第25話 六階層の主
翌朝。
グレンとアイリは、いつものように六階層へ向かっていた。
「今日は奥まで行くんだよね。」
アイリが少し緊張した表情で尋ねる。
「ああ。」
グレンは頷く。
「六階層にも慣れてきた。」
「そろそろ最奥を見ておきたい。」
「無理はしないよ?」
「もちろん。」
「危ないと思ったら引き返す。」
それが二人の約束だった。
◇
六階層を慎重に進む。
気配察知のおかげで待ち伏せされることもなく、オークソルジャーやパラライズスネークを危なげなく倒していく。
「ずいぶん楽になったね。」
「ああ。」
「前は待ち伏せだけでも神経を使ってたからな。」
やがて。
大きな石扉が見えてきた。
「これは……。」
グレンは立ち止まる。
「今まで見たことないね。」
アイリも小さく息を呑んだ。
石扉には、大きな剣と盾の紋章が刻まれている。
「ボス部屋かな。」
「たぶん。」
二人は顔を見合わせる。
「帰る?」
アイリが尋ねる。
グレンは少しだけ考えた。
「いや。」
「扉を開けて、危険そうなら逃げよう。」
「うん。」
二人はゆっくりと石扉を押した。
重い音を立てながら、扉が開いていく。
◇
広い空間。
中央には、一体の大きなオークが立っていた。
普通のオークより一回り大きい。
全身を金属鎧で覆い、大きな盾と長剣を構えている。
「オークナイト……。」
グレンは静かに呟いた。
その瞬間。
オークナイトがゆっくりとこちらを向いた。
「グオオオオオォッ!!」
低い咆哮が部屋中へ響く。
「来る!」
グレンが剣を抜く。
オークナイトは一直線に突進してきた。
ガァン!!
盾が振り抜かれる。
「重っ!」
グレンは受け流したものの、大きく後ろへ押し込まれる。
「身体強化!」
「防御強化!」
アイリの支援魔法が飛ぶ。
身体が軽くなる。
「ありがとう!」
グレンはすぐに距離を詰める。
「パワースラッシュ!」
重い斬撃が盾へ命中する。
ドゴォッ!!
しかし。
オークナイトは数歩後退しただけだった。
「止まった!?」
グレンが驚く。
「今までみたいに吹き飛ばない!」
「やっぱり強い!」
アイリも表情を引き締める。
「ファイアボール!」
火球が鎧へ命中する。
だが。
オークナイトは怯みながらも前へ出てくる。
「硬いな……。」
グレンは笑った。
「でも。」
「効いてないわけじゃない。」
オークナイトが剣を振り下ろす。
グレンは横へ避ける。
そこへ。
「ファイアボール!」
アイリの火球。
一瞬だけ視線が逸れた。
「今だ!」
グレンは盾の外側へ回り込む。
「連続斬り!」
二連撃が鎧の隙間を捉えた。
オークナイトが苦しそうに声を上げる。
さらに。
「パワースラッシュ!」
今度は盾ではなく、剣を持つ腕へ叩き込む。
ドンッ!!
長剣が大きく弾かれた。
「今!」
「うん!」
アイリが最後のファイアボールを放つ。
火球が胸へ命中した瞬間。
グレンが全力で踏み込んだ。
「これで終わりだぁぁっ!!」
連続斬り。
一撃。
二撃。
三撃。
オークナイトの身体が大きく揺れる。
やがて。
静かに光へ包まれた。
◇
部屋に静寂が戻る。
「勝った……。」
アイリがその場へ座り込む。
「勝ったな。」
グレンも大きく息を吐いた。
今までで一番強い敵だった。
だが。
二人で積み重ねてきた経験と、新しく覚えたスキルが勝利へ導いてくれた。
その時だった。
オークナイトが消えた場所へ、一つの宝箱が現れる。
「宝箱?」
アイリが目を丸くする。
グレンも慎重に近付いた。
「ボスだからか。」
「開けてみよう。」
二人は顔を見合わせ、小さく頷いた。




