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第27話 約束の家

 翌日。


 朝食を食べ終えたグレンは、木箱の中の金貨を机へ並べていた。


 昨日手に入れたボス報酬。


 これまで少しずつ貯めてきた貯金。


 一枚ずつ数えていく。


「結構あるね。」


 アイリが隣で微笑む。


「ああ。」


 グレンも頷いた。


「今なら約束を守れそうだ。」


「約束?」


「忘れたのか?」


 グレンが笑う。


「お風呂付きの家だ。」


 その言葉に、アイリの表情がぱっと明るくなった。


「本当に?」


「ああ。」


「今日は依頼を休もう。」


「家を探しに行く。」


「やった!」



 二人は不動産屋を訪れた。


 年配の男性店主が笑顔で迎えてくれる。


「借家をお探しで?」


「ああ。」


 グレンは頷いた。


「夫婦二人で住める家を探してる。」


「予算はこのくらいです。」


 金貨を見せると、店主は少し考え込んだ。


「それでしたら。」


「ちょうど空いた家があります。」


「見に行きますか?」


「お願いします。」



 案内された家は、今の借家より少しだけ街の中心へ近かった。


「ここです。」


 扉を開ける。


 中は決して広くない。


 だが。


「綺麗……。」


 アイリが思わず呟いた。


 床も新しく、窓もしっかり閉まる。


 そして。


「グレン!」


 アイリが嬉しそうに手招きする。


「見て!」


 案内された先には、小さな浴室があった。


「お風呂!」


 木製の浴槽。


 決して大きくはない。


 それでも、二人だけで入るには十分だった。


「これなら毎日入れるね。」


 アイリは本当に嬉しそうだった。


 グレンはそんな姿を見て笑う。


「気に入ったか?」


「うん!」


「すごく!」


 店主も嬉しそうに頷いた。


「この家でしたら、今のお二人でも無理なく借りられますよ。」


 グレンはもう一度部屋を見渡した。


 隙間風はなさそうだ。


 屋根もしっかりしている。


 冬でも安心して暮らせる。


「ここにします。」


「ありがとうございます。」



 その日のうちに荷物を運び終えた。


 といっても、荷物はそれほど多くない。


 机。


 椅子。


 ベッド。


 食器。


 服。


 二人で運べば、夕方には終わってしまった。


「終わったね。」


「ああ。」


 グレンは新しい家を見回す。


「なんだか、まだ実感がないな。」


 その時。


 アイリが少し照れながら言った。


「ねぇ。」


「お風呂……入ってきてもいい?」


 グレンは思わず笑う。


「もちろん。」


「今日からこの家のお風呂だからな。」


「ありがとう!」


 アイリは嬉しそうに浴室へ向かっていった。



 しばらくして。


「ふぅ……。」


 頬を少し赤くしたアイリが戻ってくる。


「どうだった?」


 グレンが尋ねる。


 アイリは幸せそうに微笑んだ。


「すごく温かかった。」


「誰にも気を使わなくていいし。」


「好きなだけ入れる。」


「それに。」


 少し照れながら続ける。


「やっぱり家のお風呂っていいね。」


 グレンも自然と笑顔になる。


「そうか。」


「約束、守れたな。」


「うん。」


 アイリは何度も頷いた。


「ありがとう。」


 その一言だけで十分だった。


 グレンは、この家を借りて本当に良かったと思えた。


 豪華な屋敷ではない。


 広い家でもない。


 それでも。


 二人で笑って暮らせる場所がある。


 それが今は、何より幸せだった。


 窓の外では夕日が街を優しく照らしている。


 新しい家。


 新しい生活。


 そして次はいよいよ、七階層への挑戦が始まるのだった。

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