第15話 研究は続く
六階層の依頼を終えた翌日。
二人は依頼を休み、家でスキルブックの整理をしていた。
机の上には、白や緑のスキルブックが並んでいる。
「ずいぶん増えたね。」
アイリが苦笑する。
「ああ。」
グレンも頷いた。
「少し前までは、白いスキルブックなんて売るだけだったからな。」
「今じゃ全部が研究材料だ。」
二人は顔を見合わせて笑った。
グレンは一冊ずつ手に取り、種類ごとに並べていく。
「これは白。」
「こっちは緑。」
アイリは並んだスキルブックを眺めながら口を開く。
「ねぇ。」
「もしスマッシュウェーブのスキルブックがまたできたら?」
グレンは笑った。
「その時は覚えない。」
「もう覚えてるもんね。」
「ああ。」
「でも無駄じゃない。」
「緑のスキルブックだから、二冊集まれば青へ合成できる。」
アイリの表情が明るくなる。
「なるほど!」
「同じスキルができても当たりなんだ。」
「普通の冒険者なら売るだけだけどな。」
「俺たちには次の素材になる。」
アイリは感心したように頷いた。
「なんだか夢が広がるね。」
「ああ。」
グレンは木箱の中を見渡す。
「白から緑。」
「緑から青。」
「青から紫。」
「少しずつ研究を進めていけばいい。」
アイリは一冊の緑色のスキルブックを手に取った。
「ウォーターボール。」
説明を読み上げる。
「『小さな水球を放つ』……だって。」
「戦闘では弱そう。」
グレンも説明を読んだ。
「そう見えるな。」
「でも、水がなくなった時。」
「怪我を洗う時。」
「火を消したい時。」
「意外と使い道はありそうだ。」
アイリも頷く。
「説明だけじゃ分からないね。」
「ああ。」
グレンは静かに笑った。
「説明だけで価値を判断できないスキルは、一度覚えてみるしかない。」
「覚えたらスキルブックは消えるけど?」
「だから慎重なんだ。」
「でも、迷うなら使ってみる。」
「実際に使って初めて、そのスキルの価値が分かる。」
アイリはウォーターボールのスキルブックを胸の前で持った。
「じゃあ、これは覚えよう。」
「ああ。」
「もし便利なら、それだけで十分価値がある。」
「逆に、説明を読んだだけで絶対に使わないと思えるスキルは?」
グレンは頷く。
「そういうスキルは合成材料にする。」
「なるほど。」
「つまり。」
「迷うスキルは覚える。」
「不要だと判断できるスキルは合成。」
「その考え方だ。」
アイリは嬉しそうに笑った。
「研究って、本当に奥が深いね。」
「ああ。」
「正解なんてない。」
「だから面白い。」
二人は机いっぱいに並んだスキルブックを見つめる。
一冊一冊に、新しい可能性が眠っている。
その可能性を見極めることもまた、二人にとってはダンジョン攻略と同じくらい楽しい時間になっていた。




