第23話 気配の先
翌朝。
新しく覚えたスキルを試すため、グレンとアイリは再び六階層へ足を運んだ。
「今日は依頼もあるけど。」
アイリが笑う。
「目的はスキルの確認だね。」
「ああ。」
グレンも頷く。
「使い方を知らなきゃ意味がないからな。」
二人はゆっくりと六階層を進んでいく。
その時だった。
グレンが突然足を止めた。
「待て。」
「どうしたの?」
「……いる。」
「え?」
アイリには何も見えない。
通路の先は静まり返っている。
だが。
「曲がり角の向こう。」
「二体。」
グレンは静かに剣を抜いた。
「行こう。」
慎重に曲がり角を覗く。
「本当だ……。」
そこには盾を構えたオークソルジャーが二体立っていた。
「すごいね。」
「気配察知?」
「ああ。」
「見える前に分かる。」
「これは便利。」
アイリも感心していた。
「先に準備できるもんね。」
「それが一番大きい。」
グレンは頷く。
「アイリ。」
「うん。」
「先制しよう。」
「ファイアボール!」
火球が一直線に飛ぶ。
一体のオークソルジャーへ命中し、大きく体勢を崩した。
「今だ!」
グレンが駆け出す。
「パワースラッシュ!」
重い一撃が盾ごと相手を吹き飛ばす。
「やっぱり!」
アイリが笑顔になる。
「盾ごと押し切れる!」
「ああ!」
グレンも笑った。
「説明だけじゃ分からなかったな。」
そのまま連続斬りで一体目を撃破。
残る一体も危なげなく倒し、討伐証明を回収する。
◇
さらに探索を続ける。
しばらく歩いたところで、再びグレンが立ち止まった。
「また?」
「ああ。」
「でも今度は変だ。」
「変?」
「魔物の気配はある。」
「だけど。」
「近付いても姿が見えない。」
二人は慎重に辺りを見回した。
右は壁。
左も壁。
行き止まりだった。
「おかしいね。」
アイリが首を傾げる。
「気配はどこ?」
「……壁の向こう。」
グレンは石壁へ手を当てた。
「確かに向こうにいる。」
「でも道がない。」
二人はしばらく探した。
壁を叩き。
床を調べ。
隅々まで見回す。
しかし何も見つからない。
「駄目か。」
グレンは苦笑した。
「気配は分かっても。」
「行き方は分からない。」
アイリは壁を見つめながら呟く。
「隠し通路……とか?」
「あるかもしれない。」
グレンも頷いた。
「そういうスキルがあれば見つけられるのかな。」
「また欲しいスキルが増えちゃったね。」
「研究は終わらないな。」
二人は笑い合った。
◇
その直後。
グレンの表情が変わる。
「来る!」
岩陰から一匹のパラライズスネークが飛び出した。
しかし。
「分かってる!」
アイリは慌てない。
「ファイアボール!」
蛇が飛び出す前に火球が命中する。
体勢を崩したところへ。
「パワースラッシュ!」
グレンの一撃。
蛇は大きく吹き飛び、そのまま光へ変わった。
「待ち伏せされなかった。」
アイリが嬉しそうに言う。
「ああ。」
グレンも頷いた。
「気配察知のおかげだ。」
「これなら、不意打ちはかなり減りそうだ。」
討伐証明を回収しながら、グレンは静かに笑う。
「次に欲しいものも決まった。」
「隠し通路発見。」
「それと。」
「罠解除。」
アイリも笑顔で頷く。
「まだまだ強くなれそうだね。」
「ああ。」
「焦らず、一つずつだ。」
二人は並んで歩き出す。
六階層は、まだすべてを見せてはいなかった。
だからこそ、その先を知りたくなる。
夫婦の研究は、今日も少しずつ前へ進んでいくのだった。




