第19話 初めての蛇
オークソルジャーを二体討伐し、グレンは討伐証明をマジックバッグへしまった。
「パワースラッシュ。」
剣を鞘へ納めながら小さく呟く。
「思った以上だったな。」
アイリも嬉しそうに笑う。
「盾ごと押し切るなんて思わなかった。」
「ああ。」
「説明だけじゃ分からない。」
「やっぱり使ってみないと駄目だな。」
二人は再び六階層を歩き始めた。
通路は静かだった。
時折、水滴の落ちる音だけが響いている。
その時だった。
罠察知とは違う嫌な感覚が、グレンの背中を走る。
「止まれ。」
アイリもすぐに立ち止まる。
「どうしたの?」
「……何かいる。」
前方の岩陰。
そこから細長い影がゆっくりと姿を現した。
「蛇?」
全長二メートルほど。
緑色の鱗を持つ大蛇だった。
舌を小刻みに動かしながら、二人をじっと見つめている。
「初めて見る魔物だ。」
グレンは静かに剣を抜いた。
「気を付けて。」
「うん。」
蛇は音もなく地面を滑るように近付いてくる。
そして突然、一直線に飛び掛かってきた。
「速い!」
グレンは横へ転がってかわす。
牙が石畳へ突き刺さった。
カンッ!
鋭い音が響く。
「普通の蛇じゃないな。」
その隙にアイリが杖を構えた。
「ファイアボール!」
火球が蛇の胴体へ命中する。
蛇は身体を大きくくねらせながら後退した。
「効いてる!」
「今だ!」
グレンは距離を詰める。
「パワースラッシュ!」
重い斬撃が蛇の身体を捉え、大きく吹き飛ばした。
さらに追い打ちの連続斬り。
数秒後、蛇は光となって消えた。
「終わった……。」
アイリが息を吐く。
「思ったより強かったね。」
「ああ。」
グレンは蛇が消えた場所を見つめる。
そこには魔石と、小さな牙が落ちていた。
「討伐証明かな。」
グレンは牙を拾い上げる。
その時。
「グレン!」
アイリが声を上げた。
通路の奥。
岩陰から、また一匹。
さらにもう一匹。
同じ蛇が姿を現した。
「群れか。」
グレンは剣を握り直す。
「落ち着いて。」
「うん。」
今度はアイリが先に動く。
「ファイアボール!」
火球が先頭の蛇へ命中する。
動きが止まった一瞬を逃さず、グレンが踏み込む。
「パワースラッシュ!」
重い一撃で一匹目を吹き飛ばす。
続けて連続斬り。
一匹目が光へ変わる。
残る一匹は素早く横へ回り込んだ。
「グレン!」
アイリが叫ぶ。
蛇が口を大きく開ける。
牙がグレンの腕をかすめた。
「しまっ……!」
だが、大きな傷ではない。
グレンは冷静に距離を取り直す。
「大丈夫!」
「うん!」
アイリも慌てない。
ファイアボールで蛇の進路を塞ぎ、その隙にグレンが回り込む。
「これで終わりだ!」
パワースラッシュが決まり、最後の蛇も光となって消えた。
静寂が戻る。
グレンは腕を確認する。
「噛まれたかと思ったけど、鎧に助けられたな。」
アイリはほっと胸を撫で下ろした。
「危なかった……。」
「ああ。」
グレンは落ちていた牙を拾いながら言う。
「六階層は、オークソルジャーだけじゃない。」
「ギルドへ戻ったら、この魔物のことも聞いてみよう。」
「うん。」
二人は新たな討伐証明をマジックバッグへしまい、慎重に探索を続けるのだった。




