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第33話 七階層の最奥

 翌朝。


 グレンとアイリは、いつものように冒険者ギルドへ立ち寄ると、そのまま七階層へ向かった。


 青白い鉱石が淡く輝く通路を進む。


 グレンは気配察知を使いながら周囲を警戒する。


「反応。」


 小さく呟いた。


「三体。」


「昨日と同じ狼?」


「ああ。」


「少し先だ。」


 二人は慎重に距離を詰める。


 曲がり角の先には、三体のウルフが歩き回っていた。


「クイック。」


 アイリの支援魔法がグレンを包む。


 身体が軽くなる。


「行く。」


 グレンが一気に踏み込んだ。


「スマッシュウェーブ!」


 衝撃波が一体のウルフへ命中する。


 体勢を崩したところへ距離を詰める。


「連続斬り!」


 二撃で一体目を倒す。


 残る二体が左右へ散開しながら飛び掛かってくる。


「速い!」


 だが、クイックで強化されたグレンは一歩先に動く。


 左のウルフをかわし、その勢いのまま剣を振る。


「パワースラッシュ!」


 重い一撃が二体目を吹き飛ばした。


 最後の一体は距離を取ろうとする。


「逃がさない。」


 グレンは素早く踏み込み、連続斬りで仕留めた。


「クイック、すごいね。」


 アイリが嬉しそうに笑う。


「ああ。」


「狼相手なら特に相性がいい。」


 二人は討伐証明を回収し、さらに奥へ進んだ。


 しばらく歩いたところで、グレンが立ち止まる。


「罠。」


 床へ視線を向ける。


 細いワイヤーが張られていた。


「解除してみる。」


 グレンはしゃがみ込み、慎重に仕掛けを確認する。


 固定具を一本ずつ外し、最後の留め具を外す。


 カチッ。


 小さな音を立てて罠が停止した。


「できた。」


「すごい。」


 アイリが笑顔で拍手する。


「これなら安心して進めるね。」


「ああ。」


 二人は再び歩き始めた。


 その時だった。


 グレンが右手を上げる。


「止まって。」


 気配察知に反応があった。


「一体。」


「昨日の……。」


「ああ。」


 二人は岩陰からそっと様子を窺う。


 そこには黒に近い毛並みを持つ、一回り大きな狼が歩いていた。


 グレンは小さく呟く。


「鑑定。」


 視界へ文字が浮かぶ。



【シャドウウルフ】


七階層に生息する上位種。


高い敏捷性を持ち、通常のウルフより優れた身体能力を誇る。



「今度は忘れなかったね。」


 アイリが小さく笑う。


 グレンも苦笑する。


「ああ。」


「昨日の反省だ。」


 ミスリルソードを静かに抜く。


「行こう。」


「うん。」


 アイリはグレンへクイックを掛ける。


 シャドウウルフが二人へ気付いた。


 低く唸る。


 そして一瞬で距離を詰めてきた。


「速い!」


 昨日見た時より、その速さを実感する。


 だが。


 クイックを受けたグレンも負けてはいない。


 横へ避けながら剣を振るう。


「スマッシュウェーブ!」


 衝撃波が命中する。


 しかし、シャドウウルフは体勢を崩しながらもすぐ立て直した。


「やっぱり普通のウルフより強い!」


 アイリがファイアボールを放つ。


 火球が命中した隙に、グレンが一気に踏み込む。


「連続斬り!」


 二撃。


 さらに。


「パワースラッシュ!」


 重い一撃がシャドウウルフを吹き飛ばした。


 身体が光へ変わり、静かに消えていく。


「勝った。」


 アイリがほっと息を吐く。


「ああ。」


 グレンは討伐証明を拾い上げる。


 その近くには、一冊の青いスキルブックが落ちていた。


「青?」


 アイリが目を丸くする。


「上位種だからかな。」


 グレンは青いスキルブックをマジックバッグへしまった。


 二人はさらに奥へ進む。


 そして。


 巨大な石扉が姿を現した。


 石扉には、大きな狼の紋章が刻まれている。


 グレンはゆっくりとその扉を見上げた。


「ここが七階層の最奥か。」


 アイリも静かに頷く。


「次はいよいよボスだね。」


「ああ。」


 グレンはミスリルソードの柄を握り直した。


 二人は顔を見合わせ、小さく頷く。


 七階層最後の戦いは、もう目の前まで迫っていた。

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