第29話 七階層の洗礼
七階層へ足を踏み入れた二人は、慎重に通路を進んでいた。
壁に埋め込まれた青白い鉱石が周囲を淡く照らしている。
「明るいね。」
アイリが周囲を見回した。
「ああ。」
「松明がなくても歩けそうだ。」
グレンも頷く。
しかし、気を緩めることはない。
気配察知を使いながら、一歩ずつ進んでいく。
その時だった。
「止まって。」
グレンが小さく声を掛けた。
「反応がある。」
「何体?」
「三体。」
「少し離れてる。」
アイリもすぐに杖を構える。
「行こう。」
二人は気配のする方向へ慎重に近付いた。
曲がり角からそっと覗く。
「……あれは。」
アイリが小さく呟く。
そこにいたのは、灰色の毛並みをした狼だった。
三体ともこちらにはまだ気付いていない。
「狼か。」
グレンは小さく息を吐く。
「初めて見る魔物だな。」
「どうする?」
「まずは一体ずつ。」
「無理はしない。」
「うん。」
アイリは頷き、杖を構えた。
「ファイアボール。」
火球が一直線に飛ぶ。
一体の狼へ命中した。
ギャンッ!
悲鳴と同時に、残る二体も一斉にこちらを向く。
「来る!」
三体が一斉に駆け出した。
オークより速い。
「速いね!」
「ああ!」
グレンは前へ出る。
「パワースラッシュ!」
重い一撃が先頭の狼を吹き飛ばした。
だが、残る二体は止まらない。
左右へ分かれ、グレンを挟み込もうとする。
「囲もうとしてる!」
アイリが叫ぶ。
「頭がいいな。」
グレンはすぐに後ろへ下がる。
「壁を背にする!」
二人は壁際まで移動する。
これで後ろを取られることはない。
「ファイアボール!」
火球が二体目へ命中。
その隙にグレンが踏み込む。
「連続斬り!」
二撃で二体目を倒す。
最後の一体は仲間が倒されたのを見ると、一瞬だけ動きを止めた。
「今!」
グレンは迷わない。
「パワースラッシュ!」
最後の一撃が狼を吹き飛ばし、そのまま光へ変えた。
静けさが戻る。
アイリは大きく息を吐いた。
「オークより弱い。」
「でも。」
「動きが全然違うね。」
「ああ。」
グレンも頷く。
「囲まれたら危なかった。」
「七階層は力だけじゃ駄目だ。」
「立ち回りも考えないと。」
討伐証明を拾いながら、アイリが微笑む。
「気配察知があって良かったね。」
「ああ。」
「先に気付けなかったら、不意打ちされていた。」
グレンはミスリルソードを鞘へ納めた。
「まだ七階層は始まったばかりだ。」
「もっと強い魔物もいるだろう。」
「うん。」
二人は周囲を警戒しながら歩き出す。
新しい階層には、新しい魔物がいる。
そして、その数だけ新しい発見がある。
二人は一歩ずつ七階層を進みながら、少しずつこの階層に慣れていくのだった。




