第24話 少しずつ増える貯金
六階層での探索を終えた二人は、夕方にはフォルンへ戻っていた。
冒険者ギルド。
「お帰りなさい。」
受付では、ミーナが笑顔で迎えてくれる。
「依頼達成です。」
グレンは討伐証明を机へ並べた。
オークソルジャー。
パラライズスネーク。
どちらも規定数そろっている。
ミーナは一つずつ確認し、笑顔で頷いた。
「確認しました。」
「どちらも達成です。」
「ありがとうございます。」
報酬の入った革袋を受け取り、グレンはその重さに少し驚いた。
「結構あるな。」
「六階層は危険ですからね。」
ミーナが微笑む。
「その分、報酬も高くなっています。」
「助かるよ。」
グレンは素直に礼を言った。
◇
帰り道。
二人は市場へ向かった。
「今日は何を買おうか。」
アイリが嬉しそうに尋ねる。
「昨日も頑張ったし。」
「今日は少し贅沢しよう。」
グレンも笑う。
「そうだな。」
「肉も買おう。」
「本当?」
「ああ。」
精肉店で少し厚めの肉を買う。
さらに新鮮な野菜や果物も籠へ入れた。
「こんなに買って大丈夫?」
「まだ余る。」
革袋の中を見ながら、グレンは笑った。
「六階層へ潜るようになってから、一気に余裕が出てきたな。」
「本当だね。」
アイリも嬉しそうだった。
◇
家へ戻ると、夕食の準備を始める。
肉が焼ける音と香ばしい匂いが部屋いっぱいに広がる。
「いただきます。」
「いただきます。」
二人は笑顔で食卓を囲んだ。
「やっぱり美味しい。」
アイリは幸せそうに微笑む。
「久しぶりにこんなにお肉を食べたね。」
「ああ。」
グレンも頷く。
「こういう時間のために頑張ってるんだ。」
食事を終えたあと。
グレンは寝室の隅に置いてある小さな木箱を持ってきた。
中には少しずつ貯めてきた金貨や銀貨が入っている。
今日の報酬を加える。
チャリン、と心地よい音が響いた。
「結構増えたね。」
アイリが箱を覗き込む。
「ああ。」
グレンは嬉しそうに頷いた。
「そろそろ引っ越しも考えられそうだ。」
「本当に?」
「ああ。」
「持ち家はまだ無理だけど。」
「もう少し住みやすい借家くらいなら手が届きそうだ。」
アイリは少しだけ考え込む。
「どうした?」
「ううん。」
「一つだけ、お願いしてもいい?」
「もちろん。」
アイリは少し照れながら笑った。
「できたら……。」
「お風呂のある家がいいな。」
「お風呂?」
「あ、贅沢かな?」
アイリは慌てて首を振る。
「共同浴場も嫌いじゃないよ?」
「でも。」
「冬は寒いし。」
「お休みの日くらいは、家でゆっくりお風呂に入れたら嬉しいなって。」
グレンは部屋を見回した。
今の借家には浴室がない。
毎日、仕事や依頼を終えたあとに共同浴場へ通っている。
今までは、それが当たり前だった。
「それくらいなら贅沢じゃない。」
グレンは優しく笑った。
「次は、お風呂付きの家を探そう。」
「本当?」
「ああ。」
「約束だ。」
アイリの表情がぱっと明るくなる。
「楽しみ。」
「毎日お風呂に入れるね。」
「そのためにも、もう少し頑張らないとな。」
「うん!」
二人は笑い合った。
豪華な屋敷ではない。
高価な家具もいらない。
冬でも暖かく。
そして、お風呂のある小さな借家。
それが今の二人にとって、一番の夢だった。
その夢は、もう手の届くところまで近づいていた。




