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第12話 新しい魔法

 六階層から戻った二人は、帰り道に五階層で依頼分のオークを討伐し、夕方にはフォルンへ戻ってきた。


 討伐報告を終えると、そのまま市場へ向かう。


「今日は何を買う?」


 グレンが尋ねると、アイリは嬉しそうに肉屋を指差した。


「もちろん、お肉!」


「やっぱりか。」


「今日は六階層まで行ったんだから、ご褒美。」


「そうだな。」


 二人は少し奮発して肉を買い、野菜も籠へ入れる。


 以前なら少し値段を見て悩んでいた。


 だが最近は、そこまで神経質にならなくてもよくなってきた。


「少しだけ生活が楽になったね。」


 アイリが微笑む。


「ああ。」


 グレンも頷く。


「でも、まだまだこれからだ。」


「うん。」


 二人は笑いながら家へ帰った。



 夕食は香草で焼いた肉と野菜のスープ。


 久しぶりに少し贅沢な食卓だった。


「いただきます。」


「いただきます。」


 一口食べたグレンは自然と笑みを浮かべる。


「うまい。」


「本当?」


「ああ。」


「やっぱりアイリの料理は最高だ。」


「またそんなこと言って。」


 照れ笑いを浮かべるアイリ。


 それでも嬉しそうだった。


 食後のお茶を飲み終えると、グレンは木箱を机の上へ置く。


「さて。」


「研究の時間だね。」


 アイリも椅子へ座った。


 木箱には今日まで集めてきたスキルブックが残っている。


 グレンは一冊ずつ確認しながら並べていった。


「今日は攻撃魔法を狙いたい。」


「うん。」


「六階層で分かった。」


「アイリも攻撃できた方が安全だ。」


 アイリは少し照れたように笑う。


「役に立てるかな。」


「立つさ。」


 グレンは迷いなく答えた。


「アイリが一発撃てるだけで、俺はかなり楽になる。」


「そう言ってもらえると嬉しい。」


 グレンは二冊のスキルブックを手に取った。


 一冊は『火種』。


 火を起こすだけの生活系スキルだ。


 もう一冊は『魔力操作』。


 魔力を扱いやすくする基礎スキルである。


「この組み合わせなら……。」


「火の魔法になりそう?」


「そんな気がする。」


 もちろん確証はない。


 合成結果はランダムだ。


 だが、方向性は素材によって決まりやすい。


「やってみよう。」


 二冊を重ねる。


 淡い光が部屋を包み込み、二冊のスキルブックがゆっくりと溶け合っていく。


 やがて一冊の緑色のスキルブックが机の上へ落ちた。


「できた。」


 グレンは慎重に表紙を確認する。


 そして。


「……ファイアボール。」


「えっ!」


 アイリが立ち上がった。


「本当に?」


「ああ。」


 説明を開く。


『火球を放ち、対象を攻撃する。』


 短い説明だった。


 だが二人には十分だった。


「狙いどおりだ。」


 グレンは笑顔でスキルブックをアイリへ差し出す。


「アイリ。」


「うん。」


「これはアイリが覚えてくれ。」


「いいの?」


「もちろんだ。」


「今日の戦闘で分かった。」


「俺一人で戦うより、二人で攻撃できた方が安全だ。」


 アイリは嬉しそうにスキルブックを受け取った。


「ありがとう。」


 ゆっくりと本を開く。


 柔らかな光がアイリを包み込み、新たな知識が身体へ流れ込んでいく。


 数秒後。


 光は静かに消え、スキルブックも跡形なく姿を消した。


「どう?」


 グレンが尋ねる。


 アイリは目を閉じたまま、小さく頷く。


「うん。」


「撃てそう。」


 右手を軽く前へ向ける。


 魔力を集める感覚が自然と分かった。


 今は家の中だ。


 撃つわけにはいかない。


 それでも、魔法が使えるという確信だけはあった。


「明日試してみよう。」


 グレンが笑う。


「六階層で。」


「うん。」


 アイリも笑顔で頷いた。


 支援だけではなく、攻撃もできるようになった。


 それがどれだけ戦いを変えるのか。


 二人とも、明日の探索が楽しみで仕方なかった。

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