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第28話 七階層へ

 翌朝。


 グレンは目を覚ますと、しばらく天井を見つめていた。


「静かだな。」


 隣ではアイリがまだ眠っている。


 隙間風の音もない。


 床が軋む音も聞こえない。


 昨日まで当たり前だった古い借家とは、まるで違っていた。


 思わず笑みがこぼれる。


「本当に引っ越したんだな。」


 やがてアイリも目を覚ました。


「おはよう。」


「おはよう。」


 アイリは嬉しそうに部屋を見回す。


「何だか夢みたい。」


「昨日、お風呂に入ったのに。」


「朝起きてもまだここだった。」


 グレンは思わず吹き出した。


「夢じゃないさ。」


「俺たちの家だ。」


 アイリは照れくさそうに笑った。


「えへへ。」



 朝食を終えた二人は、いつものように冒険者ギルドへ向かった。


「おはようございます!」


 ミーナが笑顔で迎えてくれる。


「引っ越し、おめでとうございます。」


「ありがとう。」


 グレンが笑う。


「昨日はお世話になった。」


「いえ。」


「そういえば。」


 ミーナは依頼書を一枚取り出した。


「六階層を攻略したお二人なら、七階層の依頼も受けられます。」


 グレンは依頼書へ目を向ける。


『七階層調査依頼』


「調査?」


「はい。」


「七階層へ入れるようになったばかりの冒険者向けの依頼です。」


「魔物を何体倒す、といった依頼ではありません。」


「七階層を探索し、安全に戻ってきていただければ達成です。」


 アイリが少し安心したように言う。


「いきなり討伐じゃないんだね。」


「はい。」


「七階層は未知の部分も多いですから。」


「まずは地形や魔物を知ることが大切なんです。」


 グレンは依頼書を受け取った。


「俺たちに合ってるな。」


「安全第一ですから。」


 ミーナも笑顔で頷く。



 ダンジョン入口。


 グレンはミスリルソードへ手を添える。


「行こうか。」


「うん。」


 二人は六階層を抜け、初めて七階層へ続く石階段を下りていく。


 やがて景色が変わった。


「これは……。」


 アイリが思わず足を止める。


 七階層は六階層とはまったく違っていた。


 天井は高く、壁には青白く輝く鉱石が無数に埋め込まれている。


 淡い光が通路全体を照らし、幻想的な景色を作り出していた。


「綺麗……。」


「ああ。」


 グレンも思わず見とれる。


 だが、その表情はすぐに引き締まる。


「景色に見惚れるのは後だ。」


「まずは気配察知。」


 目を閉じる。


 しばらく集中したあと、小さく頷いた。


「今のところ魔物はいない。」


「良かった。」


「でも。」


 グレンはゆっくり周囲を見渡した。


「六階層とは空気が違う。」


「ああ。」


「ここからが本当の挑戦だ。」


 二人はゆっくりと七階層への第一歩を踏み出した。

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