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第35話 ギルド長

 グレンとアイリは七階層を後にすると、そのままフォルン冒険者ギルドへ向かった。


「お帰りなさい。」


 受付ではミーナが笑顔で迎えてくれる。


「七階層はいかがでしたか?」


「ああ。」


 グレンは討伐証明を机へ並べた。


「七階層を攻略した。」


「それから……。」


 マジックバッグからアルファウルフの討伐証明を取り出す。


 ミーナは目を見開いた。


「アルファウルフ……!」


「七階層の階層主ですね。」


「ああ。」


「無事に倒せた。」


 ミーナは討伐証明を確認し、大きく頷いた。


「確認いたしました。」


「これで七階層攻略が認定されます。」


「おめでとうございます。」


 グレンとアイリは顔を見合わせ、小さく笑った。


「そして。」


 ミーナはギルドカードを受け取る。


「七階層攻略により、お二人はCランクへ昇格となります。」


「おめでとうございます。」


「ありがとうございます。」


「ギルドカードを更新いたしますので、少々お待ちください。」


 二人からカードを受け取り、受付奥の部屋へ入っていく。


 専用の魔道具へギルドカードを置く。


 淡い光がカードを包み込んだ。


 その瞬間だった。


「……これは。」


 ミーナの表情が固まる。


 表示された内容を見つめたまま、小さく息を呑む。


 すぐ近くにいた男性が、その様子に気付いた。


「どうした。」


 落ち着いた低い声。


 フォルン冒険者ギルド長、ガレスだった。


「ギルド長……。」


 ミーナは小声で事情を説明する。


 ガレスは黙ってカードへ目を向けた。


 数秒後。


 静かに頷く。


「……分かった。」


「この更新は私が引き継ぐ。」


「はい。」


 ガレスは二枚のギルドカードを手に取る。


「グレンさんとアイリさんを、応接室へご案内してください。」


「かしこまりました。」


 ミーナは受付へ戻る。


「グレンさん、アイリさん。」


「ギルド長がお話ししたいことがあるそうです。」


「私たちに?」


 グレンが首を傾げる。


「はい。」


 二人は案内され、応接室へ入った。


 しばらくすると、一人の壮年の男性が入ってくる。


 短く刈り込まれた白髪。


 歴戦の冒険者を思わせる鋭い眼差し。


 しかし、その表情は穏やかだった。


「初めまして。」


「フォルン冒険者ギルド長のガレスだ。」


「グレンです。」


「アイリです。」


 三人は席へ着く。


 ガレスは二人のギルドカードを机へ置いた。


「まず安心してほしい。」


「君たちは何も悪いことをしていない。」


 グレンとアイリは顔を見合わせる。


「では、どうして……。」


 グレンが尋ねる。


 ガレスは一枚のカードへ視線を落とした。


「ギルドカードは、更新時のみ専用の魔道具で詳細情報を確認できる。」


「普段は名前とランクしか表示されない。」


「だが、更新時だけは違う。」


 ガレスは静かに続ける。


「ジョブ。」


「レベル。」


「習得スキル。」


「そして、ユニークスキル。」


 部屋が静まり返る。


「君のユニークスキル。」


「『スキルブック合成』」


「私は長年ギルド長を務めてきたが、この名を見るのは初めてだ。」


 グレンはゆっくり息を吐いた。


「……やっぱり分かりますか。」


「ああ。」


 ガレスは頷く。


「さらに、この短期間で増えたスキルの数。」


「偶然とは思えなかった。」


 アイリは少し不安そうな表情を浮かべる。


「誰かに知られてしまうんでしょうか……。」


「いや。」


 ガレスは首を横に振った。


「更新内容を確認できるのは、その場の担当者と私だけだ。」


「そして、この情報は私の権限で機密扱いにする。」


 二人は驚いたように顔を上げた。


「機密扱い……。」


「君たちの力は貴重すぎる。」


「もし外へ漏れれば、貴族や大商会、あるいは国そのものが動く可能性もある。」


「私はそんな事態にはしたくない。」


 ガレスは二人を真っ直ぐ見つめた。


「だから約束してほしい。」


「この力を、信頼できる相手以外には話さないこと。」


 グレンは迷わず頷く。


「もちろんです。」


「俺たちも、そのつもりでした。」


「私もです。」


 アイリも続けた。


 ガレスは満足そうに微笑む。


「それなら安心だ。」


「改めて。」


 ガレスは二人へ新しいギルドカードを差し出した。


「Cランク昇格、おめでとう。」


 カードには、新しく刻まれた文字が輝いていた。


 【Cランク】


 グレンはカードを見つめ、小さく笑う。


「やっと、ここまで来たな。」


 アイリも嬉しそうに頷いた。


「うん。」


「これからも、安全第一だね。」


「ああ。」


 二人は新しいギルドカードを大切にしまう。


 新たなランク。


 新たな力。


 そして、新たな秘密。


 二人の冒険は、ここからさらに大きく動き始めようとしていた。

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