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第24話 少しずつ増える貯金

 六階層での探索を終えた二人は、夕方にはフォルンへ戻っていた。


 冒険者ギルド。


「お帰りなさい。」


 受付では、ミーナが笑顔で迎えてくれる。


「依頼達成です。」


 グレンは討伐証明を机へ並べた。


 オークソルジャー。


 パラライズスネーク。


 どちらも規定数そろっている。


 ミーナは一つずつ確認し、笑顔で頷いた。


「確認しました。」


「どちらも達成です。」


「ありがとうございます。」


 報酬の入った革袋を受け取り、グレンはその重さに少し驚いた。


「結構あるな。」


「六階層は危険ですからね。」


 ミーナが微笑む。


「その分、報酬も高くなっています。」


「助かるよ。」


 グレンは素直に礼を言った。



 帰り道。


 二人は市場へ向かった。


「今日は何を買おうか。」


 アイリが嬉しそうに尋ねる。


「昨日も頑張ったし。」


「今日は少し贅沢しよう。」


 グレンも笑う。


「そうだな。」


「肉も買おう。」


「本当?」


「ああ。」


 精肉店で少し厚めの肉を買う。


 さらに新鮮な野菜や果物も籠へ入れた。


「こんなに買って大丈夫?」


「まだ余る。」


 革袋の中を見ながら、グレンは笑った。


「六階層へ潜るようになってから、一気に余裕が出てきたな。」


「本当だね。」


 アイリも嬉しそうだった。



 家へ戻ると、夕食の準備を始める。


 肉が焼ける音と香ばしい匂いが部屋いっぱいに広がる。


「いただきます。」


「いただきます。」


 二人は笑顔で食卓を囲んだ。


「やっぱり美味しい。」


 アイリは幸せそうに微笑む。


「久しぶりにこんなにお肉を食べたね。」


「ああ。」


 グレンも頷く。


「こういう時間のために頑張ってるんだ。」


 食事を終えたあと。


 グレンは寝室の隅に置いてある小さな木箱を持ってきた。


 中には少しずつ貯めてきた金貨や銀貨が入っている。


 今日の報酬を加える。


 チャリン、と心地よい音が響いた。


「結構増えたね。」


 アイリが箱を覗き込む。


「ああ。」


 グレンは嬉しそうに頷いた。


「そろそろ引っ越しも考えられそうだ。」


「本当に?」


「ああ。」


「持ち家はまだ無理だけど。」


「もう少し住みやすい借家くらいなら手が届きそうだ。」


 アイリは少しだけ考え込む。


「どうした?」


「ううん。」


「一つだけ、お願いしてもいい?」


「もちろん。」


 アイリは少し照れながら笑った。


「できたら……。」


「お風呂のある家がいいな。」


「お風呂?」


「あ、贅沢かな?」


 アイリは慌てて首を振る。


「共同浴場も嫌いじゃないよ?」


「でも。」


「冬は寒いし。」


「お休みの日くらいは、家でゆっくりお風呂に入れたら嬉しいなって。」


 グレンは部屋を見回した。


 今の借家には浴室がない。


 毎日、仕事や依頼を終えたあとに共同浴場へ通っている。


 今までは、それが当たり前だった。


「それくらいなら贅沢じゃない。」


 グレンは優しく笑った。


「次は、お風呂付きの家を探そう。」


「本当?」


「ああ。」


「約束だ。」


 アイリの表情がぱっと明るくなる。


「楽しみ。」


「毎日お風呂に入れるね。」


「そのためにも、もう少し頑張らないとな。」


「うん!」


 二人は笑い合った。


 豪華な屋敷ではない。


 高価な家具もいらない。


 冬でも暖かく。


 そして、お風呂のある小さな借家。


 それが今の二人にとって、一番の夢だった。


 その夢は、もう手の届くところまで近づいていた。

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