」
「そんなスキルまであるんだ。」
アイリは驚いたように目を丸くする。
ガレスも興味深そうに頷いた。
「どれも優秀な青スキルだ。」
「さすがは青ランクのスキルブックだな。」
グレンは五冊を見比べる。
ガレスが静かに言った。
「約束どおり、一冊は君たちの報酬だ。」
「好きなものを選んでくれ。」
グレンは迷わなかった。
隠し空間感知のスキルブックを手に取る。
「これをいただきます。」
ガレスは少し意外そうな表情を浮かべた。
「攻撃系ではなく、それを選ぶのか。」
グレンは笑って頷く。
「俺たちは強い魔物を倒すより、安全に帰る方が大事なんです。」
「隠し部屋を見つけられれば、危険な場所を無闇に探し回らずに済みます。」
「今の俺たちには、一番価値のあるスキルです。」
一瞬の静寂。
やがてガレスは小さく笑った。
「なるほど。」
「やはり君らしい選択だ。」
グレンは隠し空間感知のスキルブックを使う。
青い光が身体へ溶け込み、新たな知識が刻まれた。
ガレスは残る四冊を大切そうに木箱へ戻す。
「これで正式に依頼完了だ。」
「ありがとう。」
「こちらこそ。」
グレンは笑顔で答えた。
初めての合成依頼は、互いに満足のいく結果となった。




