第17話 初めての青スキル
淡い青い光がゆっくりと消えていく。
机の上には、一冊の青いスキルブックが静かに置かれていた。
「できた……。」
アイリが小さく呟く。
グレンも息を呑みながら手を伸ばした。
白から緑。
そこまでは何度も見てきた。
しかし、青いスキルブックは初めてだ。
「さて……。」
慎重に表紙を開く。
そこに書かれていた文字を見て、二人は顔を見合わせた。
「キュア。」
アイリがゆっくりと読み上げる。
「状態異常を治療する。」
説明は短かった。
だが、その一文だけで十分だった。
「これは当たりだ。」
グレンは迷わず言った。
「毒や麻痺を使う魔物が出てきても安心できる。」
「安全第一だもんね。」
アイリも嬉しそうに微笑む。
グレンは青いスキルブックをアイリへ差し出した。
「これはアイリが覚えてくれ。」
「うん。」
アイリは静かに本を開いた。
青白い光が身体を包み込み、新しい知識が流れ込んでくる。
数秒後、光は消え、スキルブックも跡形なく姿を消した。
「どう?」
「覚えた。」
アイリはゆっくりと目を開く。
「毒、麻痺、眠り、混乱……。」
「これくらいなら治せる。」
「よし。」
グレンは満足そうに頷いた。
「これでまた安心して潜れる。」
アイリは木箱へ視線を向けた。
「そういえば。」
「まだ残ってるスキルブックもあるね。」
「ああ。」
グレンも木箱を開く。
そこには以前から保管していた緑のスキルブックが二冊残っていた。
「パワースラッシュ。」
「ウォーターボール。」
二人は説明をもう一度読み返す。
「どっちも説明だけじゃ、本当の使い勝手は分からないね。」
アイリが言う。
「ああ。」
グレンも頷いた。
「迷うスキルは一度覚える。」
「それが俺たちのルールだ。」
まずグレンがパワースラッシュのスキルブックを手に取る。
「俺からだな。」
本を開くと、緑色の光が身体を包み込む。
力強い剣筋のイメージが頭の中へ流れ込んできた。
光が消え、スキルブックも姿を消す。
「どう?」
「威力を重視した剣技みたいだ。」
「ただ……。」
「それ以上は実際に使ってみないと分からない。」
「やっぱり説明だけじゃ分からないね。」
「ああ。」
グレンは苦笑した。
続いて、アイリがウォーターボールを手に取る。
「じゃあ、次は私。」
本を開くと、今度は柔らかな水色の光が身体を包む。
魔力の流れとともに、小さな水球を作り出す感覚が自然と頭へ入ってきた。
数秒後、光は静かに消える。
「どう?」
「うん。」
「水を出せる。」
アイリは少し不思議そうに微笑んだ。
「でも、戦闘向きじゃないかな。」
「そうかもしれない。」
グレンは笑う。
「でも、ダンジョンで水が切れた時。」
「怪我を洗う時。」
「火を消したい時。」
「意外と役立つかもしれない。」
「そうだね。」
アイリも笑顔で頷いた。
「派手じゃないけど、こういうスキルも嫌いじゃないよ。」
「俺もだ。」
グレンは木箱の中を確認する。
これで今回覚える予定だったスキルはすべて習得した。
残るのは、説明を読んだ時点で今の自分たちには不要だと判断したスキルブックだけ。
それらは、いつかより高位のスキルを生み出すための大切な素材になる。
「少しずつだけど。」
グレンが静かに笑う。
「確実に前へ進んでるな。」
「うん。」
アイリも嬉しそうに頷いた。
「明日は、新しいスキルを試しに行こう。」
二人は顔を見合わせ、自然と笑みを浮かべる。
新しい力が、本当にどんな働きを見せるのか。
それを確かめるため、二人は明日の探索を楽しみにするのだった。




