第13話 六階層の依頼
翌朝。
朝食を終えた二人は、いつものようにフォルン冒険者ギルドへ向かった。
「おはようございます!」
受付では、ミーナが笑顔で迎えてくれる。
「今日はオーク五体討伐ですか?」
グレンは首を横に振った。
「いや。」
「今日は六階層の依頼を受けたい。」
「六階層ですか?」
ミーナは少し驚いた表情を見せた。
「はい。」
「昨日、様子だけ見てきた。」
「無理はしません。」
その言葉を聞いて、ミーナは安心したように微笑んだ。
「それでしたら……。」
依頼書を一枚取り出す。
「オークソルジャー三体討伐があります。」
「報酬はオーク討伐より少し高めです。」
「受けよう。」
「かしこまりました。」
ミーナは依頼書へ印を付けながら続ける。
「六階層は盾を持った魔物が多く、罠も増えます。」
「十分気を付けてください。」
「ああ。」
「危ないと思ったら引き返す。」
「はい!」
二人は依頼書を受け取り、ダンジョンへ向かった。
◇
五階層までは順調だった。
罠察知のおかげで六階層へ降りる足取りにも余裕がある。
「今日は昨日より落ち着いてるね。」
アイリが小さく笑う。
「ああ。」
「どんな場所か分かっているだけでも違う。」
慎重に通路を進む。
すると。
ガシャン。
金属がぶつかる音が響いた。
「来たな。」
グレンが剣を抜く。
通路の奥から現れたのは、丸盾と剣を構えたオークソルジャーだった。
三体。
「昨日と同じだね。」
「ああ。」
「でも今日は違う。」
グレンは小さく笑った。
「アイリ。」
「任せて。」
オークソルジャーが一斉に距離を詰めてくる。
「スマッシュウェーブ!」
衝撃波が一直線に飛ぶ。
一体は盾を構え、衝撃を受け止めた。
その隙に左右の二体が迫る。
「今!」
グレンの声が響く。
アイリは右手を前へ突き出した。
「ファイアボール!」
拳ほどの火球が一直線に飛ぶ。
盾を構えていたオークソルジャーの肩へ命中した。
ドンッ!
火花が散り、思わず体勢を崩す。
「やった!」
「ナイス!」
グレンはその隙を逃さない。
「連続斬り!」
二連撃がオークソルジャーを切り裂き、一体目が光となって消えた。
「あと二体!」
一体が大きく剣を振り下ろす。
グレンは紙一重でかわし、反撃する。
しかし、もう一体が盾を構えながら横へ回り込んできた。
「グレン!」
アイリは落ち着いて詠唱する。
「身体強化!」
淡い光がグレンを包む。
続けて。
「ファイアボール!」
二発目の火球が盾へ直撃した。
衝撃でオークソルジャーの腕がわずかに跳ね上がる。
「今だ!」
グレンは盾の隙間へ剣を滑り込ませた。
「ノックバック!」
剣が命中すると同時に、オークソルジャーが大きく吹き飛ぶ。
「スマッシュウェーブ!」
追い打ちの衝撃波が胸を貫き、二体目も光となって消えた。
残るは一体。
仲間を失ったオークソルジャーは大きく咆哮し、真正面から突進してくる。
「焦るな。」
グレンは静かに構えた。
盾がぶつかる寸前。
半歩だけ身体をずらす。
勢い余ったオークソルジャーの背中が無防備になる。
「ファイアボール!」
背中へ火球が命中した。
思わず前へつんのめる。
「終わりだ。」
グレンの連続斬りが決まり、最後の一体も光へ変わった。
静寂が戻る。
アイリは胸へ手を当て、大きく息を吐く。
「勝てたね。」
「ああ。」
グレンは笑顔で頷いた。
「ファイアボールがあるだけで全然違う。」
「本当?」
「盾で止まっていた流れを作り直せる。」
「すごく助かった。」
アイリは照れくさそうに笑った。
「初めての攻撃魔法だったから緊張した。」
「十分すぎるくらいだった。」
グレンは討伐証明を回収しながら周囲を見回す。
「六階層も、少しずつ攻略できそうだ。」
「うん。」
「でも油断はしない。」
「もちろん。」
二人は顔を見合わせ、小さく笑った。
強くなったからではない。
昨日よりも、安全に戦えるようになった。
その実感が、何より嬉しかった。




