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アラフォー冒険者、今日も嫁のために頑張ります  作者: 榊紅丸
第二章 冒険者都市ルグリア編
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110/113

第110話 元Aランク

 翌朝。


 ルグリア冒険者ギルドの訓練場。


 グレンたちが到着すると、すでにベルガーが待っていた。


「早いな。」


「試験に遅刻するわけにもいかないだろ。」


「それもそうだ。」


 昨日までとは服装が違う。


 防具を身につけ。


 その手には、大きな剣。


「大剣か。」


「ああ。」


 幅広の刀身。


 グレンのヴァリアントとは比べものにならないほど大きい。


「重そうだな。」


「持ってみるか?」


「いや、遠慮しとく。」


「そうか。」


 ベルガーは片手で大剣を持ち上げた。


「……片手で持つのかよ。」


「振る時は両手だ。」


「そういう問題じゃないと思う。」


 アイリが苦笑する。


「ミャ。」


『つよそう』


「だな。」


 グレンも同感だった。


 武器を持ったベルガーから感じる圧は、昨日までとはまるで違う。


「試験の条件を説明する。」


 ベルガーが大剣を地面へ立てる。


「時間は十分。」


「十分か。」


「ああ。」


「勝敗条件は?」


「俺が戦闘不能になれば、お前たちの勝ち。」


「俺たちは?」


「三人全員が戦闘不能になれば負けだ。」


「ミケも数えるのか?」


「当然だ。」


「ミャ!」


『やる!』


「ただし、これは殺し合いではない。」


「分かってる。」


「危険な技は使うな。」


「次元斬りは使わない。」


「絶対に使うな。」


「分かってるって。」


 ベルガーがアイリを見る。


「回復、支援、攻撃魔法。すべて使用して構わん。」


「分かりました。」


「ミケも魔法を使っていい。」


「ミャ!」


「獣化は?」


「使わせない。」


 グレンが即答する。


「模擬戦で無理させる必要はない。」


「それでいい。」


 ベルガーが大剣を構えた。


 グレンもヴァリアントを抜く。


 アイリは薙刀型のグリムゾンティア。


 ミケがその横へ降りた。


「準備は?」


「少し待ってくれ。」


 グレンがアイリを見る。


「いつも通り頼む。」


「うん。」


《身体強化》。


《防御強化》。


《クイック》。


《プロテクトオーラ》。


 淡い光が三人を包む。


「待ってくれるんだな。」


「事前準備も含めてお前たちの戦い方だろう。」


「ありがたい。」


「実戦なら待たんがな。」


「そりゃそうだ。」


 グレンがヴァリアントを構える。


「準備できた。」


 訓練場の端。


 立会人のエレナが手を上げた。


「Aランク昇格試験。」


 グレン。


 アイリ。


 ミケ。


 対するは。


 元Aランク冒険者、ベルガー。


「始め!」


 その瞬間。


 ベルガーが駆けた。


「速っ!」


 大剣を持っているとは思えない速度。


 一気にグレンとの距離を詰める。


 大剣が振り下ろされた。


 グレンはバックラーを構える。


 激突。


「ぐっ!」


 重い。


 受け止めたグレンの身体が後ろへ押される。


「グレン!」


「大丈夫だ!」


 アイリが動く。


「《フレイムランス》!」


 炎の槍が飛ぶ。


 ベルガーは大剣を振るった。


 炎の槍が大剣に弾かれ、軌道を逸らされる。


「魔法を剣で?」


「できないことはない。」


「普通はやらないだろ!」


「そうか?」


 ベルガーが再び踏み込もうとする。


「ミケ!」


「ミャ!」


《アーススパイク》。


 ベルガーの足元から岩の棘が突き出した。


「ほう。」


 ベルガーが横へ跳ぶ。


 着地を狙って。


「《飛翔斬》!」


 グレンがヴァリアントを振り抜く。


 斬撃が飛ぶ。


 ベルガーは大剣を構えた。


 激突。


 飛翔斬が砕ける。


「マジか。」


「止まるな、グレン!」


「ああ!」


 ベルガーとの距離はまだある。


 グレンがヴァリアントを構えた。


《瞬影斬》。


 一瞬で間合いを詰める。


 その勢いを乗せ。


 ヴァリアントで斬り抜ける。


「ほう!」


 ベルガーが大剣で受けた。


 甲高い音が響く。


「いい剣だ。」


「自信作だ!」


 ベルガーが押し返す。


 グレンはすぐに距離を取った。


 そこへ。


「《三段突き》!」


 アイリ。


 グリムゾンティアによる三連続の突き。


 一撃。


 二撃。


 ベルガーが大剣で受ける。


 三撃目。


 アイリが僅かに角度を変えた。


「おっと。」


 ベルガーが身体を逸らす。


 穂先が胸元を掠める。


「惜しい!」


「十分だ。」


 ベルガーが笑う。


「神官だった女の動きじゃないな。」


「今はヴァルキリーです!」


「知っている!」


 大剣が横薙ぎに振られる。


「《旋風防陣》!」


 アイリがグリムゾンティアを高速で旋回させる。


 だが。


「アイリ!」


 グレンが叫ぶ。


 受けるには重すぎる。


 アイリもすぐに判断した。


 大剣を正面から止めず、軌道を逸らしながら後ろへ下がる。


「いい判断だ!」


「ありがとうございます!」


「試験中に褒めてる場合か!」


「ミャー!」


《サンダーチェイン》。


 雷が走る。


 ベルガーが大剣を盾にした。


 雷が刀身を伝う。


「っ!」


 ベルガーが大きく後ろへ跳んだ。


「効いたか?」


「思ったより強いな。」


「魔力圧縮まで覚えてるからな。」


「それもスキルブックか。」


「ああ。」


 ベルガーがミケを見る。


「幼体でこれか。」


「ミャ!」


『つよい!』


「自分で言うな。」


 だが。


 ベルガーの動きが僅かに止まった。


 雷の影響。


「今だ!」


 グレンが踏み込む。


 ヴァリアントへ魔力を流した。


《雷鳴剣》。


 刀身を雷が包む。


「それが高位魔法剣か!」


「ああ!」


 グレンが斬り込む。


 ベルガーが大剣で受ける。


 瞬間。


 雷が弾けた。


「ぐっ!」


 ベルガーの腕が僅かに止まる。


「もう一発!」


 グレンがヴァリアントを返す。


 ベルガーが後退。


「アイリ!」


「うん!」


《アイスランス》。


 氷の槍が飛ぶ。


 ベルガーが横へ避ける。


 その先へ。


「ミャ!」


《アーススパイク》。


 岩の棘が突き出す。


「なるほどな。」


 ベルガーはさらに踏み込み、岩の棘の間を抜けた。


「ちゃんと三人で戦っている。」


「当たり前だ!」


「なら。」


 ベルガーが大剣を両手で握った。


 空気が変わる。


「こちらも少し本気を出すぞ。」


 グレンが構え直す。


「最初から出してくれていいんだけどな。」


「五十五歳を舐めるな。」


「年齢を言い訳にするのか、誇るのかどっちかにしろよ。」


「両方だ。」


「便利だな!」


 ベルガーが駆ける。


 先ほどまでより速い。


「グレン!」


「分かってる!」


 大剣が振り下ろされる。


 グレンは横へ跳んだ。


 直後。


 大剣が地面へ叩きつけられる。


 轟音。


 訓練場の地面が砕けた。


「……模擬戦だよな?」


「安心しろ。当てるつもりなら当てている。」


「怖いこと言うな!」


 グレンはすぐに体勢を整える。


 ベルガーが大剣を引き抜く。


 その瞬間。


 グレンは地面を蹴った。


《瞬影斬》。


 ベルガーとの距離を一気に詰め。


 そのまま斬り抜ける。


「っ!」


 ベルガーが大剣を引き戻して受ける。


 金属音。


 グレンはそのままベルガーの横を抜けた。


 振り返る。


「今のは危なかったな。」


「ちゃんと斬っただろ?」


「ああ。」


「これが瞬影斬だ。」


「いい技だ。」


 ベルガーが笑う。


 強い。


 間違いなく強い。


 引退して十年以上。


 それでも。


 ベルガーはAランクだった。


「アイリ!」


「うん!」


「ミケ!」


「ミャ!」


 三人が同時に動く。


 試験時間は十分。


 まだ。


 半分も経っていなかった。

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