第32話 新たな力
ギルドを出た二人は、そのまま新しい借家へ戻った。
夕食を済ませ、お風呂へ入り、一息つく。
グレンは寝室の隅に置いてある木箱を机へ運んだ。
「また増えたな。」
木箱の中には、探索で手に入れたスキルブックが並んでいる。
白いスキルブック。
緑のスキルブック。
少しずつだが、確実に増えていた。
「今日も合成する?」
アイリが嬉しそうに尋ねる。
「ああ。」
「溜め込んでも仕方ないからな。」
二人は説明を読み、必要ないと判断した白いスキルブックから順番に合成していく。
淡い光が何度も部屋を包み、新しい緑のスキルブックが生まれていく。
やがて、机の上には合成に使えそうな緑のスキルブックが並んだ。
「次は緑だな。」
グレンは二冊を重ねる。
青い光が静かに部屋を照らした。
一冊の青いスキルブックが机の上へ現れる。
「青だ!」
アイリが嬉しそうに声を上げる。
グレンは表紙を開いた。
「……クイック。」
「どんなスキル?」
アイリも説明を覗き込む。
『対象一人の敏捷性を一定時間上昇させる。』
「支援魔法だな。」
グレンは本をアイリへ差し出した。
「これはアイリが覚えた方がいい。」
「うん。」
アイリは迷わずスキルブックを使う。
青い光が身体へ溶け込み、新しい魔法が刻まれた。
「また新しい魔法を覚えちゃった。」
嬉しそうに笑うアイリを見て、グレンも笑みを浮かべる。
「次の探索が楽しみだな。」
「あ。」
アイリが木箱を見つめる。
「もう一回できそう。」
「ああ。」
グレンは残っていた緑のスキルブックを二冊手に取った。
再び青い光が部屋を包む。
現れた青いスキルブックを開く。
「鑑定。」
「また同じの?」
「ああ。」
「説明も同じだな。」
グレンは苦笑する。
「同じスキルができることもあるんだね。」
アイリが感心したように言う。
「ああ。」
「全部が新しいスキルってわけじゃないらしい。」
グレンは鑑定のスキルブックを木箱へ戻した。
「これは次の合成材料にしよう。」
「うん。」
アイリも頷く。
グレンは木箱の中を見つめた。
「あと一回くらいはできそうだな。」
「やってみよう。」
アイリも笑顔で頷く。
残っていた緑のスキルブックを二冊重ねる。
青い光が静かに部屋を包んだ。
光が消えると、一冊の青いスキルブックが机の上へ落ちる。
「また青!」
アイリが目を輝かせる。
グレンはゆっくり表紙を開いた。
「……罠解除。」
「解除?」
アイリも説明を読む。
『発見した罠を安全に解除できる。』
グレンは小さく笑った。
「これは俺だな。」
「うん。」
「罠察知と相性が良さそう。」
グレンは迷わずスキルブックを使う。
青い光が身体へ溶け込み、新しい知識が頭へ流れ込んできた。
「これで見つけるだけじゃなくなるね。」
「ああ。」
グレンは木箱の蓋を閉めようとして、ふと手を止めた。
「あ……。」
「どうしたの?」
アイリが首を傾げる。
グレンは苦笑しながら頭を掻いた。
「さっきの七階層の狼。」
「鑑定すれば良かった。」
一瞬、部屋が静かになる。
「あ……。」
アイリも目を丸くした。
「本当だ。」
二人は顔を見合わせる。
「「あはははっ!」」
思わず声を上げて笑ってしまう。
「せっかく覚えたのに。」
「すっかり忘れてたね。」
「ああ。」
グレンは肩をすくめて笑う。
「次は忘れないようにしよう。」
「うん。」
二人は笑顔で頷き合った。
予想どおりにはいかない合成。
そして、思わぬうっかり。
そんな毎日も、二人にとっては楽しい思い出になっていくのだった。




