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アラフォー冒険者、今日も嫁のために頑張ります  作者: 榊紅丸
第二章 冒険者都市ルグリア編
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第107話 Aランク昇格試験

 翌日。


 グレンたちはルグリア冒険者ギルドを訪れていた。


「おはようございます。」


「おはよう、エレナ。」


「おはようございます。」


「ミャー!」


 エレナの視線がミケへ向く。


「おはようございます、ミケちゃん。」


「ミャ!」


 すぐに表情が柔らかくなった。


「相変わらずだな。」


「何か?」


「いや、何も。」


 グレンはカウンターへギルドカードを置く。


「塔の攻略報告だ。」


「何階層まで進まれましたか?」


「二十階層。」


 エレナの手が止まった。


「……二十階層?」


「ああ。」


「階層主も?」


「倒した。」


「三人とも怪我は?」


「ない。」


「ミャ!」


「ミケちゃんも?」


「ミャー!」


「そうですか。」


 エレナがほっと息を吐く。


「では、二十階層の転移先も登録されたんですね。」


「ああ。確認してから帰ってきた。」


「分かりました。記録を更新します。」


 エレナが書類へ記入していく。


 しばらくして。


「グレンさん。」


「ん?」


「アイリさんも。」


「はい?」


 エレナが二人を見る。


「そろそろAランク昇格試験を受けませんか?」


「……Aランク?」


「はい。」


 グレンとアイリが顔を見合わせる。


「俺たち、まだBランクになったばかりだぞ?」


「ルグリアへ来る前に昇格されたばかりなのは把握しています。」


「なら早くないか?」


「通常なら。」


 エレナは二人の記録を見る。


「ですが、お二人はルグリアへ到着してから短期間で塔の二十階層まで攻略しています。」


「ミケもいるけどな。」


「もちろんミケちゃんの力も含めてです。」


「ミャ!」


「それに十五階層主、二十階層主を討伐。ここまでの攻略でも大きな問題は起こしていません。」


 エレナが書類を閉じる。


「実力だけでなく、危険だと判断すれば撤退する。装備が不足していると感じれば攻略を中断する。そういった判断も含めて、私はAランク昇格試験を受けるだけの資格はあると思っています。」


「Aランクか……。」


 グレンは腕を組む。


 冒険者を始めて二十五年。


 長い間、Dランクだった。


 それが今ではBランク。


 さらにAランクが見えている。


「どうする?」


 アイリが聞く。


「受けられるなら受けたい。」


「私も。」


 そこでグレンは一つ気になった。


「エレナ。」


「はい。」


「Aランクの試験って何をするんだ?」


「試験内容については事前にお伝えできません。」


「そりゃそうか。」


「ただし、試験前にギルドカードの確認があります。」


「……。」


 グレンの表情が止まった。


「確認?」


「はい。Aランク冒険者はギルドにとっても重要な存在になります。そのため本人確認、職業、習得スキルなど、登録情報との相違がないか確認します。」


「スキルも?」


「はい。」


 グレンとアイリが再び顔を見合わせる。


「どうかされましたか?」


「いや。」


 グレンはギルドカードを取った。


「少し考えさせてくれ。」


「もちろんです。」


 エレナは理由を聞かなかった。


「昇格試験を受けることを決められましたら、私にお伝えください。」


「ああ。」


「ミャー。」


「ミケちゃん、またね。」


「ミャ!」


 三人はギルドを出た。


 ◇


 家へ戻ったグレンは、居間の椅子へ座った。


「やっぱり確認されるか。」


「スキルブック合成?」


「ああ。」


 アイリが向かいに座る。


 ミケはその膝へ。


「今まで問題にならなかったけど。」


「Aランクとなると話が違うみたいだな。」


 グレンのギルドカードには。


《スキルブック合成》


 その名前が表示されている。


「隠せないね。」


「カードを確認されたらな。」


「試験、やめる?」


「いや。」


 グレンは首を振った。


「それは違うと思う。」


「うん。」


「隠すためだけにAランクにならないっていうのも変だ。」


「じゃあ話す?」


「それを考えてる。」


 誰にでも話せる能力ではない。


 低位のスキルブックから高位のスキルブックを作れる。


 使い方次第では、冒険者ギルドどころか国まで動く可能性がある。


「エレナさんは?」


「信用してる。」


「私も。」


「でも。」


 グレンは少し考える。


「エレナに話したら、立場上、上に報告しないといけなくなるかもしれない。」


「あ……。」


「秘密にしてくれって頼むのも違うだろ。」


「エレナさんを困らせちゃうね。」


「ああ。」


 なら。


 最初から話すべき相手に話す。


「ギルド長か。」


「会ったことないね。」


「だから先にエレナに聞こう。」


「どんな人か?」


「ああ。」


 信用できる人物なら。


 カードを確認されて発覚する前に、自分たちから話す。


「その方がいいと思う。」


「俺もだ。」


「ミャ。」


『エレナ』


「明日また会えるぞ。」


「ミャ!」


「そこなの?」


 アイリが笑った。


 ◇


 翌日。


「ギルド長ですか?」


「ああ。」


 エレナが少し意外そうにグレンを見る。


「急ですね。」


「聞きたいことがある。」


「何でしょう。」


 グレンは声を少し落とした。


「ベルガーさんって、どんな人だ?」


「……。」


 エレナがグレンを見る。


「どういう意味でしょうか?」


「そのままだ。」


「人柄を知りたいってこと?」


 アイリが付け加える。


「信用できる人なのかなって。」


 エレナの表情が変わった。


 ふざけて聞いているわけではない。


 そう察したのだろう。


「何かありましたか?」


「今は言えない。」


「……分かりました。」


 エレナはそれ以上聞かなかった。


「ベルガーギルド長は、元Aランク冒険者です。」


「元Aランク。」


「二十年以上冒険者として活動した後、ギルド職員となり、現在はルグリア支部のギルド長を務めています。」


「性格は?」


「厳しいです。」


「即答だな。」


「規則にも厳しいですし、怒ると怖いです。」


「それだけ聞くと会いたくなくなるな。」


「最後まで聞いてください。」


「はい。」


 エレナが小さく息を吐く。


「ですが、冒険者を守るためなら上部組織とも平気で意見をぶつける人です。」


「へえ。」


「ギルドにとって都合がいいかではなく、その冒険者にとって何が最善かを考えます。」


 エレナは少し考えてから続けた。


「口も堅いです。」


「それは?」


「相談された内容を、必要もないのに他人へ話すような人ではありません。」


「国から聞かれても?」


「内容によります。」


 即答だった。


「何でも隠してくれるとは言いません。それは無責任ですから。」


「そうだな。」


「ですが、話を聞く前から誰かへ報告するような人でもありません。」


 グレンはアイリを見る。


 アイリが小さく頷いた。


「エレナは信用してるんだな。」


「しています。」


 迷いはなかった。


「私がこのギルドで働き続けている理由の一つが、ベルガーさんがギルド長だからです。」


「そこまでか。」


「はい。」


 十分だった。


「アイリ。」


「うん。」


 グレンは決めた。


「エレナ。」


「はい。」


「ベルガーさんに会わせてくれ。」


「ギルド長に?」


「ああ。」


 エレナは少しだけグレンを見つめた。


「Aランク昇格試験に関係することですか?」


「関係ある。」


「分かりました。」


 エレナが立ち上がる。


「確認してきます。」


「頼む。」


 しばらくして。


 エレナが戻ってきた。


「大丈夫です。」


「今から?」


「はい。」


「分かった。」


「こちらへ。」


 エレナの案内でギルドの奥へ進む。


 階段を上がる。


 廊下の一番奥。


 一つの扉。


 エレナがノックする。


「ベルガーさん。グレンさんとアイリさんをお連れしました。」


「入れ。」


 低い男の声。


 エレナが扉を開ける。


 部屋の奥。


 大きな机の向こうに、一人の男が座っていた。


 五十代半ばほど。


 鍛えられた身体。


 短く刈った髪。


 鋭い目。


「お前たちがグレンとアイリか。」


「ああ。」


「はい。」


 ベルガーが二人を見る。


 そして。


 アイリの腕の中。


「ミャ。」


「……そいつがラグナリンクスか。」


「ミケです。」


「そうか。」


 ベルガーがエレナを見る。


「それで?」


「グレンさんから、ギルド長へ直接相談したいことがあるそうです。」


「分かった。」


 ベルガーが椅子を示した。


「座れ。」


「その前に。」


 グレンはベルガーを見る。


「一つ確認したい。」


「何だ。」


「これから話すことは、かなり重要な話になる。」


 ベルガーの表情がわずかに変わる。


「できれば。」


 グレンは続けた。


「まずは、この部屋だけの話として聞いてほしい。」


 ベルガーはしばらくグレンを見つめた。


「内容を聞く前に、何があっても秘密にするとは約束できん。」


「ああ。それでいい。」


「だが。」


 ベルガーが腕を組む。


「聞いた話を無闇に外へ漏らすつもりもない。」


「それで十分だ。」


「なら話せ。」


 グレンはアイリを見る。


 アイリが頷く。


 もう決めた。


 知られてしまう前に。


 自分たちから話す。


「俺のユニークスキルについてだ。」

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