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第26話 ボスの宝箱

 オークナイトが光となって消える。


 静まり返ったボス部屋の中央には、一つの宝箱だけが残されていた。


「やっぱり。」


 グレンが小さく笑う。


「ボスを倒すと宝箱が出るんだね。」


 アイリも嬉しそうに頷いた。


「初めてだから、ちょっと緊張する。」


 二人は慎重に宝箱へ近付く。


 罠察知を発動する。


「……罠はない。」


「開けても大丈夫そう?」


「ああ。」


 グレンはゆっくりと蓋を持ち上げた。


 ギィッ――。


 宝箱の中から、柔らかな銀色の光が溢れる。


「これは……。」


 最初に入っていたのは、一振りの剣だった。


 銀色に輝く美しい刀身。


 見ただけで普通の鉄ではないと分かる。


「綺麗……。」


 アイリが思わず声を漏らす。


 グレンはそっと剣を持ち上げた。


 驚くほど軽い。


 それでいて、しっかりとした重みも感じる。


「使いやすそうだ。」


 続いて宝箱から取り出したのは、一振りの杖。


 先端には青い魔石が埋め込まれている。


「杖まで。」


 アイリは目を丸くした。


「私かな?」


「たぶん。」


 グレンは笑う。


「二人で倒したボスだからな。」


「二人へのご褒美なんだろう。」


 最後に、小さな革袋を取り出す。


 口を開くと、金貨が音を立てた。


 ジャラッ。


「金貨だ。」


 アイリが驚いたように言う。


「こんなにもらっていいの?」


「ボスだからな。」


 グレンも嬉しそうに笑った。


「今日は大当たりだ。」



 フォルンへ戻ると、二人はそのまま冒険者ギルドへ向かった。


「お帰りなさい。」


 ミーナは笑顔で迎えたが、グレンが背中に背負った剣を見た瞬間、その笑顔が固まる。


「そ、その剣は……。」


 グレンは苦笑した。


「ボス部屋の宝箱に入ってた。」


 続いてアイリも杖を見せる。


「私のはこれ。」


 ミーナは目を丸くしたまま、何度も装備を見比べる。


「間違いありません。」


「ミスリルソードと、ミスリルスタッフです。」


「そんな名前なんだ。」


「はい。」


「どちらも、とても貴重な装備ですよ。」


 グレンは少し驚いたように剣を見つめる。


「そんなにか?」


「普通の冒険者では、なかなか手に入りません。」


「高価なのもありますが、ボス宝箱からしか見つからない装備も多いんです。」


「そうなのか。」


 ミーナは嬉しそうに頷いた。


「六階層を攻略した証ですね。」


「おめでとうございます。」


「ありがとうございます。」


 二人は笑顔で頭を下げた。



 ギルドを出た帰り道。


 グレンは腰に差したミスリルソードを軽く抜く。


 朝まで使っていた鉄の剣とは、明らかに違う。


「軽いな。」


「でも、丈夫そう。」


 アイリも新しい杖を握りしめる。


「魔力も流しやすい気がする。」


「次の探索が楽しみだね。」


「ああ。」


 グレンは頷いた。


「これなら、パワースラッシュも安心して使えそうだ。」


 鉄の剣には、少しずつ刃こぼれが増えていた。


 強くなるほど、武器も強くなければ戦えない。


 それを今回の戦いで実感した。


「装備も。」


 グレンは空を見上げる。


「少しずつ良くしていこう。」


「うん。」


 アイリも笑顔で頷く。


 六階層を制覇し、新しい装備も手に入れた。


 そして次に待っているのは――。


 七階層。


 新たな挑戦への準備は、着実に整いつつあった。

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